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公民科教員の本棚(国際編)

公民科教員の悩みの種は、とにかくカバーすべき分野が多いことではないかと思います。同じ教員が倫理も政治経済も教えないといけないのは、正直かなり大変……
ということで、私が読んだ or 今後読もうと思っている「授業準備に役立てられる本」を分野別にご紹介します。今回は国際編です。一人でも多くの教員の方や教員志望の方のご参考になれば幸いです。
※随時追記します。

【最初の一冊】『本当の戦争の話をしよう - 世界の「対立」を仕切る』
国際紛争の現場で武装解除に携わってきた著者が、高校生相手に行った連続講義をまとめた本です。単純な善悪の二項対立を超えて国際紛争の現実を多面的に捉えるために、ぜひ読んでおきたい一冊です。やや古い本ですが、同じ著者による『武装解除』も日本の国際協力のあり方を考えるうえでおすすめです。

【最初の一冊】『国際政治史 - 主権国家体系のあゆみ』
主権国家体制の成立から冷戦終結後までの国際政治の展開を概観できる一冊。私も今学期の公民の授業はこれをネタ本として組み立てています。今までは放送大学の『国際政治』が定番でしたが、個人的にはこちらの方が使いやすい気がします。なお、兵器の発達と戦術の変化について理解を深めるなら『ヨーロッパ史における戦争』や『戦争の世界史』もおすすめです。

【大学レベルの一冊】『国際法』
400ページ超の骨太な新書で、国際法に関する論点を幅広く解説しています。新書で読める国際法の概説書としては随一ではないでしょうか。どうしても中学公民や高校政経の授業では国際法の視点を意識することが少ないので、きちんと勉強したいものです。(実はまだ読み切れていません…)
なお、著者は2018年に逝去されたため、この本が遺作となったそうです。

【最近の新書から】『戦争とは何か - 国際政治学の挑戦』
戦争と平和について、理論とデータを用いた科学的な分析を行っている面白いアプローチの一冊。「どのような条件が戦争を引き起こすのか」「民主主義国導師が戦争をしにくい、という主張は妥当か」など、興味深い研究結果が多数紹介されています。国際政治学にこういうアプローチがあることは、本書で初めて知りました。経済編の記事で紹介した『データ分析の力』を読んだ後だと、本書の面白さをより実感できるでしょう。

【大学へのステップアップ】『ストーリーで学ぶ開発経済学 - 途上国の暮らしを考える』
「世界の貧困問題を解決したい」という中高生は少なくないですが、途上国支援の具体的なイメージを持つのは意外と難しいものです。この本は、架空の途上国の物語をもとに様々な問題とそれに対応した分析や処方箋・開発政策を紹介しています。2019年のノーベル経済学賞が「世界の貧困削減への実験的アプローチ」の功績でバナジー&デュフロ&クレマーの3氏に送られたことからも、開発経済学への注目度はますます高まっているといえるでしょう。
ちなみに、同僚の先生からは『なぜ貧しい国はなくならないのか』もおすすめしていただいたのですが、こちらは未読です…

【見方を学ぶ】『FACTFULNESS - 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』
2019年にビジネス書として話題になりましたが、世界の見取り図の把握にも役立つ一冊です。「貧困」のイメージをアップデートするには欠かせない本だと思います。この本におけるデータ分析の基になっているGapminderも無料でダウンロードできるので、自分で色々いじってみると面白いです。また、著者のハンス・ロスリングのTED講演も分かりやすいので、一冊読み切るのが大変な人はTEDも是非。

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