ドラゴンシェフで作った「薄切り牛肉を活かした料理」の話
今回は出番がありました!
いよいよです。
きっとアクセス数伸びるんだろうな。そして、賛否両論あるんだろうな。
そんな期待と不安が入り混じった放送日ですが、今回の薄切り牛肉を使った料理について、まとめてみたいと思います。
ちなみに、以下が今回のテーマと評価のポイントです。
テーマ:「薄切り牛肉の美味しさを引き出した料理を作れ」
評価のポイント:「薄切り牛肉の美味しさが伝わること」
生産者の紹介:なかお畜産
松坂牛の飼育数は、日本一を誇る。
松阪牛とは、黒毛和種という和牛の一種で、松阪市近郊で飼育された牛のことを指します。(三重県松阪市で生まれた牛ということではないというのがポイント)
松阪牛と名乗ることを許されるのは、生産者の登録・飼育地域・飼育期間など、ある一定のルールに基づいて管理された牛のみ。
そして、この中には「特産松阪牛」という松坂牛が6%程度存在している。「特産松阪牛」とは、兵庫県産の子牛を900日以上(月齢30〜32ヶ月)肥育された特別な牛だそうです。
長い時間をかけて肥育することにより牛が熟成し肉の旨味も増すのだけど、なかお畜産は、さらに上を行く。
ナカオ畜産で肥育される“特産松阪牛”は、通常より1年以上長い期間肥育する。
その期間は、なんと45ヶ月!この牛には〈なかお牛〉と社名を付けて出荷しているそうで、その肉質は折り紙付だ。
そんなこだわりの生産者の松坂牛を支える機会をいただき、本当にありがたい。
レシピ名は「冷やしすき焼き」
僕の原体験を元にしたレシピです。
我が家では、すき焼きは九州らしく甘口。でも、時折トマトを入れることがあった。それが美味しくて、すごく記憶に残っている。
今思えば、あれは旨味と酸味を加える手法で、知ってか知らずかかなり合理的なペアリングだったと思う。遊び心も効いていて、素敵な料理だったように思う。
そこで、この思い出の料理に、僕らしさを加えて分解と再構築で深化させてみたいと思う。
薄切り肉の特性は、火入れの速さにあると思う。
そこで、制限時間ないでの、短時間での低温調理に挑戦しようと思う。
僕の主戦場は、食の商品開発なわけですが、「牛肉」というテーマでいえば、ちょうど良いものがあったので、それもレシピに組み込むことにした。
その名も「NIKU Devise」
熟成肉を作る過程で発生する端材でつくった、ビーフガルム(醤油のようなもの)だ。まさしく、井上豪希ならではの料理になっていると思う。
現在は、好評につき売り切れ中です。。。。
以下に、具体的な作り方をまとめます。
【材料】
薄切り肉 適量 当日の状態で判断
<醤油タレ>
ビーフガルム 少々
<激薄の飴>
パウダーキャンディー 小さじ6
オブラート 6枚
<トマト出汁のジュレ>
トマトと台湾茶の出汁 400cc(トマト400g、水400g出汁を持ち込みます)
ゼラチン 4枚
セミドライミニトマト 5個分
<イチジクの香味油>
いちじくの葉っぱ
サラダ油
【作り方】
牛肉の薄切りを油でマッサージして、真空パックして、57℃の低温調理器で20分放置。
シルパンの上にオブラートを広げて、粉末状の飴をふりかけ、150℃のオーブンでパリパリになるまで焼きます。
番組中では、バーナーで作りましたが、あれはイレギュラーです。
スタジオのキッチンにあるオーブンが、どの設定でもファンが回る仕様で、オブラードが吹き飛んでしまったため、バーナーを遠火で当てて、キャラメリゼしてます。
ちなみに、この激薄の飴の原案は、オパリーヌという薄い飴を作る技を、昇華させた極薄のオパリーヌというもので(考案者はエルブジのオリオール・カストロ)、このレシピを元に透明度を上げて作ったのが今回のレシピだ。
詳しいレシピは、料理人仲間で、先輩でもある樋口さんのレシピが参考になると思う。
次にトマト出汁を少量だけ温めてゼラチンを溶かし、残りのよく冷えた出汁を合わせて、氷を当てながら冷蔵庫で固める。
時折、混ぜながら空気を含ませ、完璧なジュレになる様にコントロールする。
ちなみに、出汁のみ「持ち込み可能」となっていたので、前日にトマトと台湾茶を使って、渋酸っぱい出汁を取っておいた。
台湾茶は香りの奥行きと、渋みを出すために加えた。
強すぎる旨みと、油脂分を口中で〆る役割を狙ったのと、五味全てをぶち込んだ料理にしたかったからだ。
出汁の取り方だけど、まずは圧力鍋で、黄色トマトを煮る。
加圧開始から、8分くらいが目安。
圧力鍋を使うことで、香りを逃さず、旨味を抽出できるので、植物性の出汁を引く時によく使う。
これをコーヒーフィルターなどで、濾す。
濾したものを冷ましてから、昆布を入れて、1時間ほど旨味を抽出する。
白髪ネギをつくって、少量の油で炒めて、みりんで味を整える。
イチジクの葉っぱとオイルを合わせて、ハンドブレンダーで砕いて弱火で香りを油に移す。
盛り付ける直前に、肉はガルムで揉んでおく。
ジュレ、肉、白髪ネギ、ドライトマトの順に盛り付けて、イチヂクオイルを数的落とし、 提供直前に激薄飴を載せる。
一緒に食べると、すき焼きになるという仕掛け。
一旦、危なげに予選突破したけど、なんか須賀さんと僕の料理の相性は良くなさそう。
次回からは「お客様の好みに寄せつつ、自分を出す」ということを意識しながら、レシピを構築しようと思った回だった。
引き続き、応援よろしくお願いいたします。
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