「キャロル・オブ・ザ・ベル 家族の絆を奏でる詩」

映画『キャロル・オブ・ザ・ベル 家族の絆を奏でる詩』オフィシャルサイト

2023年7/7公開
https://carolofthebells.ayapro.ne.jp/

国境とは、民族とは 国家とは

本作のベースにある設定は本当に複雑。
特に島国の私たちには、このような作品を見ないとわからないままだったことだらけ。
この作品は現在のウクライナ戦争勃発前の2020年制作ということに尚更驚きが。

内容に触れてしまうが
この設定の概要だけでも書かせてもらう。

・舞台は第二次世界大戦前後の
現ウクライナで当時ポーランド領のイバノフランコフスク

・そこの複合住宅、この住宅の半分の持ち主はユダヤ人で娘二人と親子4人家族
・半分は(多分ユダヤ人)でニューヨークに移民として移住
ここを借りる家族
・ポーランド人(夫が軍人)で娘と3人家族
・ウクライナ人で娘と3人家族、父親がギター演奏、母親がピアノ教師、娘は声楽に長けている

・この地を当初はソビエトが進軍してポーランド人の軍人である夫が連行され娘はウクライナ人家族に預けられる
・次にナチスが進行しユダヤ人家族の両親が連行され、娘二人はウクライナ人家族に預けられる
・ナチスの家族、息子と3人が元ポーランド人の部屋に越してくる
・さらにナチスが敗北しドイツ人の子供がウクライナ人家族に預けられる、が・・・・
・再びソビエトの占領下に、ウクライナ家族は追われる

・そして
最終的にこの3人の娘たちは
1970年代のニューヨークで再開する

という列挙するだけで
回転渦のような設定だが
よく考えて見ると
この地に限らず、世界各地で国境と民族と政治に翻弄されている
これ以上の現実があることに目覚めさせられる。

タイトルでもあるミサ曲
キャロル・オブ・ザ・ベルは
映画ホーム・アローン(90)で歌われよく知られているが
ウィキペディアで調べると
実は
「ウクライナの民謡を元に、
マイコラ・レオントーヴィッチュが1914年に編曲したシュチェドルィック(英語版、ウクライナ語版)に、
1936年にウクライナ人作曲家ピーター・J・ウィルウフスキーが英語の歌詞を付けたもの」
とあった。

ラストシーン近くで
シベリアに抑留されたウクライナ家族の母でピアノ教師である彼女が
粗末なベッドの下にそっと隠し書いたピアノの鍵盤を指で押さえるシーンは
見る側に悲劇と苦痛を、
そして「音楽は勇気を与えてくれる」ものだ
と心から感じさせてもらった。

監督の
オレシャ・モルグネツ=イサイェンコ
は1984年ウクライナに生まれでテレビドキュメンタリーを中心に活動し
本作が長編劇映画監督作品2作目とのこと。

2023年7月7日 公開

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