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かみさまのハート

ある月のきれいな晩のこと…
タンプは眠りの中で不思議な音を聞いた。

空を包み込むような
森全体にささやきかけているような
どこか懐かしく優しい不思議な音。

「タンプ、タンプ」
あれ?誰かがボクを呼んでいるみたい・・・
「目を覚まして、タンプ」
パチッと目を開くと、ヘイワニがいた。

「ヘイワニ、どうしたの?こんな夜更けに」
「タンプ、あの音色が聞こえるかい?」
夢の中で聞いたあの音が、まだ聞こえていた。

「あの音色、池の方から聞こえてくるんだ。
気になって眠れないんだよ」
すがるような顔で、ヘイワニはタンプを見た。 
怖くて、一人で確かめに行けないのだ。

タンプは、眠い目をこすりながら言った。
「いいよ、ヘイワニ。一緒に確かめに行こう」

二人は、月の照らす森を池の方に歩き出した。

池が見えてきたとき、二人は息を呑んだ。
池の表面がキラキラと
まばゆいばかりに輝いていたのだ。

そうっと近づいて池をのぞき込むと…
かみさまがそこに映っていた。

そして次の瞬間、
三人は目が合ってしまった。

「やあ、キミたちを起こしてしまったかな?」
かみさまは、少しばつが悪そうだった。

「こうして鏡に映さないと、
自分の姿が見えないのでね。
キミたちの眠りを邪魔するつもりはなかったんだ・・・」

そう言いわけしながら、
かみさまはスッと池の中に手を差し込んで
自分のハートを取り出した。

「ついでに、ハートを洗わせてもらったんだ」

ピカピカになったハートが歌いながら
かみさまの胸に収まるのを
二人は水面を通して見ていた。

「ああ、この音!かみさまの心音だったんだ!」
かみさまは、ニッコリ笑ってこう言ったんだ。
「キミたちも、同じ音でできているよ」って。

えっ?二人は顔を見合わせ、
同時に目を閉じて体の中の音に耳を澄ませた。

ほんとうだ!
同じ音がかすかに聞こえてくる。
自分たちも、かみさまと同じ音でできていたんだ!!
それは、本当に驚きだった。

目を開くと、かみさまの姿は消えていた。
が、あの音は空に響き渡っていた。

それは、いつも聞こえている音だった。
だけど、少しも気に止めていなかったのだ。

「ああ、タンプ!
ボクたち、とうとう世界を見たんだね!」

その通りだった。
ヘイワニは望んだ以上の世界を見てしまったのだ。

タンプは感動のあまり何も返せなかったが、
お互いの気持ちは十分伝わっていた。

二人は沈黙を保ったまま
幸せな気持ちで朝までそこで過ごした。

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