見出し画像

読み取りについて

はじめに

 今週末からエスキスの講義も始まりますが、まず最初に行うことは読み取りです。「読む」だけですが、心の準備をしておくだけで幾分取り組みやすいと思います。そういうことを書いていきます。

課題文は問題ではない

 最も重要なことは、課題文はクライアントである、という意識を持てるか、です。入試の数学の問題などとはは全く異なるものです。
しかも、そのクライアントは敷地の情報や各室の面積、計画する時に失敗してはいけない注意点(留意事項)、ひいてはこちらがプレゼンする時の説明すべきコンセプト(要点記述)まで用意してくれている、非常に建築への造詣が深い、優しいクライアントです(こちらが調査したり考えたりする手間がいらない)。さらにデザイン性などという、評価基準の曖昧なものは求めていません。経済性と合理性と現実的な環境性能のみを求めています。身構える必要はないのです。
 そう思いながら読むと、少しはわかりやすくなると思います。

読み取りの方法

 読み取りの重要性は「製図試験に必要な力」で触れたので割愛しますが、その方法として僕がお勧めしていることをお伝えします。(※教室や講師によって指導方法も違うので通学している人はまずは担当講師の指導に従うことをお勧めします。こういう方法もある、くらいに思っていてください。)

まず俯瞰で眺めます。去年までと違うところ、普段の課題文と違う所をざっと探してください。細かい内容まで読まずに、です。去年の本試験であればA2で、いきなり紙自体の大きさも違ったわけですが、そのような「違い」をまず意識して深呼吸しましょう。いきなりのめり込み過ぎないことは重要です。5分もかからないはずです。

次に通しでマーカー等引かずに読みましょう。まず、「読む」という行為に集中して読みこみます。内容を一通り把握するのが目的です。

集中して読めたなら、2回目はマーカーや線を引きながらです。1回目で読めているかのチェックも兼ねることが出来ます。エスキスへの準備をします

最後、3度目としてマーカーの抜けや線の引き忘れがないか再チェックです。

 つまり3度読んで欲しい、ということです。読み取りは時間配分として15〜25分と考えると、少し間に合わない可能性もあります。速く読むことが必要、ということです。
 ただ、適当に3回ではなく、上記の通りそれぞれに目的を持って読むことです。

 読み取りはマーカーの色など自分のルールが確立してくると速くなってきます。プランニングに時間がかかるのは常ですから、効率よく済ませようという意識が働くのも理解できます。ただ、ほとんどの受講生は速くなる=雑になる、になっています。マーカーも作業化し、何をチェックすべきなのか、自身でわからなくなっている受講生もいたりします。

 繰り返しですが、読み取りは作業化できます。自動化と言ってもいいと思います。ただ読み取りが出来ていないと当然エスキスに破綻をきたします。

 あえて自動化しないための3度読み、だと思ってください。

読み取りの勉強法

 さて、上記①〜④ですが、最も重要な行程は②だと思っています。ここでちゃんと読んで、ある程度頭に入れることが出来るかです。全く頭に入らないのであればいきなりマーカーし出すのと何も変わりありません。②=1度目の素読がしっかり出来ているか、これを確認するための勉強法について書きたいと思います。ちなみにこの勉強法は3度読みをしない場合でも非常に有効だと感じています。

 単語帳を用意して、課題文で与えられる個別情報を書き出してください。例えば次のようなものです→敷地面積、敷地の西側状況、建ぺい率、面積下限、展示室面積、管理事務室広さ(または使用人数)、外部施設の有無、etc。要求図面の内容を細かく書いてもいいでしょう。それをシャッフルして、課題文を5分で読んだ後、上から3つ答えられるか。いきなり答えるのは難しいと思います。ただこの訓練を初期から積むことで、そして3度読むことで、読み取りに関しての読み落としはほぼ無くなります(残念ながら統計的に100%読み落としが無くなっているわけではないですが)。大事なことは初期から行うことで習慣化出来ることです。

 ちゃんと読めていたら、まだ計画(エスキス)が出来ていなくても、「あー、クライアントが求めてるものがわかった」となるはずです。勘違いしていたり、求められているものがはっきり解っていなければ、もう1度読む(=クライアントに聞く)必要が出てきて2度手間です。ちゃんと「わかった」状態でエスキスに入れるよう、読み取り力を養ってください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?