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バスに揺られ、一歩先へ進んでしまった子供たち。

不安そうな顔をした子供たちがバスに乗り込む。バイバイとぼくに手を振り、二人は並んで席に座る。

そのバスは他に乗客がおらず、静かに、しかし確かに彼らだけを乗せて走り出した。周りは静まり返り、バスのエンジン音だけが鳴り響く。

窓越しに見える不安げな彼らの横顔が、ぼくの前からスローモーションのようにゆっくりと通り過ぎていく。

寒い冬の終わりの風が吹き抜ける中、ぼくはしばらくの間、小さくなるバスのテールランプを見つめ続けた。

彼らが少しづつぼくから離れていく寂しさを感じながら。

いつまでも送り迎えが必要だと思ってた。どこにいくにしても彼らのことが心配だった。

だけど、昨日の夕方、うちの小学3年生の子供たちは社会に向けて自分たちで歩き出したようでした。

以前の記事で子供たちのスイミングスクールを変えたと言う話をしましたが、昨日が2回目の授業でして、昨日から彼らは自分たちでバス通いをすることになったのです。

ぼくらが住む地域は郊外にあり、学校は歩いて10分、友達も近所にたくさん住んでおり、電車やバスに子供だけでどこかに出かけるということは今までなかったんです。

ですが、新しいスイミングスクールは車で20分ほど離れた場所にあり、三男の相手や仕事でぼくら親は送り迎えができないため、スイミングスクールのバスを使うことにしたのです。

どうする?大丈夫かな?あの子ら、変なとこで降りないかな?不審者に連れていかれないかな?

初めてのバス通いにぼくと妻はめちゃくちゃ心配して子供専用のGPSも買ったのですが、それでも不安が消えることはなかったんですよね。

着替えるのが遅れてバスに乗り遅れたらどうしよう?

降りるべき場所の前で間違って降りて迷子になったらどうしよう?

GPSをプールに落としたら(持ち込まないから落とすわけないんだけど)どうしよう?

もう、心配事が次から次へと頭に浮かんでグルグルしてたんです。

ですが、なんとか無事に二人をバスに送り届け、1時間半後、ぼくはまた同じ場所でバスが子供たちを送り届けてくれるのを待っていました。

18:30到着のはずが、少し早い18:24に10人ほどの元気な小学生を乗せたバスはやってきました。暗闇からライトを照らしてやってくるバスを見て、ぼくは気持ちがやっと落ち着きました。ホントに心配だったんです。

うちの子たちはしょっちゅうケンカばかりで、特に水泳終わりは疲れてることもあり、毎回ケンカになるんです。

どっちがこう言っただとか、話を聞いてくれなかっただとか、それは違うと言われただとか、もう本当にいつも疲れ果てるんですが、その日は違ったんです。

「バスの運転手さん、朝はコーチやってるんだって!」

「前の運転手さんはショートカットしてたから、はやく着き過ぎちゃってたんだって!」

などと元気に話し出し、帰りの車の中でも

「それは確かにそうだよねー!」

「ぼくはこう思うなー!」

なんて、ちょっと大人びた会話をしてるんですよ。

おいおい、いつもの君たちはどこ行っちゃったんだい?なんて不思議に思っていたのですが、翌日になっても二人の様子はそんな感じなのです。

どうも二人は今までとは違う場所に足を踏み入れたようです。

子供たちだけで遠くへ行き、帰って来れたこと。その小さな冒険が彼らを心理的にちょびっと成長させてくれたようです。

あんなに騒がしかった二人のケンカがなんだか懐かしくさえ思えてきます(いや、今のままでいいんですけどね。だけど……なんだかね)

きっとまた兄弟喧嘩する日はすぐにやってくるんだろうけど、なんだかパパは嬉しいような寂しいような、なんとも言えない気持ちなのです。

バスに揺られ、二人が遠くへと行ってしまうような、そんな寂しさを感じてるんです。

だけど、こうやって子供たちの成長を一番の特等席で見られることが、子育ての醍醐味なのかもしれませんね。

切なくてちょこっと苦しくて、だけどほんわかと嬉しさも感じるこの一瞬一瞬を、大切にしながら暮らしていきたいな。



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