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どうやってオリシャーたちはブラジルへやってきたのか(1)

  5月13日はブラジルは、奴隷解放の法律「黄金法」にイザベル女王が署名をした「奴隷解放記念日」です。1888年のことでした。

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リオにある「ネグロ博物館」にあるイザベル女王の近影

 第1回目から、ブラジルの信仰「カンドンブレー」の神様をご紹介していますが、これらの神々はもともと、奴隷として連れてこられたアフリカの人々のものでした。今日はヘジナウド・プランヂさんの「シャンゴー」という絵本から、神々のお話がどうやってブラジルに伝わったかの章を拙訳したものをご紹介します。

 奴隷制という言葉からは、奴隷船の悲惨な航海や、支配者と奴隷の非人道的な関係という印象が最初に出てくるのではないでしょうか。アフリカからブラジルに連れてこられた人たちは200万人とも言われており、多くの人の命も尊厳も奪いながら、300年以上もこの制度は維持され続けました。多くの活動家たちの努力によって自由を得ましたが、1900年を前にした元奴隷の人たちは何の保証も援助もないままに極貧の生活に放り出され、社会構造的に不適応なものとして追いやられていくことになりました。

 現代においてこの日を考えるとき、差別や偏見が今もなお根深く存在し、その意識に抑圧されている存在がいること、あげられることのない声があることを忘れないようにしたいと思います。

彼らの信仰「カンドンブレー」も、1934年まで法律で禁じられ弾圧を受け続けました。

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シャンゴー・雷のお話はどうやってブラジルへやってきたのか

ブラジルとアフリカには、大西洋に沿っていて、南半球に位置する、というだけでない共通点がたくさんあります。

ブラジルは最初、先住民が暮らしていました。
その後ヨーロッパ人に植民されました。
ブラジルが形成されるために、奴隷労働のため黒人のアフリカ人も加えられました。
その後アジア、アメリカ大陸と、ほぼすべての国から人々はやってきました。
ブラジルを構成するその人たちはみな、それぞれの慣習、伝統、信仰、聖人や神々を連れてきました。

 ブラジルに連れて来られた民族のひとつに、ヨルバがあります。ナゴーとも呼ばれます。彼らはオリシャーという神々が「オルン」という天空からやってくる前に、地で多くの運命を生きたと信じています。
ナゴーが信仰するのは、オロルン・天空の主。
オリシャーを創り、この世界で起こることについてオリシャーに使命を持たせました。


シャンゴーはそのうちの、雷を治めるオリシャー。
彼はこの地で、偉大で正しい王でした。
オルンでオリシャーになったのち、統治と法についての責任者となりました。
 自然界にもいろんなものがあり、それぞれのオリシャーがいます。ものごとのそれぞれの側面、その逆側も、オリシャーが治めています。それぞれの神様には生命体のそれぞれを統治するお務めがあるのです。
海にはイエマンジャー、母性を護ります。
鍛治と道はオグンに属します。
オショーシは狩りの主人、飢えを抑えます。
オッサインは葉っぱを支配して、薬を作ります。
ヤンサンは稲妻と嵐。
オシュンは淡水、豊かさと愛の女神。
オムルーは、ペストを操り、病を治す。
オシュマレーは雨を治めます。
それぞれのことを、オリシャーが司っています。
人間たちが幸せで平和で、健康で、お金があって繁栄して暮らせるように、オリシャーの庇護が必要です。
そのために人間たちはオリシャーに贈物をし、祭りを催し、踊り、音楽を奏でます。
このようにしてヨルバの黒人たちは世界を説明したのです。

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 ヨルバの人々が捕えられた時、家族と離ればなれになり、アフリカから奴隷船にのせられてブラジルへ連れてこられました。
たた残忍に奴隷にされるために、私達の国へ来たのです。
でもひとりではなく、オリシャーたちをいっしょに連れてきました。
ここで再びアフリカの宗教を、たくさんの贈物を自分たちの神々に捧げて、音楽と、ダンスの伝統を伝えながら信仰しました。
オリシャーはひとびとが奴隷制を耐えることを助けてくれました。
1888年5月13日に、ブラジルの奴隷制は終わり、しかし、アフリカに戻った黒人はわずかでした。
もう大半はブラジル人になり、この国の一部となりました。
オリシャーたちもすでにここで永遠のものとなり、カンドンブレーとよばれ、今なお生き続けています。

オリシャーのお話はたくさん語られており、そのお話は彼らがどのようであったか、どんな運命を生きたのかを教えてくれます。

彼らの愛、闘い、欲望、痛みまでもを語るでしょう。
全ては遠い昔に起きていたことで、彼らがこの世界に生きていた時のお話し。
ヨルバの人々は人生で起こることは全て繰り返していると考えます。
 というわけで、今日私たちの誰かに起こっているお話は、その昔すでに起こったことで、オリシャーの誰かか、誰か人間か、または、動物かもしれません。
彼らにとっては、昔のお話というのは、原因と終結を知ることができる、大変ためになるもので、人間が問題を解決するのを助けてくれるものです。

 全てのお話を知っているのはイファー・預言のオリシャーです。イファー・アジヴィーニョは私たちの世界に生きていた時に、昔々のお話を学びました。
誰かに問題が起きれば、その人に今どのお話が起きているのかを見つけ、その人を助けるために何をしなければならないかを、決めました。
16の魔法の貝をザルか、床に投げて、そこに落ちた落ち方が、イファーに、何が再び起きているお話が何なのかを教えてくれます。
ヨルバのひとびとは、何も新しいことなどなく、全ては繰り返していると信じています。
 オロルンがイファーを天界に連れていって、オリシャーにしてからもなお、そのお話たちは、後継者たちによって、記憶されていきました。
彼らはジョーゴ ジ ブジオスという魔術を学び、それによって今


お年寄り
子供
によって生きられているお話を解き明かします。

イファーの弟子たちは、問題の原因を探し、薬を考え、解決を提案します。
どのオリシャーに捧げ物をすべきか、
健康で平和で、愛とお金があって、繁栄を取り戻せるよう助けてもらうには、何が正しい捧げ物なのかを教えてくれます。

 ブラジルではこの伝統を受け継ぐ者を、パイ ヂ サント、マンイ ヂ サントといい、カンドンブレーのテヘイロ(儀式を行う場)を司ります。
彼らはブジオスを投げて、昔、イファー・預言者が地に生きていた時に話してくれた全てのお話を全て知っていて話してくれます。

 このようなやりかたで、ブラジルではシャンゴー・雷のお話も受け継がれてきました。
 それは、奴隷たちの記憶の一部であり、また多くのアフリカ以外の異なる出自を持つブラジル人も、だんだんに黒人の神々を愛するようになりました。
カンドンブレーのテヘイロでは、たくさんの音楽、踊り、さまざまな色と、動きがいつもあります。
このように、オリシャーたちの昔のお話は、カンドンブレーで再現され、思い出されるのです。
奴隷たちによってブラジルへ運ばれたアフリカの神々のお話は数多くあり、お話するにはページが足りないほどです。
ですので、この本だけでなく、オリシャーの歴史を語る別の本もあります。正義の問い、イファー・預言者、この本「イファー」の全ては、お話好きのイファーによって語られたものです。


というわけで別冊本もぼちぼち翻訳しようと思います。


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