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【新聞社の仕事】訂正は出したくないが、出てしまう

私が今まで新聞レイアウトの仕事をする中で出合った訂正のパターンを、いくつか紹介したいと思います。内容はすべて架空のものです。私も今後間違える可能性があることを、肝に銘じたいと思います。

①人名が違う

●日付●面の「世田谷の久留湖さん一日署長」の記事と写真説明で「久留湖左民さん」とあるのは「久留湖佐民さん」の誤りでした。おわびします。

人名やものの名前の間違いは、当事者だけでなく、家族や友人、親戚に至るまで大きな影響を与えます。取材をするときには「にんべんに左の佐に、たみの民でサミンさんですね」などと、字解きをして確認するか、地元の名士のような方なら名刺をもらっておけばよいのですが、それらができなかったり、変換ミスに気づかなかったり、さらには思い込みをしてしまって紙面化されることがあります。紙面に登場したことがある人なら、校閲さんがデータベース検索で気づいてくれることもありますが、固有名詞は基本的に記者で気付くしかありません。

有名人や会社名はその分、誤りに気づく可能性は高いのですが、野球のトンネルの如くスルーされてしまうことも、残念ながらあります。社名が変わっていたり、芸名が変わっていることもあるので注意が必要です。

②写真の取り違え

△日付△面の「新体操ヨシノヤ2連覇」の写真説明で「ヨシノヤ・ギウ・ドン選手」とあるのは「マツヤ・カレ・ギウ選手」の誤りでした。配信元の誤りによるもので、おわびします。

記事のように、配信元が間違うこともありますが、社内でのデータベース管理が間違っていたり、写真説明のみ別の場所から引っ張ってきてしまうケースがあります。また、2人以上いる場合には(左)(右)をつけますが、これを逆にしてしまうこともあります。わたしは昔、これでミスをした経験があり、多方面に迷惑をかけました。

③電話番号が違う

×日付×面の「ゆで卵のような肌」の記事で、電話番号が「0120-12-34567」とあるのは「0120-12-34568」の誤りでした。

電話番号の間違いは、間違い先が存在する場合、大変なことになります。「うちは出前やってねーよ!」みたいな笑い話がありますが、笑い話では済みません。取材先だけでなく、間違い先にもおわびをしなければなりません。

④単位がおかしい

◯日付◯面の「簡単牛丼」のレシピで、しょうゆの量が「500cc」とあるのは「50cc」の誤りでした。

料理をしたことのある人なら絶対に気づくはずなのですが、単位や位取りのミスに気づかれずに紙面になってしまうことがあります。トンとキロ、グラムの取り違えもあり、えーまさかと思うのですが、あります。どれくらいなのかを実際に想像してみることが大事だと思います。

あとは、予算の原稿で「単位は千円」というのを見逃して、その分、額を小さく書いたり、万単位で勘違いして書いてしまったりしたのも見たことがあります。これは校閲に資料を送ることで間違いを防げるかもしれません。

⑤見出しが違う

◎日付◎面のサッカーの記事の見出しで「青森アッペルズ」とあるのは「青森アップルズ」の誤りでした。おわびします。

記事本文は間違っていないのに、見出しだけ間違えてしまった例です。パソコンで打ち間違えたものと思われます。このケースは当事者だけでなく、記事に落ち度がない現地の記者に対して大きな迷惑をかけることになります。謝り倒すしかありません。これを防ぐには、記事本文から直接コピーをして見出しをはりつけることに尽きます。

⑥主語と対象が逆

■日付■面の「追突し逃走の容疑者逮捕」の記事で、「▲容疑者の乗用車に男性の軽乗用車が追突」とあるのは「▲容疑者の乗用車が男性の軽乗用車に追突」の誤りでした。

てにをはの使い方で、意味が逆になることがあるので注意しなければなりません。追突した方が逮捕されているのだから、読めばわかるのですが、すべてがスルーされ、紙面になってしまうことがあります。


レイアウト側で気づけるミスもある

これらはまだまだ例の一部です。これらの誤りの中には、レイアウト側で気付けるものもいくつかあります。もちろん、校閲さんはしっかり見てくれますし、本文の間違いの責任の所在は、組織としては原稿を出した側にありますが、新聞という形で世に出る以上は、やはり新聞社全体のミスということになると思います。

見出しやレイアウトについて責任を持つのは当然として、時間の許す限りは、本文の中身もよく読むのが大切だと日々、感じています。

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