嫉妬ってやつ。

小学校1年生の時、私は足が遅かった。たしか、100人近くいる一年生の中で80位くらいだったと思う。

運動神経というのは生まれつきで、両親が運動音痴なんだから、私なんかが足が速い訳がないと思っていた。だから、努力なんかしなかった。
運動神経バツグンで、女子1位のりさちゃんは、フォームも綺麗で軽やかで、ちっとも苦しそうじゃない。
だから、きっと苦しくなんかないんだ。
私は、こんなに苦しいのに。
…なんて思っていた。

そんな私が、次の年、一念発起してマラソン大会のために自主練を開始した。

苦しかった。

なんど立ち止まって歩いたか。
なんどかずる休みしたけど、練習はやめなかった。
結果、前年より順位を大きく上げることができた。

その時に、足が速くなっても苦しくなくなることはないのだと知った。
今思えば、当たり前のことなんだけど。
私にとっては、大発見だった。

私達の小学校の女子の1位は、毎年りさちゃんがかっさらった。2位を大きく引き離してダントツの1位だった。

いつだったか、やっぱすごいよねぇなんて友達と話していたら、りさちゃんは毎朝6時に起きて家の周りを走っていたと聞いた。
努力なんて全く似合わないりさちゃんが陰で誰よりも努力していたのだ。
きっとりさちゃんも私と同じように、"練習行きたくないなぁとか思ったことがあるのかも"と、りさちゃんを身近に思えた。

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この文章を書いたのは、22歳の時だ。このとき周りの人が羨ましくて、自分に自信がもてなくて、なんで私だけこんな苦しいんだ…って思ってた。だけど、小学1年生の自分が気付いた大発見を思い出して、自分を励ましたかったんだと思う。羨ましいと思うあの人だって、苦しいこともあるはずで、みんな同じだよ、って。

私は現在30歳。

相変わらず、羨ましいなぁって思う人はいるけれど、走るしかない。と思ってる。運動神経抜群で、努力までされたら、到底敵わないけど、私は私で、走り続けて、自己ベストを更新し続けるしかない。羨ましさで胸が張り裂ける痛みに負けて、相手の足をひっぱる卑怯ものにも、自分で自分を痛め付ける悲劇のヒロインにもなりたくない。そういう時は、小学1年生の自分に恥じないように、自分のことをしようと思う。今はもう大人になったから、同じコースに挑戦しなくたっていいことも知っている。私は、自分で好きな道を選んで走るのだ。嫉妬なんかに、負けてたまるか。


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