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かみさまのハート
ある月のきれいな晩のこと…
タンプは眠りの中で不思議な音を聞いた。
空を包み込むような
森全体にささやきかけているような
どこか懐かしく優しい不思議な音。
「タンプ、タンプ」
あれ?誰かがボクを呼んでいるみたい・・・
「目を覚まして、タンプ」
パチッと目を開くと、ヘイワニがいた。
「ヘイワニ、どうしたの?こんな夜更けに」
「タンプ、あの音色が聞こえるかい?」
夢の中で聞いたあの音が、まだ聞こえていた。
「あの音色、池の方から聞こえてくるんだ。
気になって眠れないんだよ」
すがるような顔で、ヘイワニはタンプを見た。
怖くて、一人で確かめに行けないのだ。
タンプは、眠い目をこすりながら言った。
「いいよ、ヘイワニ。一緒に確かめに行こう」
二人は、月の照らす森を池の方に歩き出した。
池が見えてきたとき、二人は息を呑んだ。
池の表面がキラキラと
まばゆいばかりに輝いていたのだ。
そうっと近づいて池をのぞき込むと…
かみさまがそこに映っていた。
![](https://assets.st-note.com/img/1699320329223-nAlm9uHrmj.jpg?width=800)
そして次の瞬間、
三人は目が合ってしまった。
「やあ、キミたちを起こしてしまったかな?」
かみさまは、少しばつが悪そうだった。
「こうして鏡に映さないと、
自分の姿が見えないのでね。
キミたちの眠りを邪魔するつもりはなかったんだ・・・」
そう言いわけしながら、
かみさまはスッと池の中に手を差し込んで
自分のハートを取り出した。
「ついでに、ハートを洗わせてもらったんだ」
ピカピカになったハートが歌いながら
かみさまの胸に収まるのを
二人は水面を通して見ていた。
「ああ、この音!かみさまの心音だったんだ!」
かみさまは、ニッコリ笑ってこう言ったんだ。
「キミたちも、同じ音でできているよ」って。
えっ?二人は顔を見合わせ、
同時に目を閉じて体の中の音に耳を澄ませた。
ほんとうだ!
同じ音がかすかに聞こえてくる。
自分たちも、かみさまと同じ音でできていたんだ!!
それは、本当に驚きだった。
目を開くと、かみさまの姿は消えていた。
が、あの音は空に響き渡っていた。
それは、いつも聞こえている音だった。
だけど、少しも気に止めていなかったのだ。
「ああ、タンプ!
ボクたち、とうとう世界を見たんだね!」
その通りだった。
ヘイワニは望んだ以上の世界を見てしまったのだ。
タンプは感動のあまり何も返せなかったが、
お互いの気持ちは十分伝わっていた。
二人は沈黙を保ったまま
幸せな気持ちで朝までそこで過ごした。
![](https://assets.st-note.com/img/1699320361431-wG8OMomhwp.jpg?width=800)
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