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これからもありがとう

「今までお世話になりました」
「これからもお世話になります」

これは15年前、あるバスケスクールに関わり始めたときに関わっていた子からもらった、素敵な言葉です。
卒業する時に贈ってくれた手紙の中にありました。

2006年の9月、初めて訪れたバスケスクール。
代表がとても良くしてくれていたバスケ部の先輩で、当時カウンセリングを学んでいた僕に「一緒にやろう」と誘ってくれたことがきっかけでした。
はじめは「心のコーチ」として関わっていました。そこから運営やコーチ育成、バスケ指導とやることは増えていきました。その中で、一貫してやってきたことがあります。

それが「居場所づくり」です。

人の成長には、主体性は欠かせないと考えています。そのためにはどんな場があると良いかを考えたとき、行き着いたのはその子の『居場所』でした。

まずは子どもたちの居場所づくりのために、練習中にはアイスブレイク(緊張緩和のための阿遊び)を練習に取り入れました。また少し時間を取りつつ、コミュニケーションを取って一体感を出すような取り組みも行いました。保護者の方も興味が出て、舞台の上でも実施するようになりました。保護者の居場所もできてきました。
そうすると、その場の雰囲気が、≪ただバスケの練習する場≫から≪みんなでバスケを一生懸命取り組む『居場所』≫になっていきました。
自ずと時間と空間の一体感も増し、子どもたちはもちろん、保護者同士もどんどん仲良くなっていきました。
その変化がとても好きでした。

居場所づくりの大切さはスタッフにも浸透していきました。初期のメンバーにはかなり浸透していますので、「今でも大切にしています」と言ってくれますし、当時在籍していた子も今やスタッフとなり、今の子たちの『居場所』を作ってくれています。

また、このバスケスクールは圧倒的に口コミが多いのですが、同じ地域や学校から来ることが多く、代々その居場所も引き継がれていようでした。

まさに『居場所』の循環が生まれ、巡るようになっていました。

何があったか

それは「お世話になりました」と「ありがとう」があたりまえにあふれていたからだと思っています。

行為への感謝はもちろん、存在への感謝の「ありがとう」があたりまえに、子どもからも、保護者からも、スタッフからもあふれていました。
僕はそれが好きなんだなと、あらためて感じています。


「今までお世話になりました」
「これからもお世話になります」
この言葉を伝えてくれた子は、とても内向的で、そこまでバスケも好きな感じはではなくて、お世辞にも上手くはなかったです。

「どうして来ているのかな?」
そう思いながらも、奥手なこの子のそばで、コミュニケーションを取りながら、一緒にいてフォローしていました。
関わる中で、少しずつ変化が起こり、象徴的だったことが、前髪が一気に短くなったことです。

そこからその子の笑顔が増えました。
同時に「ありがとう」も増えたと思います。
その変化、とても嬉しかったな。

卒業時には、しっかりとしゃべれる子になっていました。
そこで僕は聴いてみました。

「どうしてこのバスケスクールに来たの?」

「友達が1人だと寂しいって言ったからです」

とても驚いた記憶があります。確かにバスケ好きの同じ学校の同級生がいて、その子は先輩が抜けたら1人になってしまう状況でした。
ただそれまで、バスケ大好きな子しかいなかったので、そういった理由で1年半頑張ってこれたというのは、にわかに信じられなかったです。

同時に確信しました。

「どんな理由でも、そこに『居場所』があって、バスケが頑張れるのであれば、それってとても素敵なことなのではないか」

僕の『居場所』づくりとしても大きな転換期でした。どんな場でも、どんな理由でも『居場所』があっていい、良い意味で吹っ切れました。
そこからはスタッフにも共有し、より『居場所』づくりを、そして卒業しても「おかえり」、「ただいま」と言える場所を作っていくことを大切にしていきました。バスケスクールなのに、バスケの話より、居場所づくりの話の方が多かったんじゃないかな。


もう一つ、その子から受けたインスピレーションがあります。
それは”未来”への感謝です。

「これからもお世話になります」って言葉、なんか素敵じゃないですか。

未来について委ねてくれるって、とても嬉しい感じがしました。
ちょっと気づきました。
これって「ありがとう」にも使えるなって。
それから未来への感謝もするようになりました。

あれから15年が経ちました。

今は、存在への感謝はもちろん、”願えること”への感謝も素敵だなって感じるようになりました。それは願い、祈りの大切さを実感したからとも言えます。


2023年3月31日をもって、これまでいたバスケスクールを離れることにしました。
それは自分への挑戦のためです。

最後の指導日、最後の教え子かつ最年少となる小学2年生の子から手紙をもらいました。
その手紙にはこう書かれていました。

「すこしの間だったけど、ありがとうございました。あべちゃんがおしえてくれたおかげでバスケがもっと楽しくすきになりました。」

素敵なメッセージで、とても嬉しい言葉でもありました。

バスケが好きになれる居場所、自分がみんなと楽しめる居場所を作ってきて良かったんだな。
本当にありがとう。

彼女が15年後、誰かの『居場所』を作ってくれているであろうことを願い、未来に感謝します。

これからもありがとう。

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