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閑話休題 ネットで探してもみつからないもの

熱海CaseStudyHouseプロジェクトは、ステキな人との出会いの場でもあります。今日は、我が家の土地取引で力を貸して下さった三浦の「いわの不動産」岩野社長から伺った話。

猫のご飯のため、宿泊なしが我が家のルール。
それでも40回も熱海に通うと楽しみがみつかります。
今日は熱海で出会った人のお仕事を通じて考えたこと。

三崎の住宅事情

三浦市三崎といえばマグロの町。京急三崎口駅から品川まで60分と通勤もできそうですが、三浦市は神奈川県下で2番目に空き家率の高い自治体(21.9%)でもあります。

そう聞くとなんだかさびれた町をイメージしますが、好きな人にはたまらない相模湾越しの富士山や、同じ半島なのに熱海と違って多い平地、三浦野菜と、暮らしやすそうな印象です。

三崎港周辺には、まぐろ以外の飲食店も充実。新規開店するケースも増えているのだとか。
我が家は週末の朝8時に朝ごはん屋さんでサバの干物定食を食べ、おやつにマフィン専門店でバナナマフィンをいただきました。朝ごはん屋さんは、昼と夜はトライアルキッチン(お試し店舗)に衣替え。飲食業をはじめたい人にはちょっといい仕組みですよね。

ドラマに出てきそうな広告会社があったり、街歩きも楽しそう。朝市のない土曜日なのに、朝から若者グループや、トレッキング姿のシニアの姿。緊急事態宣言が明けたからか、静かな活気を感じます。

海も近く、釣った魚で料理を楽しめそうです。釣り好きにはたまらないですね。ちょっとした家庭菜園を持つ空間もありそうです。コロナで会社にしがみつかない働き方が増えていることを思うと、実は魅力的な場所かもしれません。

三崎で暮らしたいと思ったら、みなさんどうされるでしょうか。スーモやアットホームを探してみると、普通のアパートばかり出てきます。
でも東京ではなく、あえて三崎で暮らすとしたら、何か理由がありますよね。理由を実現する住まいを選びたい。三崎に住まわれた方たちはどうされているのでしょうか。

ネットには情報がない

いわの不動産は、スーモやアットホームに広告を出さないのだそうです。

本気で探している人は、同社のホームページに直接問い合わせるとのこと。需要はさまざま。

*家族での三崎への移住を考えているが、まずは二拠点居住から始めたい。新しい設備は不要。家賃が合えばすぐに入居したい。
*都心でレストランを経営していたがコロナで3店のうち2店はしめた。代わりに三崎で開業し、仕入れルート確保も兼ねて住居とともに移ってきたい。
*就農したいので農業を教えてくれる大家さんの物件に住みたい。

そもそも三崎近辺は、スーモやアットホームにでている物件数が極端に少ないのだそう。
でも実は、家族にきちんと管理された空き家や、空き家候補はたくさんある。

*高齢の親が数年前まで住んでいた家、数ヶ月に一度、草刈りや風を通すために東京からきているけれどそろそろ限界。親はまだ存命だし、取り壊すのは忍びない。そのまま使ってくれる人がいないだろうか。
*遠洋漁業の船員用の寮として建てたアパート。管理が大変だから誰かに買ってほしい。条件は、30年も住んでくれている人を追い出すようなことをしないこと。
*ずっと住んでいた人が退去した。古い建物だし、新しい投資は不安。だったらそのままにしておこうか。

売り手の顔を立てながら、買い手の需要にあわせて物件化する。市場に出ていない案件を物件化するには、時間と手間がかかるわけですが、だからこそ双方からの信頼が高まり、次の物件化が実現する。結果として地域の空家が1つ、1つと減り、新しい住民が増えていく。

いわゆる不動産屋さんの仕事は、資産としての不動産の売買や貸し借りが中心です。いわの不動産のお仕事はその枠を超え、暮らし方のリ・デザイン、地域文化の継承に貢献しているようにお見受けしました。まちづくりって、こういう活動の積み重ねだなと強く思います。

思えば、我が家の熱海の土地も、ネットに掲載された情報ではありませんでした。センスがよさそうな熱海の不動産屋さんに直接問い合わせ、希望を伝え、紹介してくれたいくつかの物件のうちの1つ。実際は、その不動産屋さんは物件を商品に仕立てるために手間がかかることがわかり途中で万歳。それを最後まで付き合って物件化してくれたのがいわの不動産でした。

なんでもネットに情報があるように思いがちですが、規格化、商品化されていないものはネットには掲載されません。一方でそれを求める人の数は増えている。4Gや5Gといった通信の高度化によってスーモやアットホームのようなプラットフォームサービスが充実してきたわけですが、ここから抜け落ちるニッチなニーズもまた、増えています。それを後押ししているのが、インターネットであったりする。面白い時代です。

高速化、効率化の逆にあるもの

「普通の不動産売買の方が手間が少なく儲かりますよ」と、岩野さんは笑いながらおっしゃっていました。規格外の仕事をするから、心から感謝されたり、頼りにされたりする。仕事って何のためにするのだろうと考えずにはいられません。

引き続き、私たちの国は、国をあげて高速化、効率化に向かおうとしています。でもその方向は本当に正しいのだろうかと思った週末なのでした。

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出所

神奈川県「神奈川県の市町村別空き家数と空き家率」https://www.pref.kanagawa.jp/documents/14815/akiyaritsu.pdf

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