地域防災のお仕事

 地域の防災力向上の取り組みを実践するため、私は自分のマンションの自主防災組織の本部長を2013年から11年務めています。そしてその取り組みの成果を地域全体に広げるため、地域内の自主防災組織もしくはマンション管理組合・自治会の防災担当の連携の場となる「地域防災協議会」を立ち上げ、その事務局を2015年から9年務めています(私の住む稲城市若葉台地区は、大規模マンションと戸建て地区が複数存在し、それぞれで別々の自主防災組織が設置されているため、地域全体の防災について活動する場がありませんでした)

 自主防災組織の取り組みとしては、防災マニュアルの作成とそれに基づく安否確認訓練・消防訓練を実施してきました。これまで自主防災組織が行ってきた古い方式(例えば、建物から全員が一斉避難、避難場所で一斉炊き出し、担当役員が全て面倒を見る、等)を改め、自宅が安全なら在宅避難、必要な水・食糧は日常備蓄で各自で確保、役員不在でも機能するように在宅している者がまず隣近所で安否確認し助け合う、を基本方針としました。
 そしてその方針に従って防災マニュアルを作成、その内容を防災訓練で実地確認、その結果をフィードバックして更にマニュアルを改良し、といった取り組みを行ってきました。最近ではkintoneを活用して構築した住民ポータルシステムを利用して安否確認を行う手順についても検討に着手しています。その取り組みの全てが、全住民に正しく理解されているか判断は難しいところですが、マンション内の防災訓練では、参加率が毎回90%を超えており、一定の理解は得らえていると考えています。

 地域防災協議会の取り組みとしては、毎年地域内の自主防災組織が合同で地元小中での避難所設営訓練を実施しています。そこでも避難所に関する昔ながらの考え方(全員が避難所に向かう、避難所で一斉炊き出しする、等)を改め、まずは自分の住戸・マンションの安全確保を最優先すること、その上で地域の共助のために避難所設営・運営に協力すること、避難してきた人を”お客さん”扱いせずできることは自分たちでやってもらうこと、などを基本方針としています。避難所を立ち上げ、避難者を受け入れるまでの手順は誰もができるように訓練は行いますが、あくまでもサポートの位置づけとなります。そのようなスタンスで関わることを、地域内でも共有しつつ、行政にも伝えていくことで、持続可能な地域防災の体制づくりができると考えています。

 今年は稲城市防災訓練が地元若葉台地区で開催されるため、地域防災協議会の避難所設営訓練は、稲城市防災訓練の中で実施することになりました。それに先立ち、避難所運営における要支援者対応に対する特別研修会を市が開催してくれたので、若葉台地区の皆さんと共に参加しました。その中で、障害者に対し合理的な配慮を行うよう努めること、見ただけでは分からない障害を抱えた方もいるし必要な支援も人それぞれなので、愛と創造力が必要であることなど、非常に大切なことも学ばせていただきました。地域内でもそれに関する共通認識を持つことができた、と思います。
 その上で敢えて言わせていただきたいのは「障害者であっても、避難所では”お互い様”であり、自分ができることは自分でやるべき」ということです。これは決して障害者の方々を排除しようということではありません。障害者だけでなく高齢者など他の災害弱者の方々に対しても「できることは自分でやってください、できないことはサポートしますので遠慮なく教えてください、という対応が、本当の意味での公平な配慮なのだと考えます。そのような態度で接することが、災害弱者の方も引け目を感じることも無くなると思いますし、健常者(という言い方もあまり好きではありませんが)の側も気負うことなく、できる範囲でサポートすることができるようになるのではないか、と考えます。

 ともすると避難所にさえ行けばよい、避難所では完璧なサポートを提供しなければならない、といった考えになりがちです。そうではなく同じ被災者として”お互い様”の精神で助け合える地域づくりに平時から取り組んでいくことが真の地域防災力強化につながると改めて感じました。


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