「ロスト・キング 500年越しの運命」

https://culture-pub.jp/lostking/

シェークスピアと徳川家康はほぼ同期。

僕はよくこの事実に言及する。
シェークスピア1564~1616
徳川家康1543~1616
と生まれは違うが没年は同じ。
まっ、これは雑学ですが
この事実を知っておくだけで
世界史は俄然面白くなります。


さて本題。
シェークスピア登場のさらに100年前に即位した
イギリス王リチャード3世、
一介の歴史好き主婦があることをきっかけに長年(500年!)その存在が不明だった
そのリチャード3世の遺骨の存在を21世紀の2012年に発掘した事実に基づく映画。

本作を観るにはまず
その時代背景を知っておくことをお勧めする。
リチャード3世の15世紀というと
日本では戦国時代
イギリスでは薔薇戦争時代。
薔薇戦争とは、
これに先立ちフランスとの100年にわたる100年戦争後に
発生したイングランド中世封建諸侯による内乱。
百年戦争の敗戦責任の押し付け合いが次代のイングランド王朝の執権争いで
ランカスター家とヨーク家の、30年に及ぶ権力闘争だった。
最終的にはランカスター家系のテューダー家のヘンリー7世が武力でヨーク家を倒し、
ヨーク家のエリザベス王女と結婚してテューダー朝を開いた。

リチャード3世はヨーク朝最後のイングランド王、薔薇戦争の最後王であり
100年後にシェイクスピアによって、ヨーク朝に変わって新たに興ったテューダー朝の敵役として悪名高き王として描かれ、その人物像が後世に広く伝わった。
しかし一方で、リチャード3世の悪名はテューダー朝によって着せられたものであるとして、
汚名を雪ぎ「名誉回復」を図ろうとする「リカーディアン (Ricardian) 」と呼ばれる歴史愛好家たちもおり、
欧米には彼らの交流団体も存在する。

本作は
一介の歴史好き主婦がその汚名を晴らすべくこのリカーディアンにも加わり
更に考古学者などを巻き込み、できる限りの手を尽くし
どうにかこうにか「本能的」に探し当てたリチャード3世の埋葬地と思われる場所を発掘し
500年後の今、見事に発見につなげるという信じられない事実。
そこに至る、また発見後の
政府や学会のいやらしい立場の人々の描写
さらに
これらに反して主人公が得た至福の場所
・・・・お勧めします。

主演の
サリー・ホーキンス
アカデミー賞女優賞の候補となったイギリスで最も尊敬を集める女優のひとりでもある
彼女の演技が卓越。
(どこかでみたよなーー)と調べてみたら
なんとあの傑作、熊の「パディントン」シリーズで暖かくもユニークなブラウン夫人を演じた人だった。役者ってすごいと改めて思う。

本作のもととなるその主婦
フィリッパ・ラングレー(1962年生まれ)は
リチャード三世の遺体発掘と特定における貢献に対し、エリザベス二世より大英帝国勲章第5位(MBE)を授与される。
彼女から本作へのメッセージの中に
「この映画が日本で公開されると聞いて非常にエキサイティングに感じています。
我々の15世紀の歴史はとても似通っています・・・日本は戦国時代、そしてイングランドは薔薇戦争。
日本にもリチャード三世協会の会員がいることもとても喜ばしいことです。
駐車場に眠る王を探す、という私のジェットコースターのような経験を描いたこの映画をぜひお楽しみください。
忠誠が我を縛る、フィリッパ(別称 キングファインダー)」
※「忠誠が我を縛る」は、リチャード三世のモットーと言われています

極楽映画大賞:主演女優賞ノミネート

2023年9月22日 公開

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