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フットパスは小さなユートピア

コッツゥオルズに滞在。奇跡的な晴天が続く。2日目などは気温が30度まで上がった。イギリスの国民的レジャー、ハイキングはフットパスと言う素晴らしいシステムがあって成り立つ。個人が持っている土地でも一般の人が歩けるように、柵に小さいドアがある。おかげで、美しい森や麦畑の真ん中を歩いていくことができる。また歩かせてもらう人は、そこの地主さんにちゃんと気を遣って、ゴミ等は一切落とさないし、畑の作物を荒らしたりしてはいけない。そんな暗黙の了解がちゃんとまかり通っている。おかげでハイカーは実にたくさんの素晴らしい野道山道を自由自在に歩くことができる。また今の時代だから大変便利なアプリがあって、それを見ていくと、迷わずに野原の真ん中や森を歩くことができる。コッツウォルズの観光地の村は観光バスが来ていて大変な混雑だが、フットパスには誰もいない。5日間歩いて他の人とすれ違ったのは多分1回か2回。誰もいない。

夏至の夕暮れ夜の9時頃

地平線まで広がる青い麦畑。木漏れ日が宝石のように煌めく森を歩いていくと、まるであの世に来てしまったのかと思うほど不思議な気持ちになる。もしかしたら来る途中で交通事故にあって、私は今死と生の境をさまよっていて、あの世の極楽の近くあたりをふわふわ浮いているのではないかと思う位。

ローリングチーズに向かう森

4日目のハイキングで。森の中にローリングチーズと言う面白い名前の場所があった。丘になっている美しい森をどんどんどんどん上がっていくと、ふと木がなく、草だけが広がっている丸い土地がある。その先は、なんと崖。グルスターの街を見下ろすものすごい展望のポイントだった。ここがローリングチーズ。なんと昔からチーズを転がすゲームをしていたとこだと言う。なぜチーズを転がすんだろう。日本で餅や菓子の包みを投げたりすることあるけれども、これは一体どういうことなんだろうと不思議に思う。

手刺繍のついているカード

ローリングチーズに向かう途中、小さな村のはずれを通るのだが、そこに無人売店があった。何を売ってるかと思うと手作りのカードが売られていた。1つ1.5ポンド。せっかくのご縁なので可愛らしいカードを買った。

先に述べたフットパスの歴史を見ると、これはイギリスの市民が地主たちを相手に戦った。そしてやっと得た権利とわかる。素晴らしい。それは19世紀に芽生えたコモンズと言うコンセプトと一緒になっているとも思う。森や林や草原は地主が収穫したり管理したりするのはそれで良いが、市民も楽しむ権利がある。だから、みんなで大切にしようと言う考えである。そこには相互の信頼と愛がなければできない。地球全体が本来コモンズであって良いはずだ。これは1つのユートピア。しかし実現している小さなユートピアだ。

そういうところはイギリスは偉い。



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