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研究生活セット

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研究活動,研究生活,研究環境に関連するトピックを集めました。研究とはどういうものか,研究者は何を考えるのかなどを知るためのセットです。
研究者の生活についてまとめた,研究とはどういうものか,研究者は何を考えるのかなどを知るためのセット…
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#教育

理工系アイデンティティ

私の母校は名古屋大学です。その中でもマイナーな教育学部で学部から大学院まで過ごしていました。 大学についてあまり詳しくない人は,国立大学では文系がマイナーで理系の学生数や教員が圧倒的に多数だということを知らないかもしれません。私立大学だとその比率は逆転するのですけどね。 名古屋大学の場合名古屋大学の学部学生数を見てみましょう。全体で9724名の学部学生がいます(科目履修生や聴講生や研修生を除きます)。 そのうち,工学部がだいたい3分の1という,3千人以上を占める圧倒的多

高いところにしずくを垂らすこと

知識の価値が生まれる場所は,水が高いところから低いところに流れる場所のようだと感じることがあります。フラットな状態では水は流れません。高さに差があれば,水が流れていきます。水と同じように,知識も高いところから流れていって,最終的には水面のようにフラットな状態になります。 そして,高低差があるところに,価値が生まれるというイメージです。 授業や本私たちは大学で授業をすることでお金をもらっています(仕事はそれだけではありませんが)。教える側は,教えられる側よりも多くの知識を持

詳しく調べたからといって答えが見つかるとは限らない

詳しく調べようとして,本当はそこにない法則を発見してしまう,ということがあるように思います。 指導法次の例を考えてみましょう。 ある小学校で,1学期と2学期でテストを2回行いました。学校全体としては,なかなか思うように点数が伸びてくれません。そこで校長先生は,「それぞれのクラスの成績を見て,成績が伸びたクラスと伸びないクラスで何が違うのかを比べてみよう」と考えました。 クラスごとに1回目のテストと2回目のテストの平均値を算出して,グラフを描きます。すると,成績が上昇した

レポートを書くときに注意したい表現:「多い・少ない」と「似ている」

文章の書き方というのは、なかなかしっかりと教わる機会がないものなのかもしれません。大学に入るとアカデミックライティングの授業があるところも多そうです。でも、そこで四苦八苦する学生もいるようです。 文章に関するテキストにも色々なものがありますが、まず読んで理解しておいた方が良いのではないかと思う1冊を挙げると、福澤先生の『議論のレッスン』です。 この本を読むと、何かを述べるということはあることから別のことへの飛躍であり、そのジャンプを補強するために証拠を示すことが効果的なの

何のためにそれをするのか

今回は,さいきん時々考えていることをざっと書いてみようと思います。 原因になる変数のことを独立変数と言い,結果になる変数のことを従属変数と言います。別の言い方をすることもありますが,まあ原因になるものと結果になるものということです。 研究をするときには,何を原因として何を結果とするか,ということを考えることがよくあります。 たとえば,知能と勤勉性(自己統制やまじめさ)の性格特性を独立変数にして,学業成績を従属変数にしたりするわけです。この場合,知能と勤勉性で学業成績を説

卒論で結果が出ないとき

以前,次のような質問に答えました。「卒論で大失敗」ということについてです。 でもここに書いたように,もしも「望む結果が出なかった」ことであるならば,それをしっかり論文に書くのが良いと思います。 この「卒論での大失敗」がどういう状況なのかが分かりませんので,とりあえずは心理学で調査や実験をしたにもかかわらず,うまく結果が出なかったことを想定して答えています。でも,質問された方がそれを想定しているのかどうかは分かりません。 回答の前提回答は書いた通りなのですが,実はそこには