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映画”めぐり逢い”2.独断と偏愛で語るテーマ音楽

オープニングを聴いただけで、映画のシーンが鮮やかに蘇って胸が熱くなる、おなじみの曲。 第30回アカデミー賞歌曲賞にノミネートされ、今ではジャズのスタンダードにもなっている素敵な曲です。(作詞:ハリー・ウォーレン 作詞:レオ・マッケリー&ハロルド・アダムソン)

タイトルのAn Affair to Rememberは直訳すると“忘れ得ぬ出来事”で、「過ぎし日の恋」「思い出の恋」などと邦訳されています。

*An Affair to Remember
Our love affair is a wondrous thing
That we'll rejoice in remembering
Our love was born with our first embrace
And a page was torn out of time and space

Our love affair, may it always be
A flame to burn through eternity
So take my hand with a fervent prayer
That we may live and we may share
A love affair to remember

映画のなかで、このテーマ曲が、もうそれしかないというくらい、とても巧みに使われているんです。映画と音楽って、かくも分かちがたい。 独断と偏愛で印象的な場面をたどってみます。 (所有しているDVDで音を取ってみましたが、音楽は素人なので、間違いがあったら教えてくださいね^^)

① オープニング  歌(ビック・デモン)  

ファンファーレが鳴って、ビック・デモンが張りと艶のある声で歌い出します。平明で安定感のあるハ長調で、「さあ、今宵、極上のロマンスをお楽しみください。」とでもいうように、観る人の気持ちを誘います。

   
② 祖母の家  ピアノ(祖母)+歌(テリー)  

ここも忘れられないシーンのひとつ。テリーが一心に祈る姿とこの歌声が、ニッキーの心をとらえたVillefrancheの場面です。
祖母ジャヌーの弾くピアノに合わせて、テリーが歌います。マーニー・ニクソンの吹き替えは、デボラ・カー本人の声かとおもってしまうほど、ぴったりです。デボラ・カーはインタビューで「顔も(マーニーと)似ている」と言っていました。骨格が声の質を決めるそうなので、骨格が似ている人は声も似てくるのかもしれません。作曲者のハリー・ウォーレンは、ピアノ曲に聞えるメロディーを求めて、25もの旋律を試行錯誤したとか・・・

<デボラ・カーとマーニー・ニクソン>

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ここでは、オープニングよりも少し下がって、ピアノの黒鍵を多く使うショパンも好んだロ長調になっています。温かみがありノスタルジックな音色が、心に染みます。

マーニー・ニクソンのソロはこちら。”王様と私” ”マイ・フェア・レディ” など数多くの有名作品の吹き替えをしていますが、当時は吹き替えを公表しない契約になっていたそうです。透明感のある素敵な歌声です。



③ デッキ~階段のKiss シーン  クラリネット~ストリングス 

炎のように激しく燃え上がる恋ではなく、祖母の家の美しい余韻のなかで、ニッキーへの思いが心に沁みわたっていきます。クラリネットが牧歌的にヘ長調で旋律を奏で、チェロが甘美に寄り添い、続く階段のシーンでストリングスに変わります。弦楽器が響きやすい開放弦の音程が含まれ、情感を盛り上げます。二人の航路が変わった瞬間でした。


④ クライマックス  ストリングス 


これがまた凄い・・凄すぎる! 
再会の場面では、BGMはありません。緊張感のある会話が展開します。
音楽がはいるのはテリーがショールを手にしたときから。胸の鼓動の高まりに合わせて旋律も駆け上がっていき、怒涛のクライマックスに流れ込みます。ヒロイックな変ホ長調は、オープニングより音域が上がって、どこか魔法がかかったような響きを帯び、大どんでん返しにふさわしい締めくくりのサウンドを奏でます。

映画音楽って引き立て役ではなく、刻々と変わっていく心情や場面に合わせて、ストーリーと一体で作られているんですね。音楽をてがけたヒューゴー・フリードホーファー(Hugo Friedhofer)は、チェロが弾けたそうで、スケッチをスコアに落とす技術に定評があり、何度もアカデミー賞音楽賞にノミネートされました。ブラボー♪ 素敵な作品にしてくれて、本当にありがとう!
最後はしっとりとしたナットキングコールでお聴きください。

*写真と動画はインターネットからお借りしました。


3 独断と偏愛で語るラストシーン