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家業に戻る条件が、新規事業を立ち上げることだった|株式会社新和工芸 石塚伸宏さん


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\  第五弾はこの方 /


株式会社新和工芸
三代目 石塚伸宏さん
家業に戻る条件が、新規事業を立ち上げることだった

石塚さん 写真



ヴェルディ:まずは石塚さんの家業について教えていただけますか?

石塚さん:弊社は今は二つの事業を主に執り行っております。既存事業の屋外広告業と新規事業の不動産鑑定業です。屋外広告業とはいわゆる看板屋のことを指します。創業以来携わり続け、55年間事業を広げています。規模の大きいものから小さいものまで自社にて一気通貫で製作出来る点を弊社の強みとしています。
不動産鑑定業は私が立ち上げた新規事業です。これまでの経験から民間評価を強みとしており、売買の他、事業承継や財務諸表関連等幅広い目的でご利用頂いています。

石塚さん既存事業


ヴェルディ:ありがとうございます!では続いて、石塚さんご自身のバックグラウンドについて聞かせていただけますか?

石塚さん:はい。私が昔から父に言われていた言葉があります。「継ぎたいのなら自分で事業を持って来い」これは父から出された家業を継ぐ条件です。家業に入社するまでの間、この言葉が自身の意思決定に大きい影響を与えたように思います。
私は、大学卒業後すぐに家業に入ったわけではなく、いくつかの会社で様々な業務に携わらせていただき、その後家業に入りました。なので卒業後は、当然就職活動を行っていたのですが、その際も父からの言葉を念頭に置き、家業を幅広く捉えた広告業界を中心に見ていました。しかし、結果として求人広告という広告繋がりで偶然ヒットした株式会社キャリアデザインセンターに入社します。最も大きい理由は働いている人が魅力的だったことですが、いずれ家業を継ぐということを正直に話して前向きに捉えて頂いたこと、幅広い業種に出会えることも大きかったです。

入社前にリーマンショックが起こったことで、広告制作職から法人営業へ配属が変更。市況は大変厳しかったですが、その分仕事を一つ取ることがどれ程難しく、且つ尊いことかを感じることが出来、ファーストキャリアを営業で始められて良かったと思っています。その後人事(新卒採用担当)も経験しましたが、在籍期間を通じ「結局自分はどうしたいのか?」と自身の意志を確認される場面が多く、仕事の基礎を作って頂いたと感じています。
その後、EC関連のベンチャー企業、不動産鑑定会社を経て、家業である新和工芸に入社することに至っています。


ヴェルディ:なるほどー。「家業に戻る」「家業を継ごう」と思った明確なきっかけはあったのでしょうか?

石塚さん:うーん、特別何かがあったから継ごうと思ったわけではなく、物心付いた時には自分が家業を継ぐという気持ちでいました。それには、創業者である祖父の存在は大きかったと思います。
祖父は私が生まれて間もなく亡くなっているので記憶にはあまりないのですが、かなり強烈な方だったと聞いています。戦時中に捕虜にされそうになり、「捕虜になる位なら死んだ方がマシだ」と電車から飛び降り、自力で帰って来た方です(笑)怖いものはもう何もない。看板業も知人の方がやっていたのを「自分の方がうまくやれる」といった勢いで始めたそうです。元々農家だったので曾祖父とは大喧嘩だったそうですが、かなり破天荒ですね。私は父から直接的に継ぐように言われたことはなかったのですが、祖母は私によく「お前はおじいちゃんの生まれ変わりだ」と言っていました。そのように破天荒な祖父だったので、小さい頃に聞く祖父の話はまるで冒険譚で楽しかった記憶があります。そんな記憶は色あせることはなく、年を重ねてからも家業を継いでいきたいという気持ちに変わりはありませんでした家業があることを誇らしく思っていたのと、自分がそれを繋いでいくという使命感があったからです。一方、先ほど紹介した父との家業を継ぐための条件である新しい事業についてはなかなか見付からず、継ぎ方についてはかなり悩みましたね。

石塚さん 既存事業②


ヴェルディ:お父さんから出された、家業を継ぐための条件から今の新規事業開発につながったということですが、不動産鑑定業をはじめようと思ったきっかけや新規事業の取り組みについて詳しく教えていただけますか?

石塚さん:はい。先ほど述べたように、父との条件である新しい事業についてはなかなか見つかりませんでした。悩んでいた時期は、転職先で上手く結果も出せず、挫折感を味わった時期でもありました。そんな折、父から「不動産鑑定士の先生に会ってみないか?」と誘いがありました。実際にお会いしてみると、その仕事内容に興味を惹かれ、また自身の性格にもマッチしていると考え思い切って勉強を開始しました。資格取得のための受験には苦労したものの、何とか合格。
受験生時代から勤務していた株式会社三友システムアプレイザルの東北支所(仙台市)にお世話になりました。仙台市で働き始めた頃はまだ震災の爪痕が残っており、震災に係る事業再生絡みのお仕事が中心でした。東北6県を中心に仕事をしましたが被災3県は特に多く訪れ、自分のような後継者の立場でも後を継ぐことが出来ないというケースも多く目にしました。これまでは継ぐ、繋げるという使命感が自身の気持ちの多くを占めていました。
ですが、東北で働くことを通じて「自分自身でも新しいことをやってみたい」という想いが強くなり、父との条件だからというわけではなく、自分自身の想いとして新規事業をやりたいと思えたきっかけだったように思います。

それから家業への入社と同時に自身の不動産鑑定士の資格を活かし、不動産鑑定業を開始しました。秋田県は公的な評価をされる方が多い中、弊社では民間の鑑定需要への対応を強みにしています。売買の参考資料として活用される場合は勿論、担保評価、事業承継や相続対策を前提にした同族間売買での評価、現物出資や財務諸表関連等にも対応しています。立ち上げ後直ぐにPRも兼ね日本経済新聞社主催のスタ★アトピッチにも出場しました。不動産鑑定業という、既存事業とは全く異なる事業について、発表することでより新規事業についての考えをブラッシュアップできたと考えています。

石塚さん③


ヴェルディ:不動産鑑定業には、既存事業である屋外広告業が活きたリソースなどはありましたか?

石塚さん:「看板業と鑑定業ってシナジーあるの?」とよく言われます(笑)実際、既存事業とのシナジーを狙って計画的に始めた訳ではなく、偶然の出会いによって始めた部分も大きいのであまり期待はしていなかったのが正直なところです。ただ、思った以上に活きた部分はありました。
まず何と言っても財務面。鑑定業は場所とネット環境とプリンターがあれば、それ以上の追加コストは数える程のため、ゼロからの立ち上げと比べると相当アドバンテージがあったと思います。
次に、お客様の繋がりです。当社の看板部門は店舗系看板が多いのですが金融機関系のお客様もいらっしゃいます。金融機関の場合、担保評価や遊休資産の売却の際に評価を取得する場面があるため、評価の依頼を頂くケースが複数ありました。また、拠点集約のため店舗撤退をするケースで鑑定評価を依頼された際には、看板の撤去のご提案も出来ました。
最後に何と言っても、企業として積み重ねた信用・信頼です。既存の繋がりでご紹介頂いたケースでは、全くの新規事業にも関わらず「新和さんにはいつもお世話になっているから」と何度も言って頂けました。これは一朝一夕では出来ない貴重なリソースと思っています。

ヴェルディ:一見すると縁遠い業態に見えますが、実はかなり家業のリソースが活きた点があるんですね!ところで、新規事業に取り組まれる中で、苦労したポイントや新たな発見などはありましたか?

石塚さん:そうですね...鑑定上の話で言えば、鑑定業のスケール性と私のコミット具合には苦慮しています。まず、民間の鑑定需要が限定的であり、想定よりスケール感は見込めない所感です。金融機関や税理士法人、一般の事業法人と挙げられる箇所には広域的に営業に伺いましたが、鑑定を取るケース自体が少ない。継続的に鑑定需要がある先は既存の先生がいらっしゃるので差別化も必要だと考えています。
次に、私のコミット具合ですが、鑑定業は完全に一人でやっているため案件が入ると私が掛かりっ切りになってしまいます。鑑定業の他、既存事業のテコ入れ、バックオフィスの効率化等の仕事もあるため時間の使い方にはかなり課題感があります
また、会社全体で言うと、私の看板業に対する理解の浅さが課題です。家業入社初年度についてはこの新規事業の立ち上げに邁進していた他、既存事業については経理等のバックオフィスを中心にしていたため、看板業の実務面には関与していませんでした。この点については今期集中して看板業の理解を深めたいと思っています。


ヴェルディ:ありがとうございます。最後に、石塚さんが考えるこれからの未来展望についてお聞かせいただけますか?

石塚さん:看板業の強みと不動産鑑定業の強みを活かした展開が出来ないかと考えています。私の知る限り看板業と不動産鑑定業を両方やっている事業者はいないので、独自の展開を模索していきたいなと考えています。最近、少しずつ看板業の実務にも携わっているのですが、思った以上に面白いし奥が深いんですよ。こんなことも出来るの?ということも多いので発信力の強化もしていきたいなと思っています。
先日のアトツギベンチャーサミットで一般社団法人ベンチャー型事業承継のメンターを務める、株式会社カスタムジャパンの村井社長が「汚い、嫌だ、ダサいところが空白地帯、カッコいいと思われたら終わり。雨ざらしに宝あり。」と仰っていて、これはウチもそうだ!と背中を押された感があります。コロナの影響も少なくはないですし、市況は厳しさもあります。ただ、今までずっと目標としてきた家業を継ぐという望んだフィールドにいるので、前を向いてこれからもチャレンジを続けていきたいと思います。


石塚さん ④


(文/田村みらい)

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