廃棄前提ムビチケ?欅坂前売り特典から考えるムビチケの存在意義について・・・
こんにちわ
今日のtwitterトレンドで「ムビチケ」と上がっていて、なんだろうと思い調べたら、欅坂46のドキュメンタリー映画『僕たちの嘘と真実 Documentary of 欅坂46』の前売り券(ムビチケ)が発売されたという内容です。
そしてその特典がこちら
(引用:https://image.itmedia.co.jp/l/im/nl/articles/2008/11/l_kikka_200808kyz1.jpg)
生写真です。これがランダムで渡されるようで、なんと66種類です。
・劇場にて前売券(ムビチケ)1枚のご購入につき特典の生写真1枚を差し上げます。
・特典の生写真は計66種になります。新二期生は含まれていません。
・特典の種類はお選び頂けません。
そして、現在メルカリをみるとこんな感じです。
ということで、1枚あたり500円くらいから売り出されてしまっています。
映画興行において、ムビチケ(前売り券)を売ることはとても大切なのでこういった施策自体は、とても大事でなのですが、今後のムビチケの価値として考えた時に、どうかなと個人的に思いました。
「特典を揃えるために、大量にムビチケを買わないといけないと思い、たくさん買ってしまったが、観る時間がなくムビチケが手元にたくさん余った状態で映画の上映が終わってしまった。大失敗だった!!廃棄前提ムビチケです。」
補足しておくと、66種類をコンプリートするための平均期待値購入枚数は、276枚になります <計算式=66×log(66)=66×4.189>。
(参照:http://samidare.halfmoon.jp/mathematics/NCompleteAverage/index.html)
276枚ということは、仮に1人で1日5回映画館でみたとした場合、55日間通い続ける必要があります。握手券のように一気に消化できるものでもないので。
ムビチケとは・・・
まずそもそもムビチケについて、簡単におさらいしていきます。
ムビチケとは何ですか?
・・・全国の映画館で利用できる、ネットで座席指定可能なデジタル映画鑑賞券です。ムビチケには料金がおトクな(※1)「ムビチケ前売券」と、ポイントを使って購入できる「ムビチケ当日券」があります。
対応映画館のウェブサイト上で座席指定(※2)ができ、鑑賞当日は、映画館の自動発券機で入場券を発券するだけでスマートに入場できるチケットサービスです。
(※1 通常一般との比較 ※2一部映画館を除く)
<https://movieticket.jp/FAQ/01/01 より>
今回対象となるのは、ムビチケ前売券で、これは電子で購入できる前売券のことを指します。
前売り券とは、公開前に当サイトや劇場・プレイガイドなどで当日料金よりもお得な価格にて販売される映画チケットです。
過去の紙でできた前売り券は、チケットを購入しても観るためには劇場のチケット窓口に行って当日の座席チケットに変更する必要がありました。
それをムビチケという電子でチケットを買える前売り券に変わったことにより、ムビチケに記載している購入番号と暗唱番号を使って、劇場に行くことなく事前に座席チケットを購入できるようになったのでとても便利になりました。
そして、前売り券の販売はビジネス上では別の意味がありました。
それは、「前売り券の発売枚数によって、劇場の興行収入を予測する」ということです。
例えば、前売り券が10,000枚売れた場合、過去の映画作品実績と比べると、**億円の興行成績が見込めるのではないか。だから、映画館側でも大きなスクリーンで上映したり、上映回数を増やしても良いのではないか?はたまた、上映する劇場自体をもっと増やしても良いのではないか?など。
一方で、売れてない場合、もしかしたら想定していたよりもお客様が来ないのではないか・・様子見でスクリーンを小さめにして開始しようなど。
インターネットが大きく普及していない時代では、現在のようなインターネットアンケートによる事前調査やSNS等の口コミ調査がしづらい環境だったのでこの指標が特に大事にされました。
そのため、劇場公開の前哨戦という立ち位置でムビチケをたくさん売った方がよいという風潮が生まれていました。
特典について
そのため、映画配給側は、チケットを事前にたくさん売るために、映画前売り特典というものをはじめました。映画館に行くと予告編の後に「今なら〇〇が付いてくる」というようなものをよく観たと思います。
(引用:https://dora-world.com/contents/1171)
特に子供向けの映画は多い印象です。例えばドラえもん好きの子供が予告編をみて「**がほしい」というような感じで言うので、じゃあ(どうせ映画館で映画をみるので)前売り券を買おうか、と言う感じです。
一方で、大人向けの実写邦画や洋画は、グッズを動機としてムビチケを買うということが少ないので、あまり多くない印象です。
なお、特典の種類は、「そんなに何回も映画は観ないだろう」という暗黙の前提のもと1種類ないしは、数種類が慣例でした。あくまでも映画への動員を促進するものであり、映画館へ観に来てもらうためのもの。
そのため、今回のような前売り特典の種類がたくさんあるとか、毎週入場者特典を変えることにより1人が何回も観るような施策というのはありませんでした。
そして最近ではこうしたアイドル系作品やアニメ作品ではリピートでみるような施策が増えています。
気になった点
そうした前売り特典ですが、今回気になった点がありました。それは景品法です。
一般に、景品とは、粗品、おまけ、賞品等を指すと考えられますが、景品表示法上の「景品類」とは、
(1)顧客を誘引するための手段として、
(2)事業者が自己の供給する商品・サービスの取引に付随して提供する
(3)物品、金銭その他の経済上の利益
であり、景品類に該当する場合は、景品表示法に基づく景品規制が適用されます。
前売り券は、映画チケットの購入を促す「おまけ」です。そのため、一般的に「ベタ付け景品」に該当します。
一般消費者に対し、「懸賞」によらずに提供される景品類は、一般に「総付景品(そうづけけいひん)」、「ベタ付け景品」等と呼ばれており、具体的には、商品・サービスの利用者や来店者に対してもれなく提供する金品等がこれに当たります。商品・サービスの購入の申し込み順又は来店の先着順により提供される金品等も総付景品に該当します。
つまり、前売り券も上記の法に縛られているので、表にあるような最高額以内におさめねばなりません。大体前売り券は1,000円以上の物が多いので、10分の2が該当すると思います。
今回の欅坂の映画のムビチケの場合を考えてみます。販売価格が1,500円なので、その10分の2とした場合、300円というのが最高額になります。
しかしながら、メルカリでの販売価格をみると、映画のチケット単体は500円程度で売られています。
つまり、あくまでもユーザーの価値としてのムビチケチケット(1,500円)とは、「生写真(特典)1000円+映画500円」というものになっており、これはどうなんだろうな、と思ったのです。
じゃあ、そこで考える上限の300円とはなんだろうという議論です。実は、300円という考え方は、正式に決まっているわけではないようです。それが製造原価なのか販売価格相当額かです。ただし、多くは販売価格相当額が主流だと思います。
僕の場合も、前職で制作していた際は、販売価格相当額にしていました。デジタル景品(ポケモンのキャラのようなもの)でしたが、もしこれが市場に出回った場合幾らの価値になるのかを、様々な事例から検証し、法務と相談しながらその金額を暫定算出していました。
では、欅坂の場合はどうでしょうか、まず製造原価を見てみます。
製造原価だけで観ると写真の紙と印刷代だけです。おそらく100円以下なので全く問題ないと思います。
次に販売価格相当額はどうでしょうか。生写真が1枚あたり300円以下で販売されていると問題ないです。
オフィシャルホームページにあるグッズ一覧をみてみます。
「5枚入りで1,050円(税込)」ということは、1枚あたり210円(税込)です。
問題なしでした。そのため全くの杞憂でした。つまり、メルカリ上で勝手にインフレが起きているだけと言えそうです。
おわりに
とはいいつつも、一応法律的には問題ないのですが、正直オークションサイト等での映画価値が500円になってしまった場合、なぜ劇場側が1,900円で販売する必要があるのかなと思ってしまいました。
そうした場合の対応作が今後できた方が良いのではないかと思いました。
例えば、株ではないですが、前売り券の転売価格が下がってしまった場合、明らかに需要と供給のバランスが崩れているので、劇場の入場料金を価格弾力性を多少もたせていくとか(相当難しいですけど)。
今後を踏まえ、「映画のチケットを早いタイミングで買うことにより、少し安く観るための手段」としての映画前売り券(ムビチケ)としての価値を失われないようにムビチケとしてのブランドコントロールをした方が良いのではないかと思いました。
この問題は、ほんと難しいですね。
あくまでもビジネスとして考えた場合は確実に販売額を増やすことができる施策であることは間違い無いと思いますし、素晴らしいと思います。
けど、音楽のCD販売が特典がないと売れなくなってしまっている、ように映画もそれと全く同じようになってしまうと、映画館に来る意義や動機がどんどんずれてしまうのではと思います。個人的には、前売り券は「あくまでも映画を観るもの」としての価値を大事にしてほしいなと思いました。
ということで、今日は以上です。
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