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東京・大阪・宮城、抗体検査2回目の結果 (追記あり)


前回は偽陽性に埋没してしまった厚生労働省主導の抗体検査

今度は「二つの抗体検査キットで、両方とも陽性のときのみ陽性と判断」のスタイルで実施した。東京で1,971名・大阪で2,970名・宮城で3,009名、合計7,950名が参加した。「無作為抽出した一般住民」なので、医療機関に来た人を対象にするこれまでの検査よりも、「ふつうの人の抗体保有割合」に近い値が出ると考えられる。

結果はこちら。

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「二つとも陽性」にした背景は?

「アボットの抗体検査キット」「ロシュ・ダイアグノスティックスの抗体検査キット」の双方で陽性になった人のみ、「陽性=抗体あり」と判断している。


それぞれの会社のキットについて、米国の添付文書から得た紛れ込みの発生度合のデータ (特異度のデータ)はこちら。

(アボットARCHITECT)

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紛れ込みの発生リスクは、1070人中4名 (0.37%, 幅を持たせて0.1% - 0.95%)。

ロシュ・ダイアグノスティックスELECSYS

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紛れ込みの発生リスクは、5,272人中10名 (0.19%, 幅を持たせて0.09% - 0.35%)。

どちらも高い特異度を示すが、それでも200-500人に1人は紛れ込みが起きてしまう。前回の調査での陽性率が(紛れ込みを含めても)500人中1-2人と低かったことを考え合わせて、「両方の検査で陽性となって初めて『陽性』」という基準を設定したものだろう。

本当は抗体を持っていない人が、二つの検査両方で「間違えて陽性」と紛れ込んでしまう確率は、単純にかけ算して0.37%×0.19%=0.0007% (0.7%から訂正)…とは限らない(「ロシュのキットで紛れ込んだ人は、アボットのキットでも紛れ込みやすくなる」のような要素があれば、この値よりも高くなる)。ただ、1つのキットだけで検査したときと比べれば、偶然紛れ込みの部分はかなり除去できるので、「検査で陽性の人、ほんとに抗体あり?」の可能性は強くなる。

3つの地域の結果

結果は、東京で1,000人に1人 (0.1%, 2/1,971)、大阪で600人に1人 (0.34%, 5/2970)、宮城で3,000人に1人 (0.03%, 1/3,009)。幅を持たせると、東京が0.01% - 0.36%, 大阪が0.05% - 0.39%, 宮城がゼロ - 0.03%となる。

表のうち、「アボット (+)」の行をタテに見ると、
「アボットキットで陽性になった人がロシュキットでも陽性になる割合(陽性的中率)」がわかる。例えば大阪なら、合計16名が陽性で、そのうち5名がロシュでも陽性になったので、5/16=31%となる。

「ロシュ (+)」の行をヨコにみると、同じようにロシュキットの陽性的中率がわかる。同じように大阪をみると、合計10名が陽性で、そのうち5名がアボットでも陽性だから、5/10=50%となる。

「二つのキットで陽性」を真の抗体保有者と仮定しても (すなわち、両方のキットで偽陽性になる人はいなかったと仮定しても)、キット一つだけでは場合によっては半数以上が「紛れ込み」となる。もともとの調査プロトコルは見つけられなかったので、事前にこの方針が固まっていたかはわからない。ただ、陽性率が非常に低い状況 (一般集団での調査のような状況)では、非常に高い特異度の抗体キットを用いたとしても、単独では紛れ込みのリスクを排除しきれないことが改めてわかる。

参考として示されているモコバイオ社のキットに関するデータはこちらと思われる。

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紛れ込みリスクは157人中1人、0.64%。ただ、上述の2社と比較して例数が少ないため、幅を持たせると3.5% - 0.02%とやや広くなる。今回の検査でも陽性割合は東京1.07%・大阪1.25%・宮城1.20%と他のキットよりも高く、紛れ込みがより多く発生したことが示唆される。

紛れ込みを減らすと、見逃しは??(追記)

今回の研究は、紛れ込みを防ぐために「両方の検査で陽性にならなければ、「結果陽性」にカウントしない」スタイルをとった。紛れ込みが減る分、当然に見逃しのリスクは高くなる。

見逃しのリスクに関して、どちらの検査も企業試験の結果では「(感染確認14日後以降では)見逃しゼロ」の結果が出ている。ただ、

いつも通り…

抗体検査の結果が、「もうかかりませんよ」の証明にならないことは、これまでも紹介してきた通り。一般集団での潜在的な発症率が「きっちりしたキットを複数使わないと得られないレベルで低い」ことが、ある程度示されたことになる

※筆者はロシュ・ダイアグノスティックスおよびアッヴィと利益相反 (アドバイザー契約)があります。

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