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【新聞社の仕事】気をつけましょう「絶品」「極上」

私が小さいころ、お店でもテレビでも新聞でも、絶品とか、極上とかいう言葉を気やすく使うことはなかったと思う。

それこそ、テレビ番組で言えば1990年代に流行ったテレビ番組「どっちの料理ショー」「料理の鉄人」くらい。あれは絶品であり極上だろう。食べた事ないけど。

ロッテリアの「絶品」特別感はあったような

ロッテリアで「絶品チーズバーガー」を売り始めたのが2007年。そのときには、まだ絶品という言葉の価値がわずかでも残っていたような。

普通のチーズバーガーの2倍くらいの値段がしたのは驚いた。トロトロとしたナチュラルチーズとジューシーなハンバーグに、特別なものを食べている感覚を当時、抱いたことを覚えている。ちゃんと扱わないとベタベタの塊になるけど。

今では、歯の浮くような…

それから約15年。絶品や極上は、歯の浮くようなただの修飾語になってしまった。言われても、ありがたみがない感じ。今や、お昼や夕方のワイド番組を見ていれば登場する定番のアゲ言葉になっている。

ファミレスでもお惣菜屋さんでも「絶品みそだれ」「極み塩」のような謎の味付けに「極味から揚げ」など、もはや読めない熟語。極味って付けなくていいから、塩味か醤油味か教えてほしい。あっ、両方あるんですか、そうですか…

別に使っても悪くないと思う。おいしさをアピールするのはいいことかもしれない。ありがたく利用させてもらっている、身近でおいしいものはたくさんある。

でも、「極上」「絶品」とつけると、逆に嘘っぽく安っぽく響かないだろうか。絶品や極上のような言葉は、そこに事実や理由が伴わないと説得力がない。

嘘っぽく聞こえない見出しを

新聞でも飲食店を紹介することがあるが、見出しをつけるときには、原稿に書いてあったとしても、そういう言葉は使わないようにしている。それは、客観的な見方ができないからだけではなく、結局、空虚な物言いになり、お店を応援することにならないからだ。

例えば美味しい卵料理のお店なら「至高の卵で絶品オムレツ」と言うよりも「朝採れ卵のふわふわオムレツ」とアピールしたほうが説得力がある。そういう売りがないお店はそもそも紹介するほどなのか、ということにもなるし。

ありふれた料理が、確かに極上になる瞬間もあると思う。三日三晩働いて、やっと休みだという夜に飲むビールは極上だろうし、空腹の体に染み渡る焼き肉は絶品に違いない。でも、それも場面あってのこと。

アゲ言葉、ちょっと立ち止まって

とにかく、グルメを楽しむときに、こうした「安っぽいアゲ言葉」がついているときは、ちょっと立ち止まるようにしたい。

ただ、書いてなさすぎるのも困りもの。たとえば漁師町の食堂で何のアピールポイントもなく「刺身定食」とだけ書いてあったら…。実は全部よそのものだったり、輸入や冷凍ものだったりすることもあるかも。そこはやっぱり、事実でアピールしてほしいなあ。



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