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戦争と進化

3月からロシアによるウクライナ侵攻が始まった。侵攻と言っても二国間での武力衝突があるため、戦争と言っても間違いではないらしい。

前のバイト先にロシア人の方がいた。日本には留学で来ていて、日本語も上手だった。日本文化にも人一倍興味がある彼は、私が青森県出身ということを知るなり、田んぼアートやら弘前城やらねぶたのことを目を輝かせて質問してきた。彼と日本について話をしている時間は本当に楽しかった。
しかし、彼はロシアがウクライナ侵攻を始めて間もなくバイトを辞めてしまった。彼曰く、「ロシア人がいると店に影響が出るかもしれないから」とのことだった。
私はそこまでしなくてもいいと思ったし、誰も彼をそんな目で見ることはしないだろうと思った。しかし、彼は大好きな日本を傷つけたくないからそうしたのかもしれない。彼に辞める本当の理由やこれからのことを聞きたかったが、彼は早々に店を出て行ってしまった。今はどこにいて何をしているか分からない。


小学校3年生の時、『ちいちゃんのかげおくり』という作品を授業で扱った。ある日、先生から「ちいちゃんは死んだことで家族と会えて幸せだったか否かを考えてきなさい。明日はそれを議題にディベートします。」という課題が出された。私は悩みに悩んで「ちいちゃんは幸せだと思う」という答えにした。

翌日の授業で幸せだった派と不幸せだった派はちょうど半々だった記憶がある。幸せだった派にはクラスで一番成績の良い子がいたし、自分自身あれほど悩んで出した答えなのだから間違っていないと思った。
議論は一通り終わり、先生が答えを発表するかと思った。先生は黒板に大きく「戦争」と書くと、「先生は、先生はな…」と声と肩を震わせた。みんな何が起こるのかと思ったその刹那に先生はチョークを黒板に殴りつけ、「先生は戦争なんか大っ嫌いだ!」と叫んだ。その光景を見て声にならない声を出して驚く私たちの前で先生は続ける。
「ちいちゃんが死んで家族と会えて幸せだったわけない!死んだら何も残らない!先生は人の命も、大事なものも、幸せも、何もかも奪う戦争が大っ嫌いだ!戦争は一番やってはいけないことなんだ!」
先生は泣いていた。

授業が終わったあと、恐怖なのか感動なのか悲しみなのか分からないが、多くの生徒が泣いていたと思う。
私はというと、自分の答えが違っていることにずっと疑問を抱いていた。あれだけ家族に会いたがっていたちいちゃんだ。あのまま死なずに生きていても、家族がいない寂しさや悲しさを抱えたまま生きていくのは幸せとは言えない。この考えは今でも変わらない気がする。

この一件以降、私は3年間くらい「戦争」という言葉をほぼ口にしなかった。なんとなく、戦争という言葉を発すること自体が悪い気がしたし、あの光景が頭にちらついたからだ。


かの天才理論物理学者、アルベルト・アインシュタインは
「第三次世界大戦がどのように行われるかは私にはわからない。だが、第四次世界大戦が起こるとすれば、その時に人類が用いる武器は石と棍棒だろう。」
という予言をした。
解釈としては「第三次世界大戦は核戦争となり、その後の文明が崩壊した世界にあるのは原始的な生活である」というものが一般的である。
この言葉の本質は「核戦争が現実的なものとなっている」こともそうだが、「文明が崩壊しても、時代が変わっても人類は争い続ける」ということだと私は思っている。

戦争は多くの人間の命、財産、人生を奪う悲惨なものであることはおそらくみんな知っているはずなのに、何故同じ過ちを繰り返すのだろうか。
金? 民族間の問題? 復讐?
私は当事者ではないから分からない。片方に正義があるなら、もう片方は悪ではなくて別の正義があるだけ。本当の悪者が誰なのかを決めるのは私にはできない。


あるアニメ作品の中に「人の争いが絶えないのは人類が進化の入り口で足踏みをしているからだ。」という台詞があった。
これまでの歴史でも戦争のおかげで進化した技術はたくさんあった。電子レンジやサランラップ、インターネットは戦争によって生まれたものや発展したものであることはご存知の方も多いのではないだろうか。

技術は進化した。では、人類が進化するのはいつ?

人類初の戦争は今から1万5000年前らしい。領土を巡る戦争、民族間の戦争、宗教間の戦争、国を統べる戦争、政治戦争、経済体制の戦争、冷たい戦争、国家とテロリストとの戦争。人類は1万年もの間、数え切れない程の争いを繰り返し、殺し合ってきた。
今回のウクライナ・ロシア間の争いの先には何があるのか。今ある全ての戦争が終わった先には何があって、人類はどう進化するのか。そもそも進化できるのか。

人類はいつまで足踏みをしているのだろうか。


少し長くなってしまいましたが、お読みいただきありがとうございます。
では、また。

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