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ダニング=クルーガー効果は再現されるか

「ダニング=クルーガー効果」という言葉も,結構よく知られている心理学の用語です。「ダニング」と「クルーガー」というのは心理学者の名前なのですが,何らかの能力とその能力を正しく推定する能力との間には,逆の相関関係が見られるという現象のことを指しています。

言い換えると,一般的に人々は,自分の能力を推定するときにプラス方向のバイアスをかける(良い方向にゆがめて解釈する)のですが,実際の能力が低い人ほどこのバイアスが強くなる,という不正確な自己認識が生じるというものです。

この自己認識の失敗は,自分が何を知っていて何を知らないかを十分に把握することができていないことから生じるとも言われています。「能力がない人は自分が能力がないかどうかと言う材料を持ち合わせていないので,まあまあうまくやっているだろうと認識しやすい」ということでしょうか。


ダニング=クルーガー効果の問題

もともとのダニング=クルーガー効果を検討した研究は,アメリカのアイビーリーグと呼ばれる名門大学に在籍する学生たちを対象として行われました。サンプルの偏りは,結果の解釈を慎重にさせるかもしれません。しかし,ダニング=クルーガー効果はもっと広いサンプルでも確認されているようです。

また,「よい」「わるい」の範囲も問題になります。どれくらい「優れている」ことと,どれくらい「劣っていること」が,このような効果をもたらすのでしょうか。

知能を用いる

ダニング=クルーガー効果について,実際に知能検査で測定した知能指数と,自己評価をした知能指数との対応から検討しようとする研究があります。知能検査から,対象者を高IQ,中IQ,中低IQ,低IQの4群に分類します。そしてそれぞれの群で,自己評価をした知能と比較するというわけです。

こういった検討はすでに行われているのですが,さらにくわしく検討した研究が最近報告されています。こちらの論文を見てみましょう(Reevaluating the Dunning-Kruger effect: A response to and replication of Gignac and Zajenkowski (2020))。

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