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研究生活セット

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研究活動,研究生活,研究環境に関連するトピックを集めました。研究とはどういうものか,研究者は何を考えるのかなどを知るためのセットです。
研究者の生活についてまとめた,研究とはどういうものか,研究者は何を考えるのかなどを知るためのセット…
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#性格

デジタル時代の性格研究

心理学の研究での大きな関心のパターンには何があるのでしょうか。 ◎行動の記述:人間の行動上の特徴を整理して記述する ◎行動の説明:行動の背景を説明する ◎行動の予測:将来の行動を予測する ◎行動の変化:介入や教育によって行動を変化させる 心理学は非常に幅広い学問ですが,パーソナリティ心理学は,認知,感情,動機づけ,行動などの「個人差」を研究する心理学の基礎的な学問分野だと言われます。特に21世紀に入ってからは,ビッグ・ファイブ・パーソナリティなどのモデルによって,私たちの

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AIに研究テーマを決めてもらう

卒業研究などの場合に,「研究テーマをどうしよう?」と悩む学生は多いのではないでしょうか。 悩んだときは,AIに決めてもらうというのはどうでしょう。 Chat GPTというわけで,人工知能モデルをベースにしたChat GPTを使って,心理学の研究テーマを考えてもらったらどうなるかを試してみました。 ChatGPTは,誰でも登録するとすぐに使い始めることができます。たった5日間で100万人のユーザが登録したということでも知られています。 ビッグ・ファイブ・パーソナリティ手

心理尺度構成のステップ(4)信頼性と妥当性

今回も,ある論文の中に書かれている,心理尺度を作成する手順について見ていきましょう。 第1回から第3回までの記事はこちらです。 この論文では,9つのステップが示されています。以下の通りです。 1.領域の特定と項目の作成 2.内容的妥当性の検討 3.プレテスト 4.サンプリングと調査実施 5.項目の削減 6.潜在的要因の抽出 7.次元性のテスト 8.信頼性のテスト 9.妥当性のテスト 今回は8.と9.になります。とうとう最後までたどり着けそうです。 今回はどこまで進め

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心理尺度構成のステップ(3)項目の削除と因子分析

今回も,ある論文の中に書かれている,心理尺度を作成する手順について見ていきましょう。 第1回,第2回に続く3回目です。 これまでにも示した通り,この論文では9つのステップが示されています。以下の通りです。 1.領域の特定と項目の作成 2.内容的妥当性の検討 3.プレテスト 4.サンプリングと調査実施 5.項目の削減 6.潜在的要因の抽出 7.次元性のテスト 8.信頼性のテスト 9.妥当性のテスト 今回は……5.からですね。項目を減らしていく作業から説明を進めていきまし

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心理尺度構成のステップ(2)内容の確認と本調査

今回も,心理尺度構成の内容について論文を見ながら確認していきましょう。 1回目の記事はこちらです。 この論文では,9つのステップが示されています。以下の通りです。 1.領域の特定と項目の作成 2.内容的妥当性の検討 3.プレテスト 4.サンプリングと調査実施 5.項目の削減 6.潜在的要因の抽出 7.次元性のテスト 8.信頼性のテスト 9.妥当性のテスト 今回は……まだまだ2.です。今回はどこまで進めることができるでしょうか。参考にしているのはこちらの論文です(Bes

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心理尺度構成のステップ(1)項目の作成

今回はある論文に載っていた,心理尺度構成のステップについて見てみましょう。 心理学(だけではなく他の学問でも)では,直接的に測定することができない構成概念を測定するために,尺度(質問と選択肢のセット)が使用されます。尺度は通常,単一の変数や項目で捉えることができないような,行動や感情,個人内部の傾向を捉えることを目的として作成されます。複数の質問項目を用いて構成概念を測定することで,各項目の誤差を相殺して,より正確な研究結果を導くことができるとされています。 尺度のつくり

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広く薄く予測することに意味がある

今回は,多くの人から注目を集めるようになる心理特性(性格特性や認知特性など)にはどんな条件があるのかを考えてみたいと思います。 これまでいろいろな心理学的な概念が考えられてきましたが,その概念が注目される(つまり世の中でブレイクする)条件の一つは,それが「役に立つ」と判断されることです。あるいはその逆もある(悪影響を与えると考えられる),のですけどね。 予測ある心理学的な特性が高いことが「役に立つ」とされるための判断というのは,研究の中で「社会的によいとされることを予測す

心理尺度を作るときのサンプルサイズはどれくらい必要なのか

「研究をするための研究」という研究分野があるのをご存じでしょうか。研究者たちが日々研究を行って,論文を書いていくのですが,その論文を集めてある観点から分析を行い,「研究者たちはこのような営みで研究を行っている。しかしこうするべきだ」と,現状の把握と研究方法の改善への提言を行っていくような,「研究」です。 たぶん,研究に携わっていない人々からすれば,全く何の役に立つのかわからない研究なのかもしれません。しかし,ある分野で研究活動をしてる人たちからすれば「このことが知りたかった

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質問の問いが曖昧なケース

今年度も,いくつかの授業をオンデマンドで行っています。学生たちから多くの質問が寄せられますので,そのうちすべてというわけにはいかないのですが,できるだけ回答しようと試みています。 とはいえ,ひとつ教えていて感じることとしては,こういうことです。 ◎毎年同じようなことに答えなければいけない 毎年,質問が出るたびに授業の内容をアップグレードしていきます。そして,学生たちが引っかかるようなポイントを少なくして,質問があまり出ないようにしていこうと試みます。 とはいえ,質問が

過去100年間で報告された相関係数の大きさは?

「パーソナリティ係数」という言葉を聞いたことがありますか?パーソナリティの研究を報告する論文の中では,質問紙によるパーソナリティの得点と,質問紙以外の方法(行動の評定とか観察とか)で得られた得点との相関係数が,せいぜい0.20から0.30程度だということを揶揄して,心理学者ウォルター・ミシェルが本の中に書いている言葉です。 実際のところ,質問紙から推測されるほとんどすべてのパーソナリティ次元を,異なる手段で——つまり,他の質問紙ではなく——抽出された反応を含むほとんどすべて

性格とは何かーーより良く生きるための心理学

2020年8月20日に『性格とは何か』が発売になりました。今回はこの本の紹介と,執筆の裏話を書いてみたいと思います。 内容本書の内容ですが,全体的には性格を巡るよくある疑問に対して,「こんな研究がある」と紹介しながら答えていく内容となっています。たとえば…… ◎赤ちゃんに性格はあるのか ◎性格は何歳で完成するのか ◎大人になっても性格は変わるのか ◎国によって性格は違うのか ◎県民性のような国内の性格の差はあるのか ◎性格は時代で変わるのか ◎社会の変化に合わせて性格も変

タイプAとタイプBとタバコ会社の研究資金

世の中には「動いていないと死んでしまう」という言葉で表すことができるようなタイプの人がいるようです。常に何かに熱中したり,何か取り組むことを見つけようとしたり,せかせかと動き回っているような人です。 周りに思い浮かぶ人も多いのではないでしょうか。もしかして,あなた自身がそういう傾向の持ち主でしょうか。 特徴的な行動心理学で「タイプA」と「タイプB」というとき,それは血液型のことではなくそういう名前の特徴的なパーソナリティや行動のスタイルのことを指します。 このパーソナリ

何のためにそれをするのか

今回は,さいきん時々考えていることをざっと書いてみようと思います。 原因になる変数のことを独立変数と言い,結果になる変数のことを従属変数と言います。別の言い方をすることもありますが,まあ原因になるものと結果になるものということです。 研究をするときには,何を原因として何を結果とするか,ということを考えることがよくあります。 たとえば,知能と勤勉性(自己統制やまじめさ)の性格特性を独立変数にして,学業成績を従属変数にしたりするわけです。この場合,知能と勤勉性で学業成績を説