やばいおじいちゃん

先日のこと、ステーキチェーン店でランチをひとりで食べていたら、みるからにやばそうなおじいちゃんが目の前の席に座った。まず、マスクの紐が切れているのに切れた紐と紐をわざわざ結んで使っていた。一日ごととかで取り替えずずっと使っているのだろうか。かばんと言ったらいいのか、肩からさげた布の袋は、何十個もの金具でバンドと袋がつなげられており、その自作感と大量の金具が異様だった。
着席後、いつものやつといったように、ランチメニューを頼んだ。その店はサラダ、果物、デザート、ドリンクがバイキング形式になっており、好きなだけとっていいのだが、おじいちゃんは大量のパイナップルの上に大量のトマトをのせるいうありえないマリアージュを実現。その後、ココアを二杯汲んできては机の上におき、さらに紅茶を一杯ドリンクバーから持ってきたが、紅茶のティーパックをカップに入れて、お湯を注ぐ時、他のカップに触れたのか、ひとつの空のカップがカランコロンと床に落ちたのだが、それを拾おうともしなかった。店員がやれやれまたかといった感じで、だまってカップを拾っていた。きっとよく来るやばい客なのだろう。
自分のテーブルまで帰ったあとに、ポケットから何重にも重ねられたビニール袋を取り出し、そのビニール袋の中から内側のビニール袋を取り出し、そのまた内側のビニール袋を取り出しと、マトリョーシカ人形のように二、三回繰り返していて、一体何をするのだろうと思っていたら、最後に顆粒3袋・錠剤数個の薬を取り出した。きっと病気で、食前に飲むものだろうと納得したのも束の間で、顆粒の3袋をさっきのトマトとパイナップルにふりかけはじめたのだ。そして錠剤に関しては普通にそのまま口に入れたが、どうやら水など水分は使わず飲み込んだようである。次にテーブルに備え置きであった胡麻の蓋を全部取り、大量にトマトとパイナップルと薬の上にふりかけた。紅茶を汲みに行っている間にランチメニューのステーキとライスがテーブルの上に運ばれていたのだが、ステーキ・ライスにも大量の胡麻をふりかけた。ミルに入った岩塩に関しては素直にミルを使って多めにふりかけた。
私はちょうどこのあたりで食事を終えたため、そのあと、おじいちゃんがどうなったかは知らない。胡麻だらけのライスとステーキも薬をふりかけたトマトとパイナップルも残さず全部食べられたのだろうか。

もし既婚者ならば多分奥さんと来ていただろう。
死別したのかもしれない。

一方、私は40代になってなお、休みの日にひとりでステーキチェーン店にランチを食べに行っている、、、

この年にして、、、ひとりで、、、という価値観はもう古いんだっけ?
やばいおじいちゃんと、やばいおっさん、、、じゃなくて前衛的なおじいさんと、そこらへんおっさんと思うことにした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?