隠れて聞きたいラジオ「＃むかいの喋り方」
毎週火曜日22:00からCBCラジオで放送されている番組「#むかいの喋り方」。お笑い芸人のパンサー向井さんが一人で2時間20分の生放送を行うこの番組を聞くことが、ここ最近の癒しになっている。
今回はこの「＃むかいの喋り方」の魅力を、私なりに紹介していきたいと思う。
上手な番組構成
まずはじめに、このラジオは番組構成が非常に上手である。
22時から1時間はフリートークの時間。向井さんの近況トークや最近見たおすすめの映画やドラマの話、またそこから得た学びを話してくれる。
23時からはコーナーの時間。大体3つのコーナーがあり、それぞれ約20分程度であるため変に間延びすることなくテンポよく番組が進んでいく。
24時になる前には、番組の８浪ディレクターが選曲するアニソンが流れ、その後、24時台のコーナーが２つ行われる。
そして最後は、向井さんの「今日も一日がんばろー！」という言葉とともに番組は終了する。
芸人さんのラジオでは、おおよその番組の流れは決まっていても「〇時からはコレ！」という風に番組が進行することは少ない。自由気ままに進むラジオ番組の気軽さもとても好きだが、「〇時になったから今からコレだ！」という流れは、わかりやすさだけでなく番組全体をグダつかせることがない。
ひとりしゃべりの番組であるため、番組の展開が予想できないような突飛なラジオ番組にはならないが、「時間で番組構成が決まっている」というそのゆったりとした正確さが、子供から年配の方までと幅広い年代の方が聞いているこの番組に適したものになっていると感じる。
誰にも負けない圧倒的トーク力
初めてこの番組を聞いた時にまず思ったことは「向井さんの話ってすごいおもしろい！」であった。
番組が始まってすぐのフリートークでは、最近あった出来事や見た映画やドラマについての話が繰り広げられる。ついつい聞き入ってしまう向井さんのトークの大きな魅力の一つが「客観性」である。
自分の近況を話す時「これがこうなって、自分はこうなった」のように主観的に話してしまうことが多い。しかし、向井さんは自分自身に起きた出来事も一歩引いた場所から観察し、その出来事から何がわかったのか、どういうことに気づいたのかなどを客観的な視点から伝えてくれる。
何より向井さんのトークの一番の聞きどころは、普段テレビでは見せない「闇」の部分である。様々なバラエティ番組で活躍する一方、溜まりにたまった仕事での不満や自分の情けなさを吐露する様子からは、向井さんの人間味が生々しく伝わってくる。
さらに「さすが芸人さん！」と言いたくなるようなオチのつけかたや、思わずクスっと笑ってしまう話し方も向井さんのトークをより魅力的にしてくれている。
またアトロクリスナーとして、向井さんの宇多丸さんとはまた違った角度からの映画の評論も非常に聞きごたえがあり、2人の感想を比較することもささやかな醍醐味になっている。
2時間20分もの長時間の生放送を、最初から最後まで全く飽きさせることなく、むしろ多くのリスナーを魅了するラジオ番組をやりきる向井さんのトーク力は本当に素晴らしい才能であると思う。
狭く広いリスナー層
「＃むかいの喋り方」はCBCラジオ一局だけでしか放送されていない。
なので、この番組を聞きたいと思ったらCBCラジオが入る場所に行くか、radikoのプレミアム会員になるしかない。そうすると他のTBSラジオやニッポン放送の芸人ラジオとリスナーの層は少し違ってくる。
いわゆるハガキ職人と言われるリスナーも多いが、一方で愛知県在住の方や子どものリスナーも多いのがこの番組の特徴。11歳の女の子や7歳の男の子から来るメールはどれも愛らしく、聞いていてとてもホッコリする。
メールを読み上げる向井さんもなんだか嬉しそうで、中学時代にラジオにハマったご自身とどこか重ね合わせているのだろうかと想像してしまう。
年配の方からのメールも多く、深夜ラジオらしいキワドイ内容のトークも数多く存在するにもかかわらず、老若男女から愛されている。放送地域的には狭く、しかしリスナーの年齢層は広いという地方ラジオの良さを感じられるのも、この番組の魅力だ。
おわりに
「＃むかいの喋り方」は私にとって、とにかく心地いい番組である。
ANNやJUNKが、深夜にどこか小さな洞穴でパーソナリティーを囲むようにしてリスナーがトークを聞いているのだとしたら、この番組は夕方にご近所さんと近くの公園や公民館で向井さんのトークを聞いているというイメージがある。
「＃むかいの喋り方」は毒がありつつも優しく、しょうもないことから感動することまで色彩豊かなエンタメを提供してくれる。そんな大好きなラジオ番組を「今日はどんな内容になるのだろう」とワクワクしながら待つ火曜日の夜が、私の日常の大切なものになっている。
向井さんのラジオ愛とリスナーの「＃むかいの喋り方」への愛で構成されたこのラジオ番組が、これからもたくさんの人に愛されて長く続いてほしいと切実に思う。
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