「草原に抱かれて」

『草原に抱かれて』(監督:チャオ・スーシュエ/96分/カラー/モンゴル語/2022年/中国)9月23日(土)K’s cinemaにてロードショー!!
http://www.pan-dora.co.jp/sougen/

これは内モンゴルを舞台にした映画。
先にも書いたが僕はモンゴル映画の大ファンだ。
といっても、近代化を問題視したような
首都ウランバートルを舞台にしたような作品は対象にない。
事実以前にそんな映画を観たことがあるが、なんとも嫌な気分になった
・・・ゆがんだ近代化に気分が嫌になったのではなく、変に背伸びしたそうした映画にです・・・。

さて
本作は「内モンゴルを舞台」ということをあえて記したのには
重要なわけがある。
モンゴルは
中国の北側に位置するモンゴル国と
中国の自治区である内蒙古自治区、いわゆる内モンゴル
とに分かれる。
ということで
本作は進化する中国の影響を強く受けているモンゴル民族の「今の話」であるという事。
主役のアルスは都会で打ち込みと馬頭琴(この組み合わせもすごいが)のミュージシャン。
言っては悪いが、内モンゴルではこんなレベルの音楽がやっとなのだろうと、思ってしまうが
でもそれが、今の内モンゴルの現状なのだろう。
物語はその「都会に出て活躍する若者」が認知症の母を故郷の草原の村へと向かい
民族のアイデンティティーを見直すきっかけを得る
ひとつのロードムービーと言える。

そこには
(中国の国策なのだろう)
大きな発電風車が林立したり
羊を放牧する草原をドローンが管理したりと・・・
そう、これが内モンゴルなんだと気づかせてくれる。

監督は30代半ばで本作が監督デビュー作ということで
素人臭さや青臭さがあることは否めないが
そこがなんとも言えない味であることも確かだ。
ラスト近くの音楽シーンは回転撮影を駆使し
思わず(デ・パルマが好きなんだろうな)とほほえましい感もある。

雑学:
モンゴルでは移動テントは「ゲル」
内モンゴルでは「パオ(包)」という、そう、パオとは中国飲茶の小籠包(ショーロンポー)のパオと同じ包むという意味から

2023年9月23日  公開

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