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エスキスのコツ〜2021年版

はじめに

同じ基準階タイプですが去年とはポイントとなる所が違うことに加え、受講生の手が止まる所とその原因も違うことでまとめるのに少々時間がかかりました。
模試2も終わり残り10日間、弱点克服と応用力養成、総仕上げというタイミングですが、エスキスの学習において泥沼にハマっている方には役立つ内容になっているかと思います(なお、内容の大部分はSの手法に基づいたものになっています。他講習で学習され、Sの手法が全くわからない方には役立たない内容かと思います)。

エスキスの基本学習

そもそも、エスキスについての手順や効率については資格学校(S)のテキストに書かれてあるものはかなりよく出来ています。特定の条件下とはいえ、普段設計をしていない人や場合によっては建築畑でない人が限られた短い時間の中で国家資格合格レベルの製図課題をこなす事が出来るようになる、というのは冷静に考えると物凄い事です。
しかし、設計はある水準に至る万能の導き方があるわけではない、ということも事実です。そのため資格学校では多くの課題をこなし、引き出しを増やしその組み合わせでなんとか対応出来るようにしているわけです。そのため講義においては毎回その課題によって学習してほしい事(新しい引き出し)、及びその解説に重点がおかれます。どうしても解答例ありきのような解説になりがちです。

受講生の不安

ただ、多くの受講生は新たな学習要素に取り組みつつも「なぜ先週までのやり方では出来ないのか」という所に不安を覚えているように思います。そしてそれが毎週続くので精神的にも辛く、「エスキスは難しい、苦手だ」という意識が作られていくようです。「先週までのやり方で出来ない」のは上記の通り、引き出しを増やす=新たな特徴を学習することに主題が置かれているからです。
ここで混同せずに認識してほしいのは、新たな学習要素によって出来ていないのか、それ以外の所(すでに学習した所)が出来ていないのか、ということです。
初受験生は最初期において全く何もわかっていない為「全て出来ない」所から入るのが当たり前です(たまに最初から出来る勘のいい受講生もいますが)。しかし地道に復習していれば「出来る所」が蓄積されていきます。課題が進むにつれ、ポイントがエスキスの基礎から応用へと移っていくために「常に出来ていない」ように見えますが、実はそうではなく、「出来ていないように見えても出来るようになっている」受講生が大半(感覚的に6割〜7割)です。ただその大半の受講生が新たな学習要素によってのみ出来ていないのかというとそうではなく、学習済みのことも所々ミスをしてしまいます。「やったことがある、知っている内容」でも間違えてしまうのです(それは復習不足が原因の場合もあるし、作図精度に原因がある場合もある)。そのため、最初に書いた「なぜ先週までのやり方では出来ないのか」という所に意識が向いてしまうようです。
既学習部分が根本的に出来ていない受講生も当然います。しかし多くの受講生は、話を聞いていると既学習部分に関しては理解していないようには思えません。つまり多くの受講生はエスキスに対して必要以上の不安を抱えている、ということになります。

エスキスに苦手意識があるだけか、本当に苦手か

エスキスに不安を抱えている受講生は、一つは「どこで間違えているか」整理出来ていない、つまり新しい要素やそれに深い関わりがあるところで失敗していることを認識出来ていない場合があります。このタイプの受講生は意識の持ち方で劇的に出来るようになります。復習をしっかりしているので既学習部分に不安がないからです。このタイプの受講生はエスキスが苦手なのではなく苦手意識を持っているだけなので心配する必要はないと思っています(ただそれに気付くには添削内容やそのフィードバックによる所が大きい)。
もう一つのタイプは『エスキスが苦手な受講生の共通点』で書いた本当にエスキスを苦手にしている場合です。出来るようにはなっていることが増えているもののミスも多い彼らに共通していることは手順の意味がわかっていないということです。実際には手順の本質的な意味を理解していなくても正確に検討を行いその情報を採用して進めていれば基本的に問題ありません。「出来る」受講生の全員が手順の本質的な意味を理解しているかというとそんなことはありません(ただ彼らは手順とその結果の採用に抜け落ちがない)。しかしエスキスを苦手にしている受講生はどうしても手順が中途半端であったり、整理した情報を採用せずに次に進むということが多く、その為にミスが起きる(というよりミスが起きざるを得ない状況で進める)という結果を招きます。

エスキスが苦手な受講生への対応

僕の担当受講生にそういう方がいる場合(毎年半数以上がそういう方です)、採用する対応は二段階です。まずは手順の徹底を伝えます。最初期はサボっていてもミスが続くので認識を改め手順を徹底出来るようになる受講生も一定数います。しかし手順が完璧ではない受講生のほとんどは結局意味がわからないから手順が抜け落ちたり情報採用していないので、どちらかと言えば改善されないことの方が多いです。
そこで、二段階目で手順の本質的な意味を伝える、ということを行います。これは正直、あまりやりたいことではありません。なぜならただでさえ短い短期講座の中、素直にやっていれば必要のない学習要素が増えるようなものだからです。ただ地頭のよい受講生などは本質的な意味がわかることで学習効率も学習意欲も増すとうことが多々あるので一概にどうしたら良いということがないのが難しい所です。

今年の課題について

例年の建物構成と大きく異なる所ははっきりとした「管理部門」がなく、2方向避難の階段の一つが屋外階段による処理が基本(屋内でも問題ないですが)となるため低層階のプランニングの自由度が高いということがあります。自由度が高ければ基本的に難しくなるのですが(とっかかりが色々あるため)、これに関しては最初の条件整理で読み落としなく周辺環境とアプローチ条件、ゾーニング条件を整理することが必須です。苦手にしている方は読み取りとその整理の復習に集中してください(これにはコツというものがありません)。一つ、管理コアの代わり、というかそれがあることでプランがまとめやすくなる可能性のあるものとして「サブエントランス」があります。「サブエントランス」の計画や「通り抜け」要求のある課題を難しく感じる方は『エスキスのコツ〜平面検討・プランニング』の「管理コア」の所を「サブエントランス」に読み替えてもらえるとプランのコツがつかめると思います。
コツみたいなものがつかめず多くの受講生がつまづいている所としては中高層、低層関係なく、住戸の並べ方が挙げられます。昨年と違い個室の単位面積が大きいため振り回しがきかず、はっきりとした方針がないまま取り組みドツボにはまっている方が多いようです。
また低層タイプでは試算①以降の手順に曖昧さが見られる受講生が多いです。何となく解答例と同じ断面構成に行き着く方もいますが、そうならない時、何が問題か、どこで気付くのか、手順が曖昧だとわかりません。

以降、これら受講生がつまづいている所について原則としての考え方や上記で触れた「手順の意味」について書いていきます。その中で今年の課題における試算①、②、③の重要性と活用すべき場面等についても書いていきます。
原則や手順の持つ意味を理解することで自分自身で「間違い」に気付き、また同時にリカバリーの選択肢も見えてくるはずです
また低層タイプ、中層タイプ、高層タイプそれぞれの難しくなるであろうポイントについても整理していきます(難易度の高いオリ⑧や⑩についても触れます)。
なお、エスキス用紙で言うと左半分の1/1000までの内容です。1/1000の平面検討以降は『エスキスのコツ〜平面検討・プランニング』に(ゾーニングタイプ前提の内容ですが基本的なプランニング手法として読んで頂けます)書いています。

低層タイプの手順について(試算①以降)

低層タイプの課題の場合、各階に計画する住戸数が指定されていないことで住戸を上手く並べられずアタフタしている、というのがエスキスが苦手な方に共通しているように思います。
今年の低層タイプは適切な住戸階プランを作ることが出来れば1階(一部2階)のプランニングはさほど難しくはありません。ただその住戸階プランをうまくまとめることが出来ないという傾向が強いと感じます。

具体的に見ていくと、試算①まででつまづく方は少数だと思います。少し時間がかかりながらも駐車場や駐輪場等の外部施設の整理→建築可能面積はほとんどの方が出来ています(ここが出来ていないならば純粋な学習時間不足、復習不足です)。
問題はここからで、まず住戸の間口を課題条件に従って6mの場合と7mの場合を書く(ここでさらに考えられるパタンを全て書く人もいます)、その後とりあえずI型に並べてみる。並ばないのでL型の検討に入っていく、、、という流れです。ただほとんどの方がはっきりとした目的、方針を持って並べているようには思えません。特に住戸A、住戸B、のように2パターン以上ある時にどちらをいくつ並べるかは可能範囲の数字から一番多く並ぶものを探しており、おさまらない時にAとBを入れ替えるなどして何をやっているかわからなくなり混乱している人もいます。また、住戸以外の共用室を計画する必要がある場合なども同じく、その扱い(どのようにおさめていくか)に混乱している方が見受けられます。
合計いくつの住戸(または共用室)を、例えば「Aはいくつ、Bはいくつ並べる」ということを決めてからでないとまとまるものもまとまりません。建築可能範囲を見ながら並べていく、というやり方では出来ない人はいつまで経っても出来ないと思います(当然、それで出来る方は問題ありません)。

ではどうすれば良いのか。
まずは断面構成の検討をするべきなのです。今年の課題は住戸に面積を食われることに加え、廊下階段等の共用部不算入が想定されるため、低層タイプであっても例年のような最大外形の出し方になりません。2、3階を延面積から引いて1階の最大外形を出しますが、これを元にした試算③が破綻することはあまり考えられません(下記で破綻する場合に触れます)。そのため試算②、試算③は確認程度の重要度で解説されています。同様に断面検討も結果として明示されており、「この断面だからこの並びになった」ではなく、「この並びを断面に書くとこうなっている」になっています。エスキスを効率良く、かつきれいにまとめるために目指すべきは前者「この断面だからこの並びになった」なのです。
ただ、断面構成を考えるに当たっても様々なパタンが考えられます。住戸を2、3階にまとめてしまうものが基本とはいえ、それがおさまらない時に住戸をいくつ1階に設けるのか。共用室がある場合どのように処理するのか。それらの決め方が何となくの方も多いはずです。「この断面構成で問題なく進めることが出来る」という確信が持てず、住戸プランを検討し始めた後スパン割などが上手く行かずにその断面構成を変更するということも往々にして起こっています。つまりただ断面構成から考えるだけでなく、その断面構成で良いという確信を如何にして持つか、がポイントになってきます。確信さえ持てれば(何をいくつ並べるということが決まれば)、後はI型、L型、ツインの判断は純粋に建築可能範囲や周辺環境との関係で決まるので、それが難しい場合(中層タイプですがオリ⑧のような課題)もありますがやるべき事がはっきりし、無駄に時間をかける必要は無くなります。

※以下有料パートになります。他の記事でも書いていますが基本的に通学されている方は講師が教えてくれる(あるいは知っているけどあえて伝えていない=消化不良になるのを防ぐ)内容です。目次でタイトルは確認できると思いますので気になる内容は購入前に講師に聞く方が良いかと思います。あくまで講師に恵まれていない方や独学で学習されている方向けに書いています。

※今後部数を切って値上げさせていただく予定です。

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