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「モノトーンの紙のノート」_ATACニュースレター#3

■モノトーンのノート
黒い筆記具だけじゃなくて白い筆記具でもかけるノートが発売されています。どんなものか想像できますか?2018年のコクヨデザインアワードで優秀賞を受賞し、2020年6月に「白と黒で書けるノート」として製品化されました。文房具好きな人たちやデザイナーの間では人気で、今も品切れが続いています。アイディアは非常にシンプルで、ノート用紙の色が灰色になっていて、黒でも白でも書けるというものです。言葉だけでこのアイディアをイメージしたものと、実際に目にして受ける印象が全く違うのも面白いところです。

■見た目が格好良いモノは何度も見られる
このノートに白黒の両方のインクで書くと、スタイリッシュな見た目になります。さらにフラット製本で、書きやすいのもノートとしてポイント高そうです。見た目が良いということは、後で見返す可能性が高く、勉強やアイディアをまとめたりするのに良さそうです。モノトーンにしておけばスタイリッシュになりやすいというのは、服のスタイリングと似ています。普通の白地ノートもモノトーンと言えばそうですが、この製品では何が違うのでしょうか。

■人間の情報処理の不思議さ
このノートを見ているときに受ける格好良さや不思議な印象は、人の視覚認知の特徴と関係がありそうです。人は白い背景上の灰色はより暗く,黒い背景上の灰色はより明るく見えます。明るさの違いがはっきりするように補正がかかっていると言ってもいいかもしれません。これを対比と呼びます。一方で、差が小さく滑らかになるように見える場合を同化といいます。
このノートの灰色背景の上の白い文字に注目しているときには、背景の灰色と白が対比される一方で、背景の灰色と黒は同化することになります。逆に黒い文字に注目しているときには、白い文字は灰色と同化して気になりにくくなります。明るさの対比と同化が同時に働く影響で、一方の色だけに注目して読むことができるのです。図と地の反転にも似ていますね。

■関連する支援技術
読み障害のある人や色覚に多様性のある人たちに、このノートが有効なのでしょうか。このノートはモノトーンで書くことが推奨されるので、色数を制限していても、情報が整理されたノートをつくれる可能性はあると思います。ただ公式サイトでは「実際の商品は色覚異常の方への視覚的効果を目的とするものではありませんのでご注意ください」という但し書きがあり、実際のところは試してみないと分かりません。読み障害や弱視の人たちへの支援技術としては、ローテクであれば、カラーフィルター(色付きの下敷き、クリアファイル、サングラスのようなもの等)や、スリット(行を目で追いかけるのが苦手な場合に、読んでいる行の前後を隠して読みやすくしたもの)があります。ハイテクであれば、文字を選択して読み上げる際に文節ごとに蛍光マーカーのようにハイライト表示してくれたり、画面を白黒反転させるものがあります。また、スマホやパソコンにダークモードと呼ばれる背景が黒を基調としたテーマが選択できるようになってきました。これは白内障の人やドライアイなどの人の助けになる可能性があります。

■個人的な使い方
学生時代以降は手書きでノートをとることは少なくなりましたが、この製品は、ちょっと試してみたいと思っています。というのは、リモートワークで人に会うためにもディスプレイを見続けることで、ドライアイがつらく、白すぎてコントラストの高い画面はつらく感じているからです。端末もダークモードを愛用しています。そこで発光しないアナログな紙で、しかも灰色というこの製品に惹かれました。品薄なので、とりあえず試しにiPadのノートアプリで背景を灰色に設定して、黒と白のインクで書いてみて、このアイディアの良さを体験してみたいなと思っています。紙というローテクの良さを見返す良い機会になりました。

製品ホームページ
https://www.kokuyo-shop.jp/shop/ProductDetail.aspx?sku=4589518671033

鈴木康広さんの使用例
https://www.kokuyo-shop.jp/shop/category_list.aspx?CD=F2000267

関連媒体
https://www.fnn.jp/articles/-/51495

                           (ATAC事務局)

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