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日々是好日・心理学ノート

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2020年12月の記事一覧

2020年の大晦日:今年もありがとうございました

2020年も大晦日を迎えることになりました。今年も1年間,noteの記事を読んでいただきありがとうございました。 2020年はなんといっても,コロナウィルス感染症(COVID-19)の拡大がいちばん大きな出来事でした。それ以前の世界とそれ以後の世界が完全に分断されてしまって,普通にできていたことができなくなってしまうという経験は,人生の中でもそうそう起きることではありません。 貴重な体験でしたが,そんな中でも私たちはそこに意味や意義を見出して生活を続けるものだということも

形容詞からビッグ・ファイブ・パーソナリティ in アルゼンチン

ビッグ・ファイブ・パーソナリティを測定する尺度の中には,項目が形容詞でできているものと,文章でできているものがあります。 辞書から性格を表す単語を抜き出して,その単語を整理していくという研究の背景もビッグ・ファイブ・パーソナリティにはありますので,形容詞で測定を行うというのも一理あります。その一方で,形容詞で測定するというのは時に抽象的で,回答しづらい場合もあります。 形容詞と文章たとえば形容詞の場合には, ◎明るい …… 1  2  3  4  5 (1=まったく当て

「社会の役に立たない研究はいらない」のか

自分の研究が社会の役に立つのか?と尋ねられたときに,どう答えるのがいいのでしょうね。おそらくどんな答えを返しても,気に入らない人にとっては気に入らない答えになってしまいそうな予感もします。 社会経験「社会の役に立つ」という表現はとても曖昧です。この表現は,使う人によって好きなように使えてしまうという側面があります。 「社会人」とか「社会経験」といった言葉も,「社会の役に立つ」という表現に似ています。「学校教員は社会経験がない」「大学教員は社会経験がないからダメなんだ」とい

アイゼンク先生はBig Fiveが気に入らない

今回も,パーソナリティ全体を5つの次元で把握しようとするビッグ・ファイブや5因子モデルについて取り上げてみましょう。 以前にも,ビッグ・ファイブ・パーソナリティの批判ポイントについては取り上げたことがあります。そこでは,5因子の安定性や再現性,現実社会を予測するときの問題点などが指摘されていました。 今回は,それよりもっと以前の1990年代前半に刊行された論文を取り上げてみたいと思います。誌上討論のような形で,5因子モデルの擁護派と批判派がそれぞれ書いている論文です。

自尊感情とSNS利用の関連はあるのか

皆さんは,どのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)をいちばんよく使用しているでしょうか。Twitter?Facebook?Instagram?それともLINEでしょうか。 2020年8月の記事ですが,日本でどのSNSが使われているかをまとめた記事を見つけました。それによると,1位はLINE,2位がTwitter,3位がInstagramでどんどん伸びていて,4位がFacebookという順位となっているようです。これは,周囲を見ていても納得できる順位ではないでしょ

収束的妥当性と弁別的妥当性

心理学で性格や態度や価値観を測定する時には,質問紙形式のアンケートがよく用いられます。そこでは,質問文(疑問文になっていることもそうではないこともあります)と,いくつかの段階からなる選択肢(あてはまらないを0点,そこからいくつかの段階を経てあてはまるを5点とか)を複数用意して回答を求めます。 あくまでも質問は質問であって現実ではない,というのが基本的なスタンスです。文章で尋ねても正直に答えてもらえるとは限りませんし,ちょっとした言い回しで回答が変わってしまうということも,実

敏感な性格はどれくらい遺伝するのか

HSP(Highly Sensitive Person)について書かれたネット記事は,どんどん増えています(この記事もそれに便乗……?)。 以前にも,HSPがどのようなパーソナリティ特性に関連するのかについて記事を書いたことがあります。一応,私もHSPに関連する研究業績に名前を連ねているひとりですので……。 よく書かれているフレーズHSPの記事の冒頭に,よく書かれているフレーズがあります。それは...... ◎非常に感受性が強く敏感さ・繊細さをもっていること ◎その敏感

宗教はネガティブさを緩和する

宗教を信じる心は,何をもたらすのでしょうか。 世界中の多くの宗教はおおよそ,自分勝手にふるまうことや強欲になることを戒めて,宗教によって定められた義務を遂行して,美徳を守るといった行動を求められます。宗教を信じて教義に従うというのは,ライフスタイル全般に何らかの影響を与えるだろうと予想されるというわけです。 宗教的な信仰が世の中に広まる時期と,薄まる時期で,人々の心理的な要因に何が生じるのでしょうか。 たとえば,何が幸福につながるのかという要因が,宗教的な影響の下に人々

性的な経験が早い若者の性格タイプは何か

中学生のとき,クラスメイトが自慢げに自分自身の性的な体験を語ってきたのを,ふと思い出してしまいました。それは今回紹介する論文を目にしたからなのですが……。 自分の中学時代というのは,1980年代の荒れた中学の時代が収まった頃です。 荒れた中学というのは,尾崎豊の歌詞にある「夜の校舎 窓ガラス 壊して回った」みたいなことがリアルに頻繁に起きていた時代です。自分が通った公立中学校でも,廊下をバイクが走っていたとか,ガラスがどれだけ割られたとか,教わった体育の先生が(荒れた状態

心理尺度の使用に関する問い合わせについて

一年を通じて,自分が作成した,あるいは作成にかかわった心理尺度を使いたいのですが,という問い合わせがあります。そのたびに返答をお送りしてはいるのですが,頻繁に問い合わせがあることもあり,また回答に共通する部分もあります。 そこで今回は自分が関与した心理尺度を使っていただくことついて,考えていることをまとめてみたいと思います。 作成した尺度私が作成に関与している心理尺度は,研究室のwebサイトに一覧があります。 ◎二分法的思考尺度 (DTI):白か黒か,全か無か,など物事

不況は人々をナルシスティックにさせない?

私たちはただ一度の人生を歩んでいく存在です。それぞれの人はそれぞれの場所と時間軸を進んでいき,その時々に置かれた状況から影響を受けます。 今年になって突然発生した,新型コロナウイルス感染症の広がりもそのひとつです。みな「同じ状況に身を置いている」と思ってしまいがちですが,そうとも限りません。いま何歳なのか,どこに住んでいるのか,誰と一緒に暮らしているのかなど,周辺の状況は個人によって実に多様です。 それでも,こんな話があったらどう思いますか? ◎大人になる時期に不況を経

メンヘラの変遷について学ぶ

心理学の授業をしていて学生たちの感想を読んでいると,学生たちの言葉の使い方で気になる部分を見つけたりします。 今回もそんなことばのひとつ「メンヘラ」について。自分自身もかつて2ちゃんねるなどで目にしていたものの,学生たちが使う「メンヘラ」の意味に違和感を抱いたりしたことがありますので,勉強を兼ねて調べてみたいと思います。 (それにしても加藤諦三先生……しっかりとこういうところはカバーしてきますね……。) メンヘラの使い方どうしてメンヘラということばが気になったかというと

過去100年間で報告された相関係数の大きさは?

「パーソナリティ係数」という言葉を聞いたことがありますか?パーソナリティの研究を報告する論文の中では,質問紙によるパーソナリティの得点と,質問紙以外の方法(行動の評定とか観察とか)で得られた得点との相関係数が,せいぜい0.20から0.30程度だということを揶揄して,心理学者ウォルター・ミシェルが本の中に書いている言葉です。 実際のところ,質問紙から推測されるほとんどすべてのパーソナリティ次元を,異なる手段で——つまり,他の質問紙ではなく——抽出された反応を含むほとんどすべて

雇用者の権利意識に関連するダークな性格

自分は十分に会社に貢献しているにもかかわらず,その見返りが不十分だと考えることがあります。「自分はもっと高い給料を受け取ることができるはずだ」「もっと特別な扱いを受けてもいいはずだ」といった考え方です。 このような意識を権利意識と言ったり,もっと強いものになると特権意識と言ったりします。 特権意識そして特権意識は,自己愛(ナルシシズム)の特徴でもあるのです。 この論文にも質問項目が示されていますが「私には,何でもより多くを得る資格があると思う」「何事も,私の思いどおりに