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「なんで察してくれないの?」妻にそう言われて困ってるあなたへ

こんにちは。

妻から「なんで、察してくれないの!」と、言われたことはありませんか?

つい(ぐむむ...)と口ごもってしまう、気まずい状況ですよね。

こう言われたときに、あなたはなにを思いますか?

(だって、言わなかったじゃないか)
(目に見えない人の気持ちをどうやって把握するんだよ)
(だいたい、察するってなんだよ?どういう意味?)

そんな気持ちが心の中に沸々と湧いてきますよね。

今日は、妻が言う「察する」という言葉の本当の意味と、「察する」ためにぼくら夫がなにをすればいいのかについて、お話ししようと思います。

妻とのコミュニケーションに悩んでいる方の参考になれば幸いです。

相手の感情を先回りする呉服販売員

「察する」ことについて考えるときにぼくが思い出すのは、呉服の販売員をしていたときの月に一度の催事(販売会)です。

月に一回の催事では、何十万円、時には何百万円もの着物を売らなければなりません。

常連さんならば大きな苦労はしませんが、初めていらっしゃる方や2回目の方などには、きちんとした販売ストーリーを組んでおかないといけませんでした。

その販売ストーリーの目的は、「そのお客様」が「その着物」に興味を持ってもらうまでの感情の流れ、そして、購入してもいいと決断するまでの流れをコントロールすることにあります。

そのために「察する力」を最大限に使うことになります。

コントロールと言うと聞こえが悪いですよね。もうちょっと聞こえのいい言葉に言い換えると、「お客様の感情に沿って商品をおすすめしていく」ということになります。

ですがそれは、傍から見ているとまさにコントロールとしか言いようのない露骨なものだったなと、今では感じています。

購買心理の8段階という言葉を聞いたことがありますか?

ぼくは呉服の販売員になった時、この購買心理の8段階を上司から徹底的に叩き込まれました。

■購買心理の8段階
1:注目
2:興味
3:連想
4:欲望
5:比較検討
6:信頼
7:行動
8:満足

催事では、お店の入り口にその催事の目玉となる着物が誰の目にも見えるように大きく展示されています。

下のリンク先商品のような「衣桁(いこう)」と呼ばれる呉服用の大型ハンガーに吊るしていました。

お店に入った人は、まずこの目玉商品に目を奪われます。

ここで飾られる着物の目的はお客様の目を引くことなので、作家先生が実験的に作ったものが多く、やたら絵柄が大柄だったり、目を引くような派手な色使いだったりします。

まず、来店してくださった自分のお客様を座敷に上げ、お茶を出し、その着物に関する説明をし、興味を持ってもらいます。

店の入り口からちょっと入ったところにも、試着用の目玉商品が衣桁にかけてあるのでその着物の説明もし、試着まで進めていきます。

「着るだけなら」
「売り物じゃないし」
「こんな素敵なものめったに見れないし」

ほとんどのお客様はそう思いながら、すんなりとその着物に袖を通します。

「こんな素敵な着物を着て、◯◯(川越、金沢、京都、馬籠など、昔からの情緒を残す町)なんて歩いたら素敵ですよね。」と、その着物を来たら何が起こるかをお客様に連想されます。

ここで、反応がいまいちだったら表現を変えたり、それでもダメなら他の着物を試着して、また声掛けをして連想をさせます。もしくは、また座席に戻って「興味」のステージからやり直します。

お客様の表情がうっとりとしてきて、自分が京都などの古都を歩いているような様子を想像していることが読めてきたら、次は欲望のステップです。

まだ夢心地のお客様からサッとその着物を脱がし、「実は、◯◯さんにお見せしたくて他に人には見せないようにしまっておいたものがあるんです。ちょっとみていただけますか。」と、奥の方からあらかじめ用意しておいた着物を厳かに持ってきて(人によっては桐箱に入れることも)、試着してもらいます。

販売員はそれぞれのお客様のためのに、あらかじめ商品を選んでおいて展示品とは別のところに隠しています。あれもこれもと自由に見せると迷い過ぎてしまい、結局買ってもらえないんです。

その後、別に用意したいくつかの着物も試着してもらいますが、これらは比較検討用です。

お客様の表情をチェックし、どの着物を一番気に入ってるのか、そして何を不安に思っているのかを、表情と会話の中で察知します。

そして、「もし買うなら、この中のどれにします?例えばですけどね」と購入に向けて気持ちを誘導していきます。

値段、用途、デザインなど、何が購入のネックになっているかを会話や表情から読み取り、不安要素を一つづつ潰していき、購入まで気持ちを動かしていきます。

ここは「信頼」のステージですが、販売員との信頼は出来上がっているケースが多いので、不安要素をいかに自然に消していくかが購入を左右しました。

必要があれば「欲望」のステップまでまた戻ります。

ただ試着が多いと疲れさせてしまうので、あまりステップを戻すことをせず、一回一回のステージでいかにお客様がなにを考えているかを把握することが重要でした。

「行動」のステージでは、ほぼ購入することを決めたお客様の背中を押します。作家先生が来ていれば、オリジナルの扇子や小物を作家先生からプレゼントしてもらいます。

(「あんただけやで」とか言いながらめちゃくちゃ持ってきてます。作家というよりスーパー営業マンみたいな人がいっぱいいました)

値引きが好きなお客様だったら、お客様の提示額に対して店側や作家先生が負けたフリやまいったふりをして、値引きをした満足感(勝った!)を感じさせ、購入まで自然に持っていきます。

(着物は原価率が低いので、ちょっとくらいの値引きで利益は大きく減らないのです。むしろ値引き前提の値段になっています)

最後の「満足」は人によって様々で、値引きさせた満足感であったり、お気に入りの販売員のために買ってあげたという満足感であったり、購入した着物を来て京都旅行に(年に一回、販売会付きの旅行に格安で招待していた)行くことだったりします。

ここまでが、催事で着物を買っていただくまでのおおまかな流れですが、もっとも大事なことは”お客様の「サイン」を見逃さないこと”だったなと思っています。

(今日は本当に買うつもりないんだけどな・・・)

(強引でちょっと怖いな・・・)

(本当はあっちの方が好きなんだけどな・・・)

(買っても使い道ないしな・・・)

(値段じゃなくて用途の問題なんだけどな・・・)

(ちょっと疲れてきたな・・・)

お客様のこういう感情は、表情や言葉の端々にふと現れます。

サインをしっかり捉えたら、そのサインに合わせて声掛けを変え、行動を変え、手を取りながら購買心理の階段を行ったり来たりしつつ、着実にゴールに向けて登っていきます。

それから、お客様自身が自分の感情に気がついていないことってあるんですよね。

(なんか、嫌な感じ)

(それがなにで、なぜかも分からないけど、なにかが違う気がする)

このような、言葉ではうまく表現できないけど肌では感じられる感覚ってありますよね?

それをこちらが先に言語化すると、(分かってくれている!)という感覚がお客様に生まれ、その感覚がぼくら販売員との絆を作り上げます。

当時を改めて思い返すと、呉服販売というのは自分の「察する力」を最大限まで試されるものであり、そしてその能力を一気に伸ばすことができる修行のようなものだったなと思うのです。

察する力=妻のサインを見逃さない力

妻との関係における「察する力」というのは、「妻のサインを見逃さない力」のことではないかなと、ぼくは考えています。

妻の目が泳いでいる。

妻の口が軽く引きつっている。

妻の表情がこちらの言葉で一瞬曇る。

妻がなにかを言おうとして、でも言いづらそうに口ごもっている。

こういった一瞬の変化に敏感になることで、妻のサインを見逃さないようになるのではないかなと。

そして、一瞬の変化に敏感になるためには、妻が「なにを言ったか」「なにを言わなかったか」ではなく、「なにを感じているか」に敏感になり、妻の感情を注意深く観察することが重要だなとも感じています。

ぼくらはつい「言った、言わない」に敏感になってしまうんですが、言語化されていない領域に漂っている”なにか”の存在感に気付けるようになると、だいぶ妻との関係は楽になるんじゃないかなと思います。

妻から「察してよ!」と言われ、困っている方の参考になれば幸いです。

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