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ツノコビトと一角獣

ある日、ツノコビトは不思議な角を拾った。
巻き貝を長―くした形の、虹色に輝く角。

「一角獣の角ではないでしょうか?」
と教えてくれたのはホストツリー。

「百科事典で見たことがあります。
 彼らにも角の生え替わり時期があるのでしょう。
 一角獣はなかなか姿を見せないのですよ。
 なんと珍しいものを拾われたのでしょう!」

ツノコビトは初めて一角獣を知ったのだが、
何か自分と相通じるものをピピッと感じた。

ツノコビトには不思議なセンサーがある。
角の一端に触れているだけで、
一角獣の性質が何となくわかるのだった。

それから何ヶ月もかけて、彼は〈ツノの家〉を建てた。家を建てている間は、彼は誰とも口を利かない。

もともと無口で単独行動のツノコビトだが、
創作活動に入るとそれが顕著になり
誰も近寄れなくなる。
あのワライキノコさえ、遠慮するほどだ。

さてさて、〈ツノの家〉は完成した。
ツノコビトは、持てる力の全てを使ってやりきった。
大満足だった。

その晩のこと…
流れ星が通り雨のように降ってきて
魔法の森を光の雨で濡らしていった。

ー何か幸いの前兆のだろうか?

そのとき夜空を見上げたものは、
空を駆け上がる不思議な影を見た。

それは…
流れ星を降らせながら走る、一角獣の姿だった。

その背中にツノコビトが乗っていたことは、
誰も知らない。

ツノの家を建てるツノコビト

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