マガジンのカバー画像

日々是好日・心理学ノート

【最初の月は無料です】毎日更新予定の有料記事を全て読むことができます。このマガジン購入者を対象に順次,過去の有料記事を読むことができるようにしていく予定ですのでさらにお得です。心…
【最初の月は無料です】心理学を中心とする有料noteを全て読むことができます。過去の有料記事も順次…
¥450 / 月 初月無料
運営しているクリエイター

2021年3月の記事一覧

マインドフルネスと性格・感情の関連

マインドフルネスは,目的や判断をもたずに「いまこの瞬間」に注意を向けることを指す言葉です。簡単な方法としては,目をつぶり,自分の呼吸だけに意識を集中して,他のことを何も考えないようにするというものです。 そして,本当にマインドフルネスは多くのメリットをもたらしてくれることが,これまでの研究で明らかにされています。ですので,しっかりとやりかたを学んで実践するのが良いでしょうね。 マインドフルネスと性格以前も,マインドフルネスに関連するパーソナリティ特性についての記事を書いた

2021年3月のまとめ

2021年3月31日です。2020年度の最後の日となりました。 この1年間は,コロナウィルスの年でしたね。こんな人類の歴史に残るような出来事を目の当たりにするとは,それ以前では想像もしていませんでした。 またこの1年間を思い浮かべると,心理学のしたたかさと言いますか,ただでは起きない感じも実感されました。いったい何本のCOVID-19 関連の論文が出版されたのでしょうか......まったく想像もできないほどの本数です。 よく読まれた記事今月に投稿してよく読まれた記事をふ

自己効力感はどんな目標の持ち方に関連するか

自分が価値があると感じるものごとを,やり遂げたいと思う傾向のことを,達成動機といいます。人間は誰もが,目標を達成したいという動機(目標達成動機)と,失敗をしたくないという動機(失敗回避動機)をもっているものだ,というのが達成動機です。 一口に「やる気」と表現される達成動機ですが,その中身はそれほど単純でもなさそうです。 たとえばこの論文(『達成動機の構成因子の分析』)では,社会・文化的に価値のあるものを達成しようとする社会的達成欲求と,個人の価値に基づく個人的達成欲求の枠

ひとつの性格を考えることの意義はどこにあるのか

「性格は1因子」というと,「え?」と驚く人がいるかもしれません。知能については,「一般知能(g)」という考え方が昔からあって,さまざまな認知能力を測定するテストを多くの人に実施して統計的に分析すると,1つの統合的な因子にまとまることが知られています。 学力も,1つの因子になるというイメージがあるのではないでしょうか。国語,数学,英語,理科,社会の各教科のテストを多くの人に実施してデータを分析すると,全体としては「学力」という1つのまとまりになる傾向があります。そうじゃないと

インポスター現象と性格の関連

人生がうまくいっていると,「これは本当の自分の成果ではない」「自分が詐欺師になったのではないか」「みんなを騙してしまっているのではないか」「そのうち化けの皮がはがれて,能力のなさが露呈してしまうのではないか」と感じてしまうことがあるようです。このような現象を,インポスター現象(imposter phenomenon)といいます。 インポスター現象をもつ人は,完全主義のように自分に高い目標を課してしまうこともあるようです。そして,その目標が多声できないのではないかと不安を抱く

人類の歴史は酔っぱらいばかり

皆さんはお酒を飲むのが好きですか? 近年,お酒に関する地理学や歴史学の本が何冊か出版されている印象があります。お酒を全く飲まない,という人もいますが,私たちには大きな影響を与えている飲み物でもあります。そしてそれは,歴史的に考えても,とても重要な飲み物です。 酔っぱらいの歴史 今回紹介するのはこの本です。タイトルもそのまま,『酔っぱらいの歴史』です。 石器時代から人は酒を飲んできた。シュメール人や古代エジプト人は何を飲んでいたのか。ギリシア人とローマ人とヴァイキングたち

災害を経験することはよい心理的状態につながることもある?

多少苦痛を伴うような経験をしたり,ストレスフルな経験をすることは,そこから学ぶこともあってそれ以降の経験につながっていく……そのような考え方をすることがあります。 多少ストレスフルな出来事を経験すれば,自分が「強くなる」という考え方ですね。鍛えれば鍛えるほど,ストレスに強くなるといいますか。心理的な免疫システムのような考え方です。 他者の要因とはいえ,大きな出来事を経験するときは,自分だけでそれを克服するわけではありません。災害や事故などの大きな出来事が起きれば,周囲から

人格の強みについての年齢差

人格的な強み(character strength)は,私たちがよく機能することを可能にするような心理特性だとされます。「性格特性的強み」とか,単に「強み]と表現されることもあります。もとの単語が「strength」ですので,精神的な強さという意味もありますし,人物の強みや長所というニュアンスもあるのでしょうか。 強みの中身強みを測定する尺度は複数あるようですが,VIA-IS(Values in Action Inventory of Character Strengths

社会的地位の低さは次の世代に影響する

私立大学に勤めていると,つい家庭の経済力に目を向けてしまいます。「昔はアルバイトをして学費と生活費を稼いだものだ」と,年長者は言うかもしれませんが,現在の学費の高さを考えると,とてもそんなことを言うことはできません。 特定扶養控除私が教えている学部の初年度納付金は,2021年度入学生で1,213,000円,2年次以降は1,253,500円です。大学生が親元にいて,年間103万円以上をアルバイトで稼ぐと親は特定扶養控除を使うことができなくなりますので,自分だけで学費を稼ぐとい

性格は本当に認知症に関連するのか

日本も高齢者が多い社会です。その中で,認知症は大きな社会問題になってきています。認知症は脳の神経細胞が何らかの理由で失われ,理解や判断,記憶の能力が失われていくことを指します。 また,さまざまな研究が行われていて,認知症のリスク要因が明らかにされてきています。たとえば,睡眠です。高齢になると睡眠時間が減少していきますが,そうはいってもやはり睡眠は大切で,睡眠不足は認知症のリスクを大きく上昇させるようです。 次々と他のことについてもそうだとは思うのですが,認知症についてもど

純粋な善と悪を信じる傾向に関連する性格

物語の中に出てくる「悪」は,どうして「悪」なのでしょうか。 現実の社会の中では,誰かにとって「悪」でも,別の誰かにとっては「善」であることが多々あります。たとえテロリストであっても,誰かを何かから守るためにその行為を行っているのかもしれません。 純粋な悪とはいえ,世の中には純粋な「悪」が存在するものだという考えを抱く人もいそうです。そこには,いくつかの「悪」の見方が関与しています。 たとえば純粋な悪というものは……意図的に危害を加える存在であり,個人的な喜びのために危害

微妙な言葉の使い分け

私が大学生から大学院生の頃は,まだ国立大学で私を指導してくれた先生は「指導教官」と呼ばれていました。 パソコンの辞書を調べてみると,次のように書かれています。 (1)特定の技能などを教える人。指導員。 (2)教育に従事する国家公務員。国立学校の教員など。 (3)旧陸海軍の学校の教職者。また,一般の学校で軍事教練を指導していた軍人。 この(2)の意味で,国立大学では「指導教官」という表現が用いられていたということです。 国立大学法人化国立大学は,2004年に法人化されま

日本では戦前と戦後で若者たちの価値観や態度はどう変わったのか

今回も,昔の論文を読んでみるシリーズです。タイトルのように,日本の戦前と戦後で若者たちの態度がどう変わったのかを検討した研究です。なかなか面白そうですよね。 というわけで今回は,教育・社会心理学研究という雑誌の第2巻に掲載されている,『時代による青年の態度形成の変化』という論文を見てみたいと思います。 ちなみにこの雑誌は,日本グループ・ダイナミクス学会が1960年から1971年まで発行していた雑誌です。今ではこの学会の雑誌といえば実験社会心理学研究とう名前なのですが,教育

指の長さが関連するとすれば神経症傾向?

以前にも記事を書いたことがあるのですが,手のひらを小指を下にして自分のほうに向けてみてください。そして,自分の指の人差し指(2D)と薬指(4D)の長さを比べてみます。どちらのほうが長いでしょうか? この2Dの長さを4Dの長さで割った値が,2D/4Dと呼ばれる比率になります。多くの人は,薬指よりも人差し指の方が少し短いのではないかと思いますが,なかには人差し指の方が長い人もいるはずです。ただし,人差し指と薬指は,根元の位置が違いますので,比べるときにはご注意を。 そして,薬