「ぼくの家族と祖国の戦争」

映画『ぼくの家族と祖国の戦争』公式サイト
https://cinema.starcat.co.jp/bokuno/


「歴史は勝者が作る」と言われるが、
逆に敗者、被害者に寄り添うストーリーがあり
映画はそれを事実として語り継ぐのだろう。

逆の視点、
見始めてすぐに思ったのはこの言葉だ。

第二次世界大戦時のデンマーク。
僕たちには知識として薄いが
この国は周辺他国同様ドイツナチスに占領された。
市民生活はナチス支配下で大きく制限され過酷な状況であった。
そして
本作舞台にはそこに1945年4月という微妙な時が。
ソ連が対ナチス戦に反撃をはじめ
各地でドイツ軍の撤退、敗戦の色が濃くなる。
同時に各国に移住していたドイツ住民は即、難民として移動を差ざるをえなくなり
ここデンマークでも(依然ドイツ占領下)ナチスの一方的な押し付けで
多くのドイツ人難民が押し寄せる。
デンマーク住民は今までのナチスによる過酷な仕打ちに対して
その責任とは全く無関係なドイツ難民に対して
支援を断るだけではなく
支援しようとする同胞、主人公家族へも非難の目を向ける。
この映像はかつて何度も目にした
ドイツ人によるユダヤ人迫害のシーンそのままに。

僕には象徴的に見えたシーンとして
病に倒れるドイツ難民を支援し町の住民から非難の目で見られる主人公家族
その長男が子供たちの戦争ごっこで
「お前はナチス役だ」と言い渡され
腕にあのハーケンクロイツの付いた腕章をつけられ
デンマーク軍役の子供たちにいじめられる。
・・・・これは正に、ドイツでユダヤ人がダビデの星の腕章をつけられて
アウシュビッツに向かう貨車に詰め込まれるシーンではないか、と。

主人公、市民大学学長とその家族
同胞から非難の目、時には暴力にも会いながらドイツ難民を救う、
そして、最後は堂々とした姿でこの街を去る
この雄姿、見る僕たちに尊厳とは何かを示してくれた。

監督・脚本 / アンダース・ウォルターは
1978年生まれ、デンマーク出身。
アカデミー賞で短編実写映画賞を受賞して
さらなる活躍が期待される。

主人公の役の
ピルー・アスベック
1982年生まれ、デンマーク出身。
自国だけでなくハリウッドでも活躍する実力者。

息子役の
ラッセ・ピーター・ラーセン
デンマーク出身。本作のオーディションで勝ち抜き、長編映画デビュー。
演技とは思えない子供ならではの本心が垣間見れた。

本年度
極楽映画大賞ノミネート!

2024年8月16日 公開

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?