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ドラゴンシェフで作った「スガラボ米を主役にした料理」の話

今回のテーマは、米。

ちなみに、大前提として、僕はこの放送回で脱落する。
なので後半は、須賀さんから頂戴したフィードバックを自己解釈して、放送回の時点より美味しい一皿に仕上げるレシピになっているので悪しからず。

僕たち日本人の主食で、アイデンティティーでもある、最も馴染み深い食材だと思う。

それだけに、奥が深いし、幅も広い。
如何様にも作れるだけに、自分を表現することが、非常に難しいテーマのように感じる。

テーマと評価の課題は以下のとおりだ。

テーマ:スガラボ米を主役にした料理を作れ。
評価のポイント:スガラボ米の美味しさを引き出せているか?

テーマ食材が、スガラボ米って言うところが、今回のキモだと思う。

生産者の話:「スガラボ米」

今回も例によって例の如くディグっていくけど、生産者さんの情報を探してみたけど、出てこない。。

収集できた情報は少ないけど、実物を手配できたので触ってみて、把握できたことを以下にまとめてみた。

【ネット上の情報】
・米作り50年 熟練の米職人「岡本禎之」による徹底管理
・特別栽培米のヒノヒカリ
・注文を受けてから出荷の都度行う精米作業
・熱を加えず50分かけてゆっくりと精米
・完全招待制レストラン「SUGALABO」で使用

【触ってみた所感】
・ヒノヒカリの中でも比較的小粒で、厚みがある
・炊いている最中の遊離澱粉が少ない
・粘りが少なく、弾力があって、歯切れが良い
・風味は、甘さより米の風味を感じるが、穏やかで丸い印象

特別栽培米ってことは、減農薬減肥料で作られているってことで、つまり、タンパク質の量が少なく、雑味が少ないと言うことなる。

米のテイスティングって、かなり繊細なので、雑味が多い少ないの判別は難しい。。。(審査員も同じだと思う)

実際に食べてみたけど、食感はコシヒカリなどのモチモチ系ではなく、ササニシキなどのさっぱりした米に近い印象だった。

一合程度を炊くのであれば、問題ないけど、2〜3合炊くと小粒が災いして、対流が起きないのか、下面がベタっとした食感になるので、炊くのであれば土鍋や直火など火加減をコントロールする必要がありそうだ。

なので、今回は米は炊飯しないのが正解な気がしている。今回のレシピは普通に炊飯はしない。

料理名は「発酵麻婆豆腐丼」

米を活かし、米に合う食材と考えた気に浮かんだのは「発酵」の一文字でした。

昔からお米の共といえば、味噌や醤油などの発酵食品がポピュラーで、日本人なら、みんな大好きな組み合わせです。

ちなみに、米や味噌の発祥地をご存知か?

実は、お米も味噌や醤油などの発酵食品も、源流は中国にあります。

そう考えて、「発酵食を使った中華料理を源流にした米に合う料理をアレンジして、米を主役できる料理にしてみよう。」という発想が湧いてきました。

今回使う米は繊細なスガラボ米。
そんな繊細なお米だからこそ、中国の強烈な発酵調味料を使うのではなく、日本の穏やかな発酵調味料のみで再構築しようと考えました。

甜麺醤のコクと旨味は、味噌の中でも割と古い製法「味噌玉製法」で作られた味噌で代用し、
豆板醤の辛味と甜麺醤の甘味は、「唐三」という唐辛子と米麹で作られた発酵調味料と、かんずりを使うことで代用しました。

ラム肉を使ったのは、もともと麻婆豆腐に使われているのはラムだと言うことと、この発酵食という日本文化を表現した一皿を、世界中の人でも食べられえるようにしたくて使いました。 
(*ラムは、宗教に関わらず食べることができる)

【材料】
米 2合(20分浸水)
おこげしスープ 240cc

<おこげのスープ>
ガラ出汁 500cc
煎った米 大さじ5

<豆腐ピュレ>
豆腐(絹) 1丁
塩麹 小さじ1

<肉味噌>
ラム肉 200g
白ネギ 1本分
玉味噌 50g
唐三 30g
一休時納豆 10粒程度
みりん 大さじ1

<あしらい>
和山椒 適量
煎り米のおこげ 6粒程度

【作り方】
1. 米を洗って、よく水をきっておく。

2. 生米(大さじ1程度)をフライパンに取って、小麦色になるまで煎る。

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煎った米を、ガラ出汁に入れて煮込むことで、おこげの香ばしい香りをスープに移します。

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茶漉しなどで濾してスープと、煎り米に分けておく。

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煮込んだ煎り米には、ガラ出汁の旨味が乗って少しふやけた状態になります。
これをフライパンに少量のゴマ油をひいて、弱火で揚げ焼きにして、香ばしい煎り米のおこげをつくる。

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3.  ❷のおこげスープ(240cc)を鍋に移し、❶の米(2合)を合わせて、中火で煮含ませる。焦がさないように鍋底から返しながら煮立てて、水分がなくなったら、蒸籠に移す。

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米をあえて浸漬せずにおいた。(べちゃっとするのを避けるため)この米は小粒で、敷き並べる詰まってしまうので、菜箸の持ち手の部分を使って、通気孔を開けておいた。こうすると蒸気が満遍なく回る。

【本番ではココで雑炊を作る】
収録で動物系の出汁を無くして、「精進料理のようにシンプルにした方が米の良さが際立つのでは?」と須賀さんに言われたが、それでは最初に定めたコンセプトと離れてしまうので、その提言は許容できない。
でも、スガラボ米らしさを全面に引き上げる方法は、確かにある気がして、前段のように「蒸米を作る」という工程に昇華した。
これにより、小粒を活かし、且つ繊細な香りと、食感を押し出すことができる。
ちなみに、もとのレシピは以下のとおり。

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おこげスープに炊いたご飯を合わせて、弱火で煮る。
遊離澱粉が十分に溶け出し、とろりとしてきた頃合いを見計らって、火を止め器に盛り付ける。

4. 豆腐(絹ごしの充填式でないもの)と塩麹を合わせて、ハンドミキサーでピュレにする。密封容器に入れて、60度で保温する。
(*この温度帯で保温することによって、豆腐ピュレの糖化を進め、甘味を少しでも引き出すという狙いがある。)

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4. ラム肉とネギ 、一休寺納豆はあらみじん切りにする。
玉味噌、唐三、かんずりは合わせておく。

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フライパンに油をひかずにラム肉を炒めて、脂が透明になってきたら、一休寺納豆味噌、玉味噌、かんずり、唐三を加えて馴染ませ、ネギを加える。

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5. 提供直前に、器に蒸米を盛り付け、豆腐ピュレを流し入れて、肉味噌を中央に高さを出して盛り付け、煎り米おこげ、和山椒を散らす。

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今回、ベスト5という不甲斐ない結果に終わってしまって、応援してくれたみんなを残念な気持ちにさせてしまったことが、何よりも悔やまれます。

加えて、同じような職域で活躍しているフードコーディネーターさんや、料理研究家、お店を持たないけど (シェフではない)、料理に携わる多くの方々の期待を裏切るような結果になってしまって、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです。。。

でも、僕のような料理人がいてもいいと思うし、お店を持つことが唯一の正解じゃないって示ただけでも、このドラゴンシェフという企画に参加できた意味があるって思っています。

この企画を通じて、料理人として承認欲求や自己肯定感、第一線で戦う料理人仲間、企画してくださった制作チームの皆さん、スポンサーのサントリーのプレモルの皆々様に大感謝です。

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僕は最高に楽しかったです。

ここまで応援ありがとうございました。
引き続き、ドラゴンシェフの応援よろしくお願いします。

この回を最後に、僕は出演しないと思いますが、ドラゴンシェフのテーマだけは漏れ聞こえてくるので、これまでと同じように、頼まれてもいないレシピを書き連ねようと思いまます。w



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