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【備忘録】Facebookで、みんなが見ている中でケンカしたやりとりの記録

注)この記事には、性的マイノリティに対する差別的な表現があります。


前回の投稿「ジェンダーを話すとき、私は優し過ぎるのではないか」

こちらを書き始めた翌日、私は、初めて、SNS上で人と口論になりました。
その時の、やり取りの経緯と、私自身の心の動きを記録しておきたいと思います。

きっかけは、私がFacebookの投稿でした。
その日は、首相秘書官が性的マイノリティに関して差別的な発言を行い、あっというまに更迭が決まる、という出来事がありました。

このことに関して、FBに下記のように投稿をしました。

昨日の首相秘書官の差別発言について。
更迭は当たり前。
社会を変えたくない首相も、同じ考えという他の秘書官たちも全員退場してほしいです。
本気で考えろよ、適当に生きてんなよ、と思う。
若い人に申し訳ない気持ちでいっぱいです。
こんな社会にして、ごめんなさい。
どんな気持ちで今日を過ごしてたかと想像すると、吐きそうになります。

ちょっと強い言葉ですよね、そう思います。
けれども、敢えて、怒りを表現するために、強めの言葉で投稿しました。
なぜこの投稿をこんな強めの言葉であげようと思ったかというのも、実はあるきっかけがあったのですが、それはまたの機会にお伝えしたいと思います。

で、この投稿をあげて、数名の方からコメントをいただきました。
全て、私の投稿に対して概ね支持や共感をしてくださる内容のコメントでした。
そりゃ、当たり前ですよね。実名で行うFacebookで、否定的なコメントはなかなか起こらない。
私の投稿に対して、嫌だな、何言ってるんだ、と思う人は、ひっそりとそう感じ、そのまんまスルーしていることでしょう。
支持・共感してくださって、さらにそれを伝えたい、とかもっと議論したい、という人だけがコメントをしてくださっている、そんなFacebookへの安心感と諦めみたいなものを私は持っていました。

ところが…。
5件目くらいのところで、びっくりするようなひどいコメントが、全く空気を読まない様子で書かれてしましました。

これはさ、総理秘書官の発言だから許されないの?
オフレコの話が漏れてきたということは、マスコミの倫理の話だから置いておくけど、正直僕も同性愛や同性婚は気持ち悪いと思う。
それを表に出して言うとか、差別や偏見はよくないというともわかるけど、気持ち悪いものを気持ち悪いと言ってはいけないのだろうか??
同性愛は認められて、例えばロリコンとかは避難されがちだけど、そちらはダメなのか?
単純に性癖の話で、どちらも生温かく見守ればよい話?
総理秘書官の立場にある人が言ったから避難されるのか、そもそもそれを気持ち悪いと言ったら非難されるのか、どっちなんだろう?

数年前に、東京で受けた研修でご一緒した東北で農家をされているAさん。
数日間一緒のグループで研修を受け、とても優しく温かくって、それ以降も、果物を送ってくださったりと、なかなかお会いする機会はないけれど、交流を続けさせていただいている方です。
その方が、親しげにこんなコメントをあげてきたのです。

この後、1時間以上やりとりが続き、最終的には先方により全てのコメントが削除されてしまったのですが、この記録を残したいと思い、備忘録としてこちらに掲載させていただきます。

菅原:私は正直、Aさんが気持ち悪いです。

A:それは同性愛を気持ち悪いと思うから、俺を気持ち悪いと?

菅原:はい。プラス、それをこの文脈で実名で書いていることが。
多分、この投稿を見てる多くの人が、高橋さんのコメントを見て、気持ち悪いな、ヤバい人だな、と思ってると思います。

総理秘書官だから更迭じゃないですよ。誰でもNGです。Aさん、プロフィールに会社名入れてるでしょ?炎上しますよ。

ここまでは、スクショを撮っていたので、実際の文面の通りです。
ここからは、やり取りの直後にメモした内容なので、実際と表現が違っている部分があると思います。

A:自分の言いたいことを書いて、炎上すらなら仕方ないよ苦笑。気持ち悪いことを気持ち悪いとも言えないなんて、生きにくい世の中になってしまったよね。

菅原:プロフィールに「(社名)」って載せてますよね。迷惑かけるんじゃないですか?

ここで、私はAさんのプロフィール画面のスクショ画像も一緒に投稿しました。

A:プロフィールには鍵かけたよ。これって脅し?

菅原:鍵かけなきゃいけないようなことは発信しないほうがいいですよ。私も公開設定を友達限定に変更しました。余計なお世話だけれども。

「これって脅し?」と言われて、脅しになっちゃうのかな、、と私も不安になり、慌てて、公開範囲を友達限定にしてみました。

A:友達限定にしてくれたのは感謝するよ。自分も勉強しなければならないことはあるけれど、でも自分が同性とやれって言われたら無理だもん。考えの違いはあるよ

「気持ち悪いな。誰もお前に同性とセックスしろ、なんて言ってないし。お前は異性ともセックスしてないだろ、このやろ」みたいな意地悪なイヤな差別的な思いが私の中にも湧き上がってきました。
でもできるだけ、冷静に、そして、このやりとりを他の人が見てるかも、と思うと私が加害者になってはダメだ、と思い、何度も打っては消して、を繰り返しました。

菅原:私が吐きそうなくらい嫌な差別発言と書いているのに、さらに同じことをコメントで書いてくるって嫌がらせですよね?

A:嫌がらせのつもりはなかった。気分を悪くさせたことは謝るよ。

ここで、知り合いのBさんが参戦してくださいました。

B:初対面なのに、横から失礼いたします。今の時代に国連の人権理事会等の国際社会が議論している中で、このような差別的な考えを表明する人がいることに率直に残念に思い、クラクラしております。でも学びたいという気持ちがあるのであれば、落ち着いたら(今すぐにでもというのが正直な思いですが)、ジェンダーや人権、マジョリティの特権について学ばれることをお勧めします。

A:ご指摘ありがとうございます。初対面にもかかわらず、教えてくださってありがとうございます。差別的と言われて、正直戸惑っております。それぞれの正義があると思います。自分も差別や偏見はすべきではないと思っていますので、これからも学んでいきたいと思っております。

私、Bさんが参戦してくださって、さっきまでの心細い気持ちから、ちょっと気持ちが大きくなります。

菅原:特定のグループへの”気持ち悪い”は偏見、それを言葉にしてぶつけるのは”差別”。あなたのしていることは明らかに差別。意見の違いという次元じゃない。戸惑ってる場合じゃないよ。

A:わかりました。じゃあ、謝ります。

この「じゃあ、謝ります」という言葉に、すごいテンションが下がりました。見たくない、と思い、このコメントのみを削除しちゃいました。

A:これまでのコメントは削除させてもらうよ。俺のプロフィールのスクショも削除してほしい。

この後、コメントがどんどん削除されていく。
そして、全てのコメントが削除された後に、Aさんからこのようなコメントが書かれました。

A:すみません、断ってから順番に削除するつもりが、最初のコメントを削除したら全て消えてしまいました。この度は自分の差別的な発言で不快な思いをされた方、大変申し訳ありませんでした。今後も気ちんご学んでいきたいと思います。

いきなり、コメントを削除、謝罪、という流れになったので、もしかすると私とAさんの共通の友人か誰かが、Aさんにそうしたほうがいいと言ってくださったのかな、なんて想像したり。

そして、最後の謝罪コメントも翌朝、さらに削除されていました。

全てのコメントが削除された時に、すごい無力感。
この時間とエネルギーはなんだったんだろう、と。

後から本当にたくさんの人がこのやり取りを見ていたことがわかりました。
その方々からのリアクションから、翌日色々なことを考えました。

怒れる、ということは、パワーがあるということだと改めて思いました。
私は、マジョリティだから、怒れたんだと思います。
当事者、マイノリティがあの場で怒るのは、今の社会では、残念ながらリスクが大きい、何かを失ってしまいかねない、と思ったと思います。
マイノリティは、怒る機会さえ奪われるんだと思います。

このリアルタイムのやり取りを、当事者の友人たちが見てるかもと思うと、「優し過ぎ」たり、あやふやな態度なんて絶対に取れないと、自分の大切なものを守ろうと必死でした。
対応してる時には、心臓がドキドキして、手が震え、指先が冷たくなり、涙が出てきました。
勝手に引き受けただけですが、私よりも日常的に攻撃に晒されている人たちの緊張、悲しみ、憤りを1000分の一くらい経験できたかもしれません。

やりとりを見ていた方々からもたくさんコメントをいただきましたので、こちらに一部を残しておきます。

ずっと見ていて、闘わなきゃいけない時あるよなーって思った。

やりとりを途中見ていたのですが、介入のタイミングを逃してしまい、うまく応援やサポートができずに申し訳ない気持ちでした。
他人を怒ること、やり取りの間は本当に怖かったと思います。泣きそうな気持ちの中、菅原さんが怒ってくれたことをとても心強く思っている人も多かったのではないかと思います。

昨日は立ち続けてくださり、ありがとうございました。

私も見ていながら何もできずにすみませんでした。(自分の経験から)スタンスを示し切ることで言いたいことを言う前に相手にシャッターを下されてしまうことと、柔らかく言って伝わらないことの狭間でいつも悩んでいます。私たちの立っている地平も動くので、しなやかな強かな立ち方、一緒に考えていきたいです。

私たちはこの現実をちゃんと見て、一人ひとりがやるべきことを考えないといけないし、行動しないといけないんですよね。沈黙は、多勢に賛同したことと同じですよね。わたしに何ができるか、考えつづけています。

きちんと対応していた菅原さんに元気をもらいました。今までああいう方々はそれなりにたくさんいて、その場では波風立てないようにして離れて心身ともに即ブロックしてたんですが、菅原さんみたいにきちんと伝えるのも大事なんだなと改めて思いました。

正解はないし、あんなやりとりをして失ったものもたくさんあるし、でもマイナスばかりではない気もするし。
私は、”給料をもらって”男女共同参画の仕事をしているので、これからも疲れるような、誰もしたくないような、不毛と思われるような闘いをしていこうとは思っています。

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