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エスキスのコツ〜2020版

※2021年版のエスキスのコツについては9月上旬に本記事を編集して別途アップ予定です(昨年と課題の傾向が近いため本記事内容でも十分本年にお役立ていただけると思います)。

はじめに

ちょこちょこと書いてはいたのですが、「各階平面図」という発表内容の影響で学習内容の概要が出揃うまで待っていたためまとめ上げるのが遅くなってしまいました。強化対策課題を経てここから応用力養成というタイミングですが、エスキスの学習において泥沼にハマっている方には役立つ内容になっているかと思います。

エスキスの基本学習

そもそも、エスキスについての手順や効率については資格学校(S)のテキストに書かれてあるものはかなりよく出来ています。特定の条件下とはいえ、普段設計をしていない人や場合によっては建築畑でない人が限られた短い時間の中で国家資格合格レベルの製図課題をこなす事が出来るようになる、というのは冷静に考えると物凄い事です。
しかし、設計はある水準に至る万能の導き方があるわけではない、ということも事実です。そのため資格学校では多くの課題をこなし、引き出しを増やしその組み合わせでなんとか対応出来るようにしているわけです。そのため講義においては毎回その課題によって学習してほしい事(新しい引き出し)、及びその解説に重点がおかれます。どうしても解答例ありきのような解説になりがちです。

受講生の不安

ただ、多くの受講生は新たな学習要素に取り組みつつも「なぜ先週までのやり方では出来ないのか」という所に不安を覚えているように思います。そしてそれが毎週続くので精神的にも辛く、「エスキスは難しい、苦手だ」という意識が作られていくようです。「先週までのやり方で出来ない」のは上記の通り、引き出しを増やす=新たな特徴を学習することに主題が置かれているからです。
ここで混同せずに認識してほしいのは、新たな学習要素によって出来ていないのか、それ以外の所(すでに学習した所)が出来ていないのか、ということです。
初受験生は最初期において全く何もわかっていない為「全て出来ない」所から入るのが当たり前です(たまに最初から出来る勘のいい受講生もいますが)。しかし地道に復習していれば「出来る所」が蓄積されていきます。課題が進むにつれ、ポイントがエスキスの基礎から応用へと移っていくために「常に出来ていない」ように見えますが、実はそうではなく、「出来ていないように見えても出来るようになっている」受講生が大半(感覚的に6割〜7割)です。ただその大半の受講生が新たな学習要素によってのみ出来ていないのかというとそうではなく、学習済みのことも所々ミスをしてしまいます。「やったことがある、知っている内容」でも間違えてしまうのです。そのため、最初に書いた「なぜ先週までのやり方では出来ないのか」という所に意識が向いてしまうようです。
既学習部分が根本的に出来ていない受講生も当然います。しかし多くの受講生は、話を聞いていると既学習部分に関しては理解していないようには思えません。つまり多くの受講生はエスキスに対して必要以上の不安を抱えている、ということになります。

エスキスに苦手意識があるだけか、本当に苦手か

エスキスに不安を抱えている受講生は、一つは「どこで間違えているか」整理出来ていない、つまり新しい要素やそれに深い関わりがあるところで失敗していることを認識出来ていない場合があります。このタイプの受講生は意識の持ち方で劇的に出来るようになります。復習をしっかりしているので既学習部分に不安がないからです。このタイプの受講生はエスキスが苦手なのではなく苦手意識を持っているだけなので心配する必要はないと思っています。
もう一つのタイプは『エスキスが苦手な受講生の共通点』で書いた本当にエスキスを苦手にしている場合です。出来るようにはなっていることが増えているもののミスも多い彼らに共通していることは手順の意味がわかっていないということです。実際には手順の本質的な意味を理解していなくても正確に検討を行いその情報を採用して進めていれば基本的に問題ありません。「出来る」受講生の全員が手順の本質的な意味を理解しているかというとそんなことはありません(ただ彼らは手順とその結果の採用に抜け落ちがない)。しかしエスキスを苦手にしている受講生はどうしても手順が中途半端であったり、整理した情報を採用せずに次に進むということが多く、その為にミスが起きる(というよりミスが起きざるを得ない状況で進める)という結果を招きます。

エスキスが苦手な受講生への対応

僕の担当受講生にそういう方がいる場合(毎年半数以上がそういう方です)、採用する対応は二段階です。まずは手順の徹底を伝えます。最初期はサボっていてもミスが続くので認識を改め手順を徹底出来るようになる受講生も一定数います。しかし手順が完璧ではない受講生のほとんどは結局意味がわからないから手順が抜け落ちたり情報採用していないので、どちらかと言えば改善されないことの方が多いです。
そこで、二段階目で手順の本質的な意味を伝える、ということを行います。これは正直、あまりやりたいことではありません。なぜならただでさえ短い短期講座の中、素直にやっていれば必要のない学習要素が増えるようなものだからです。ただ地頭のよい受講生などは本質的な意味がわかることで学習効率も学習意欲も増すとうことが多々あるので一概にどうしたら良いということがないのが難しい所です。

以降、この記事ではコツというか、上記で触れた「手順の意味」について主に書いていきます。手順がチグハグな受講生は上手く行かなかった時、何を持って上手く行っていないと確信すべきか、その場合どのようにリカバリーするのか、を考えることが出来ません(手順がしっかりしている受講生は基本的に道をあまり間違えないのでリカバリーの必要がない)。そのような受講生に対応策として伝えている内容です。手順の持つ意味を理解することで「間違い」に気付き、同時にリカバリーの選択肢も見えてきます
なお、エスキス用紙で言うと左半分の上あたりに書いている内容です。1/1000の平面検討以降は『エスキスのコツ〜平面検討・プランニング』に(ゾーニングタイプ前提の内容ですが大空間の置き方に触れている所を除けば今年の内容のものとして読んで頂けます)書いています。また、『エスキスのコツ〜断面検討』についてはゾーニングタイプに特化した内容で今年の課題の場合は関わりがありますが、下記で触れる内容を詳しくしたものなので興味がある方のみ読んでもらえればいいかと思います。

 以下有料パートになります。他の記事でも書いていますが基本的に通学されている方は講師が教えてくれる(あるいは知っているけどあえて伝えていない=消化不良になるのを防ぐ)内容です。目次でタイトルは確認できると思いますので気になる内容は購入前に講師に聞く方が良いかと思います。あくまで講師に恵まれていない方や独学で学習されている方向けに書いています。

※今後部数を切って値上げさせていただく予定です

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