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公民科教員の本棚(探究学習編)

公民科教員の悩みの種は、とにかくカバーすべき分野が多いことではないかと思います。同じ教員が倫理も政治経済も教えないといけないのは、正直かなり大変……
ということで、私が読んだ or 今後読もうと思っている「授業準備に役立てられる本」を分野別にご紹介します。今回は探究学習編です。一人でも多くの教員の方や教員志望の方のご参考になれば幸いです。
※随時追記します。

【最初の一冊】『主体的・対話的で深い学びに導く 学習科学ガイドブック』
私自身もそうですが、自分が今まで受けたことのない探究学習をいきなり実践するのは難しいものです。きちんと学ぶ機会が少ない学習科学の基本的な考え方がこの本ではコンパクトに紹介されていて、辞書的にも使うことができます。こういう本が教職科目の教科書としてどんどん採用されていくと良いと思うのですが。なお、探究学習の実践本としては『学びの技』も良書だそうです。(こちらは未読ですが…)

【中高生にもおすすめ】『知的複眼思考法 - 誰でも持っている創造力のスイッチ』
「自分の頭で考えろ」と言うのは簡単ですが、実際にものの見方や考え方を指導するとなると一筋縄ではいきません。この本は、どうやって問いを立て、それを論理的な文章にしていくか、という思考のプロセスを丁寧に解説してくれています(個人的には、レポート評価のエピソードが非常に印象的でした)。思考法についての本は類書もたくさんありますが、これは高校生のうちに読んでおいても損はないでしょう。同じ著者が2019年に出版した『教え学ぶ技術』もおすすめです。

【大学へのステップアップ】『新版 論文の教室 - レポートから卒論まで』
大学の論文指導ゼミでも必読文献に指定されることが多い本です。レポートや論文の書き方を解説した本は数多くありますが、ひとまずバランス良くポイントを押さえてある本書をおすすめの一冊として挙げておきます。「目から鱗」「激しく同意」「納得いかない」「激しく反発」という文献を読むときの4観点もシンプルで分かりやすいです。構成を意識した論理的で分かりやすい文章を書くためには、木下是雄『理科系の作文技術』も併せて読むと良いでしょう。

【見方を学ぶ】『質的社会調査の方法 - 他者の合理性の理解社会学』
インタビューやフィールドワークを考えている人に是非おすすめしたい一冊です。なぜインタビューやフィールドワークをするのか、その調査からどのような社会の姿が見えるのか、という社会調査の根本の部分をじっくり考えることができます。『ふれる社会学』も、身近なテーマから問いを立ち上げているので教科書っぽくないワクワク感が味わえます。

【見方を学ぶ】『歩いて読みとく地域デザイン - 普通のまちの見方・活かし方』
総合学習や探究学習の一環で地域調査を取り入れている学校は多いのではないでしょうか。私も中学の時に「地域学習」という授業でレポートを書きましたが、どうやって調査すれば良いか分からず困った記憶があります。この本は、地域調査を実施する時に着目するべきポイントを具体的な事例と共に解説してくれています。地図を見ながら街を歩いてみたくなる、そんな一冊です。

【大学へのステップアップ】『経験と教育』
最後に、探究といえばこの人、デューイの著作を挙げておきましょう。デューイといえば『民主主義と教育』の方が有名ですが、こちらの方が彼の教育思想がまとまっていて分かりやすいと思います。(『民主主義と教育』は大学1年生の時にゼミで読んだものの、今一つピンとこなかった記憶があります。残念…)
進歩主義教育と伝統的教育の対立というありがちな二項対立に与することなく、「なぜ経験を基礎とした教育が重要なのか」「そのための教師の役割は何か」など、探究学習のための重要な視点を提示してくれています。100年近く前の本でありながら、今なお学びの多い一冊です。 

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