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スーパーのレジにて

マックスバリューで納豆と小松菜とお風呂掃除洗剤の詰め替えをかごに入れる。小さなスーパーではこの日はふたつしかレジが開かれていない。右のレジも左のレジもぱんぱんに商品をカゴにつめたおばあさんが並んでいて、しかたない、ゆっくり待とうと左に並んだ。

どうしておばあさん達は大量に買うのか。
清算を済ませたおばあさんのかごに、持ちましょうかと声をかけて手を伸ばす。ああいいのいいのすみませんと言っておばあさんはぎっしりと商品がつまったカゴを引きずるようにカートに載せる。

3点しか買わなかったわたしはすぐに清算を済ませ、一歩踏み出そうとしてさきほどのおばあさんのショッピングカートにぶつかってしまった。
すみません、と謝るわたしに、ごめんなさいねと謝るおばあさん。

常々、疑問に思っていたことが聞けるだろうか?
どうしてこんなに一気に大量に買うのですか、という疑問。
でも結局はそんなふうには聞けなくて、「すみません」のあとに「めちゃくちゃ買いましたね」と付け足すだけで精一杯だった。
「めちゃくちゃ買いましたね」
「目が悪くなっちゃったからね」
「それはたいへん」
「お友達はみんな手術してるの。わたしもしなくちゃいけないんだけどね。70にもなるとあちこち悪くなってたいへんですよ」

手術が必要なくらい目が悪くなってしまったので、たくさん一気に買う必要があった。その前半と後半のあいだには話せば長くなる事情がたくさんあるのだろう。ひとつひとつ商品を手に取って商品名と賞味期限を確認するのが大変だから、調子の良い日に一気に買うんです、とか。その他、こまごまとした事情。

そのあいだのお話を聞くにはスーパーのレジ前は人が多くて狭くてにぎやかすぎた。言い訳みたいに「わたしも最近肩が痛むんです」と言い、お互い頭を何度も下げてどうもどうもとその場を離れた。

あいだの話を聞きたい。

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