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公民科教員の本棚(政治編)

公民科教員の悩みの種は、とにかくカバーすべき分野が多いことではないかと思います。同じ教員が倫理も政治経済も教えないといけないのは、正直かなり大変……
ということで、私が読んだ or 今後読もうと思っている「授業準備に役立てられる本」を分野別にご紹介します。今回は政治編です。一人でも多くの教員の方や教員志望の方のご参考になれば幸いです。
※随時追記します。

【最初の一冊】『政治学の第一歩』
有斐閣からは政治学の優れた教科書が多数出ていますが、政治学の基本テーマを一通りおさえつつサラッと読める一冊を挙げるならこれでしょう。有斐閣ストゥディアは読書案内も充実しているので、ここから学びを広げていくことも可能です。同じく有斐閣ストゥディアの『ここから始める政治理論』も良書です。

【最初の一冊】『日本政治ガイドブック - 民主主義入門』
この本は、政治学の基礎知識について一通り触れつつ、第Ⅲ部「民主主義とポピュリズム」にウエイトが置かれているのが特徴です。副題が「民主主義入門」となっている通り、民主主義という概念を理解するための一助となる本です。ちくまプリマー新書の『民主主義という不思議なしくみ』も良い本ですが、個人的にはこちらを推します。

【見方を学ぶ】『多数決を疑う - 社会的選択理論とは何か』
中高の社会科教員の間ではもはや定番となりつつある一冊。社会的選択理論という学問分野を世に広めた功績は非常に大きいと言えます。イギリスのEU離脱やトランプ大統領の当選以降、『ポピュリズムとは何か』をはじめポピュリズムの関連本が数多く出版されていますが、この本は「民意」について考えるための出発点となるでしょう。

【見方を学ぶ】『日本の選挙 - 何を変えれば政治が変わるのか』
やや古い本ですが、選挙について学ぶにはこの本が最適です。中高では「小選挙区制の欠点は死票が多くなること」のような形でしか教えないことが多いですが、そもそも小選挙区制や比例代表制がどのような理念に基づいている制度なのかを理解できるのがこの本の最大のポイントです。上記の『多数決を疑う』と併せて読むことで、相乗効果が期待できます。

【穴になりがちな分野】『自民党 -「一強」の実像』
やや堅めの本ですが、戦後日本政治史(政党政治)を教える際の下敷きにすると良い一冊だと思います。「野党はだらしない」というイメージを持っている中高生は非常に多いですが、自民党という政党の盤石さがどのような仕組みに裏付けられているのかを改めて理解することができます。

【見方を学ぶ】『保守主義とは何か』
「右/左」「保守/リベラル」という対立軸で語られがちな政治ですが、この本は起源まで遡って保守の歴史的な系譜と現状の論理を示してくれています。もともとはフランス革命のような性急な政治的変革に反発するのが保守主義であった、という指摘はなるほどと思わされます。

【穴になりがちな分野】『政治を動かすメディア』
政治を語るうえで、メディアとの関連は意識しておく必要があるでしょう。中公新書の『日本政治とメディア』なども良書ですが、今回は政治のプレーヤーとしてのメディアについて多面的に論じたこちらを挙げておきます。最後の座談会がなかなか面白く、読み物としてもオススメの一冊です。

【大学へのステップアップ】『原因を推論する-政治分析方法論のすゝめ』
社会科学の方法論の名著。政治学科のゼミでも課題文献に指定されることが多いようです。因果関係について解説した本は『データ分析の力』『原因と結果の経済学』など他にもありますが、科学の条件としての反証可能性についても言及しているなど、社会科学全般に通底する考え方を幅広くおさえている一冊といえるでしょう。

【最近の新書から】『女性のいない民主主義』
2019年に出版されて話題になった新書で、同僚の先生にも薦められたのですが、実はまだ積ん読になっています…(ちゃんと読了したら更新します)
従来の政治学は「男性の政治学」にすぎなかったのでは、という本書の指摘はなるほどと思わされます。ジェンダーの視点から見る政治学というのは切り口としても興味深く、どのテーマも読み応えがありそうです。


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