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8/1 米国経済どっち向いてる?

こんにちは、アトレです。昨日の半導体に引き続き、今日もファンダメンタルズについて語ります。今回は米国経済全体についての解説です。
説明したいのは、米国株式は現在歴史的に見ても割高で、景気後退とか報道されている中でなぜ上昇を続けており、今後どこに向かおうとしているのか?この点、分かりやすく解説したいと思います

まずはファンダメンタルズ的には現在の米国企業の業績が好調で、今後は更なる回復が期待される為、株式が上向きになるのは理に適っています。問題はその「期待」が実現するのかは別問題なので、この点に注目となります。

企業業績についてFactsetの内容も踏まえながら解説します。
現在、S&P500の銘柄の半分が決算報告を終了しました。約80%がEPS(つまり収益)でアナリスト予想をクリア、64%が売上でクリアという状況です。これはいつも通りの水準で、FRBの高金利政策とは言え、このQ2の決算で企業の業績が予想よりも悪化するような事はありませんでした。つまり、この決算シーズンで相場が急落するような悪材料は今のところ出てきていないという事になります。

但し、Q2はS&P500は▲7.3%の収益減で、これは2020年Q2のコロナ打撃をモロに受けた時以来の下落となりました。つまり、アナリストの予想は超えたものの、絶対値としては弱い、そんなQ2決算になっていますしかも密かに、6月末時点では▲7.0%であったところが、▲7.3%に7月末には下方修正されているので、やはり実経済へのダメージは深くなっているようです
*このへこみは今の相場環境ではあまり重要視されていないようです。

このQ2決算を紐解くと、やはりドルが高く、海外から収益を得ている会社の方が苦戦しているようで、収益の5割以上を海外に依存する会社は▲20.8%
の下落、逆に5割以上を国内市場に依存する会社は0.4%のプラス成長と、米国内型の商売の会社の方が好調という結果になっています。

但し、これにもからくりがあり、下落の犯人はエクソンモービル、シェブロンのエネルギーセクターの二強と、メルク、モデルナ、ファイザーのヘルスケアセクターの三強によってもたらされています。この5社がなければ▲20%の下落はほぼチャラになるほどです。従い、足元の経済ではエネルギー、ヘルスケアの2セクターが苦戦を強いられています

では、今後の見込みはどうなっているか?以下は今期Q2から2024年までの成長率です。ここから読み解けるのは今が景気の底で、今後はクオーター毎に7%の成長が見込めるという事です。これにより、2023年も通期ではギリギリプラスになるという見込みです。2024年も通期で12.6%は非常に強いと言えそうです。

中でも成長を支えるセクターはCommunication Service、Information Technology、Consumer discretionaryのセクターと見込まれています。反対にUtility、Energyセクターなどは足を引っ張ると見込まれており、注意が必要です。また、Factsetのアナリストによると、今後S&P500のターゲットは4997まで上がるそうです。

と、ここまでは目先が明るい話を致しました。但し、本当に実現できるか?の部分が重要です。仮にS&P500の企業がここから急ピッチで業績回復する場合、2022年に散々解雇した従業員を呼び戻す必要があります。また、高い需要に備えて原油の使用量も上げていく必要があります。また、工場のキャパ拡張など事業投資の為の資金が必要になります。
これらは全てインフレにつながる項目です。従い、今はインフレが去ったという期待からか株式が上がっておりますが、企業業績がここまでダイナミックに向上すると金利は下がるどころか、上がる可能性すらあります

可能性としては、企業が従業員を解雇して失業率が高いままに売上を維持すれば経費は低いままに利益は残るので、実現不可能ではないですが、その場合、多数の失業者が生活に困る事になるので、国民消費が上がらずやはり不況を招くと思われます。
因みに、米国在住の友人曰く、インフレはかなりキツく、現地では困窮した日本人駐在員向けに賃上げが進んでおり、それほど生活を維持するのが厳しいとの話を聞いております。以前に私が行った計算では物価は過去2年間で15%ほど進行しており、賃金の上げが追い付いていない為、一般市民の生活は圧迫されたままという状態です。それでいて雇用が強いので、この物価は当面高止まりしそうです。

つまり、今後半年程度のスパンで見れば、景気は強く、これから控える逆業績相場(企業収益の下落が止まらないフェーズ)はなかなか来そうにありません。但し、高金利が長く維持される可能性が高いので、住宅、自動車など値の張る物の売上がなかなか伸びず、そこから派生して多くの産業がゆっくり長くダメージを受けるフェーズが来る可能性が高くなります。

例を挙げると、中国、台湾です。この二国は既にデフレが進行しており、逆業績相場の様相になってきています。以下は台湾の製造業景気信号指数で、10.5を割ると景気後退を指します。3月以降はずっと交代が続いており、輸出依存国である台湾が大国向けの輸出で実経済が苦しんでいる様が見て取れます。

また、以下は中国の製造業PMIで製造業の景況感を表します。こちらも直近で回復が見られますが、まだまだ後退局面の50割れを維持しています。

中国はCPIを見ると既にデフレ化が進んでおり、安くしないと物が売れないという世界観に変わりつつあります。また、欧州も南欧を中心にインフレがさほど進まず、高い金利を背景にデフレの心配が出てきております。

つまり、米国よりも中国、欧州の景況感が怪しく、逆業績相場はこれらの国から徐々に米国に波及していくのではないかと思います。今後は先行指標となり得るこれらの国の経済状態にも注目しようと思います。




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