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一家団らんの謎

きっかけはブラタモリだった。
NHKの施設内で、放送の歴史に触れるという回。
ずらりと並べられた昔のテレビを前に、タモさんたちが ”テレビが売れたころ、共通の話題が家庭内でできた。食事時に家族が一緒に見るものができた。家族団らんが生まれたんですね” というようなことを言っていた。

あれ?
テレビ以前はどういうふうに食事をしていたんだろう?
ということで、わかる範囲で探っていくことにした。

まずわたしは家族団らんを「食卓」と思い込んでいたんだけど、そのからくりはおいおいわかることになる。

まずは新明解国語辞典。

だんらん 団欒
〔「団」も「欒」も丸い。車座に円居(まどい)する意。〕家族など親しい者同士が集まり、和やかに時を過ごすこと。「一家 ―」

ごはんのことも、テレビのことも書かれていない。

時代劇や時代小説には疎いけれど、ちょんまげの時代や、近代でもちょっと良さげなご家庭ってなんとなくそれぞれの前にお膳が並べられているイメージ…
いつから食卓を囲む団らんが生まれたんだろう?

とりあえず、近所の図書館に行ってみた。閉館時間まぎわなので、検索もかけずにとりあえずピンときた本を数冊手に取る。

そのなかにあったのが『平成の家族と食』(品田智美・編/晶文社/2015)。

日本でちゃぶ台を囲んでの食事が銘々膳よりも多くなったのは、大正末期のことだという。

明治期の修身の教科書を分析した牟田和恵によると、明治初期には見られなかった(略)家族の団らんというモチーフは、明治10~20年代頃に現われ始め、それ以後定着していくという(略)。「一家団らん」という概念は、近代に成立したものなのだ。

明治25(1892)年の『修身入門』では、銘々膳による子どもだけの食事風景が描かれていた。しかし明治44年(略)や大正7年(略)の(略)教科書に描かれた食事風景は、家族全員で食卓を囲んで団らんを楽しむものへと変化している。

「家庭の団らんというモチーフ」という言葉が、最初にわたしが抱いていた”食卓を囲む”という思い込みの鍵になっていた。
そのモチーフの推進は、『内閣府の第二次食育基本推進計画においても「子どもたちに、食卓を囲む家族の団らんによる食の楽しさを実感させる」ことが目標としてかかげられている』ことから、現代も続けられていることを知る。

ちなみに今は何次食育ナンタラなの?とググってみると、第三次になっていた。公開されている計画のなかで「団らん」「団欒」と検索してもヒットしない。どうやらいまは「共食」という言葉に変わっている様子。(間違ってたら教えてください)

今日読んだ『平成の家族と食』では、子どもの内に食卓で団らんをと言われても大人になってひとりでご飯を食べることは多々あるし、それについて否定的にとらえないでほしい、というようなこと(ざっくり)が書かれてあった。そうだよね。

今日一冊読んだだけでも知らなかったことがざくざく出てきて、夕方になって図書館にすべりこんでみてよかった。
『平成の家族と食』、飛ばし飛ばしだったけど興味深い本でした。

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