「理想郷」

映画『理想郷』公式サイト
https://unpfilm.com/risokyo/

観る側に
「考えさせ」「目を見開かせ」そして「観るという結果を満足させる」。

環境問題、貧困、人間関係、人種等々、多種にわたる問題を提示し、
「考えさせ」「目を見開かせ」
そこに映画としての物語性、展開、緊張感を持たせ続け
「観るという結果を満足させる」
作品といえる。

舞台はスペイン北西部の地域ガリシア、この過疎の村で起こった
事実を基にしている。

この地の自然に魅入られて移住してきた元教師の物静かなフランス人夫婦。
そこには、過疎解消のため、風力発電の風車建設から得られる補助金を得て
自然破壊に目をつぶる選択を迫る地元民と
対する自然保護をうたう、ある意味外物の夫婦との対立が。
特に貧しい牧夫故に婚姻相手も現れない教養の無い粗野な中老年の兄弟からの危険を伴う嫌がらせが
最悪の事態を招いてしまう。

僕もコロナ前にドイツの田舎を旅した時、
その時期は特に世の中は自然再生エネルギーが万能の救世主のように言われていた時期だが
丘陵に点々と続く大型風車の風景に違和感を感じたことがある。
同時に日本でも
大好きな八ヶ岳の草原で、広く山林を潰しての太陽光パネル設置が進んでいたのを目にしたときには
憤慨すら感じた思いがある。
(・・・現在はこれらの持つ問題点が明らかにされ、ある段階での規制がかかっているフェーズには入ってはいるが・・・)

もちろん、このような僕の感想は一過性の人間が抱くものであり
作品の中にあるような
そこに先祖代々から暮らす人々にとっては目の前にある貧困、差別問題の方が
現実の課題であるという事も理解はできる。
・・・だからと言って無秩序に自然破壊してよい、ましてや犯罪を犯してよいということではない・・・。
ともかく
本作は私たちに
このように問題を提起させ
物語の中に引き込ませてしまう
力を持っている。

スペインで2022年に公開された独立映画の興行収入1位
第48回セザール賞で最優秀外国映画賞
世界で56もの賞を獲得しているのも納得できる。

マニアックな点だが
ところどころのシーンで(実は)行われているカメラワークには
唸る所があるので
この点も少し気にしながら観ることも、おすすめかな。

極楽映画大賞:ノミネート

2023年11月3日 公開

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