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映画”めぐり逢い” 5:第3のめぐり逢いとモリコーネ

映画「めぐり逢い」(1957年)は、半年後に再会する約束が、思いがけない出来事で果たせなくなり、二人の運命はいかに・・・というすれ違いメロドラマの古典です。さすがに通信手段の発達した現代では、リメイクは難しいだろうと思っていたら、何とありました☆ それも驚くほどそっくりな!

ウォーレン・ベイティとアネット・ベニングが夫婦で共演しためぐり逢い」(1994年)です。 ウォーレン・ベイティは実生活でも相当なプレーボーイだったそうですが、アネット・ベニングと結婚したあとは落ち着き、4人の子どもにも恵まれ幸せな結婚生活を送っているようです。
2人は1992年に結婚し、映画の公開はその2年後ですから、よほど旧作の「めぐり逢い」が好きだったのか、アネット・ベニングが運命の人だと言いたかったのか、アネット・ベニングをデボラ・カーにしたかったのか・・・ 
役名も旧作と同じテリーで、お相手もケン。ウォーレンの方はケーリー・グラントと同じでは気が引けたのか、マイクになっています。

<ストーリー>
船旅ではなく、シドニー行の飛行機がエンジントラブルでサンゴ礁の島に不時着し、同じ機内に乗り合わせた二人が、マイクの叔母の住むボラボラ島を訪ね、恋に落ちるという設定。 叔母をキャサリン・ヘップバーンが演じています。


<ラストシーン比較> 
こなれたキスがまさに夫婦としか思えないウォーレン様(笑)


ケーリー・グラントとデボラ・カーは緩急自在・絶妙なやり取りが際立っています。  テリーに興味を持つ瞬間、魅かれていく瞬間などが、まるでカチッとスイッチが入るように、観るものに伝わります。


何しろケーリー・グラントが演じるニッキーは、女性が勝手に群がってきて一度も働いたことがないという浮世離れしたプレーボーイです。太刀打ちできるのは、少女漫画か宝塚くらいしかありません。 ウォーレン扮するマイクは元花形フットボール選手、業界の女性(=TVキャスター・婚約者)の後押しでスポーツ解説者になり、テリーと出会ったあとは堅実に生きるべく大学のフットボールのコーチになるという展開。 何だか中年クライシスのようでやや痛い・・・ アネット・ベニングはとても感じが良いんですけど。

そんなこんなで、デボラ・カー・ファンの私にはつっこみ所満載なのですが、撃破されたのは音楽。 あのモリコーネなんですよ~~!! 
モリコーネの音楽って、ときどき内容以上に映画を良く見せてしまうと思いませんか?


<テーマ音楽>


この心に響く美しいメロディーは、叔母(キャサリン・ヘップバーン)のピアノに合わせて歌うシーンでも使われています。 テリーはハミングだけで、歌詞はありません。 これにはやられました!

3つの「めぐり逢い」を制作順にみていくと・・・

初作の「邂逅」(1939年)で、おばあちゃんの家で歌われたのは「愛の喜び」です。 
明るく親しみやすいメロディーで、エルビス・プレスリーの「好きにならずにいられない」のもとになった人気歌曲ですが、歌詞をよくよくみると、「愛の喜びは一日で、苦しみは一生」  そりゃ怖すぎる・・・


同じ監督のリメイク作、すなわちケーリー・グラントとデボラ・カーの「めぐり逢い」では、オリジナル曲が使われています。 この映画と言えばこの曲。このメロディを聞けばこの映画が思い浮かぶ、というように切っても切れない関係を意図したのでしょう。 
歌詞もひたすら、愛の素晴らしさを歌いあげています。 

キャスリーン・ネスビットのおばあちゃん、上品で素敵ですね。 ケーリー・グラントは当時53歳で、デボラ・カーよりもキャスリーン・ネスビットの方が歳が近かったそうです。 あらら。

そしてラストのモリコーネ。 歌詞がなく、言葉はいらない・音楽の力だけですべてを伝える、という究極の選択に脱帽です。 それが出来るモリコーネはやっぱり凄い!

最後の映画出演となったキャサリーン・ヘップバーンが、孤島でひとり老いていく女性の矜持を圧倒的な存在感で表し、映画を引き締めています。好きな女優さんでした。
ロケ映像も素晴らしいです。 

それぞれに味わいのある3つの作品、皆さんはどれがお好みですか?
折しもモリコーネのドキュメント映画が公開中、観にいきたいです。


ほんと古い映画は良き❤
今回も勝手気ままに書き散らした記事にお付き合い頂き、ありがとうございました!