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コロナ・ウイルス禍の下で広がる労働市場の明暗(2)

 ここでは「コロナ・ウイルス禍の下で広がる労働市場の明暗(1)」で眺めた労働市場の状況を、産業別の姿として眺めてみる。

〇 就業者:第一次、第二次産業は減少、民間サービス、公務にもコロナ・ウイルス拡大による需要の明暗が鮮明に

 表1は産業別就業者の前年比増減である。業種は農林業、公務を含めて16業種である。

 表1. 就業者 : 産業別推移( 前年比増減、万人 )

(表)産業別就業者[2482]

8月時点で、就業者が前年比で
(1) 増加している業種は7業種。
 教育・学習支援(18万人)、不動産・物品賃貸(17万人)、情報通信(11万人)、金融・保険(10万人)、医療・福祉(10万人)、公務(3万人)、学術研究・専門・技術サービス(1万人)

 増加している業種は民間サービス12業種の半分6業種、そして公務である。業種を眺めると、コロナ・ウイルス感染拡大の下での検疫・治療はもとより、教育機関の活動停止や外出規制などに伴うリモートオンライン化需要拡大などがその背景にある。


(2 ) 減少している業種は9業種。
 製造業(52万人減)、宿泊・飲食サービス(28万人減)、卸・小売り(16万  人減)、農林業(11万人減)、建設(11万人減)など。 
 
 減少している業種を眺めると、農林業、建設業、製造業と第一次、第二次産業が全て減少している。とくに製造業の減少幅は最大である。

 民間サービス全体では8月4万人の減少と第一次、第二次産業と比べ非常に小幅な減少を示しているが、しかし、個別では宿泊・飲食サービス、卸・小売の減少が大きい。コロナ・ウイルス感染拡大の影響を直接集中的に受けた姿として表れている。コロナ・ウイルス拡大の影響が需要の明暗を鮮明にしている姿である。

〇 正規、非正規雇用者などで眺めると、16業種の産業は5グループに分けられる。

 産業別に就業者を概観したが、図1で就業者を「正規雇用者」、「非正規雇用者」、そして「家族従業員を含む事業者」に分けで眺めてみると、今年8月時点で「公務」を含む16業種で5つのグループに区別することができる。

産業別就業者[2483]

図1. 産業別就業者(2020年8月、前年比増減、万人 )

 表2は8月時点での産業別就業者を「役員を含む雇用者(計)」の前年比増減を中心に順序付けた表である。

表2. 産業別就業者(2020年8月、前年比増減、万人 )

(表)正規非正規[2484]

以下5グループについて眺めていく。

(1) 正規、非正規雇用の両者とも増加している業種は、「不動産・物品賃貸業」、「教育・学習支援業」、「金融・保険業」の3業種。

 これらの業種は在宅勤務や遠隔授業などの需要拡大、さらに政府支援策などに対応する金融支援の拡大が背景にあると思われる。
 全国的に需要が拡大し、参入も比較的容易な教育・学習支援では事業者も増加。

(2) 正規雇用が増加する半面、非正規雇用が減少している業種は、「情報通信業」、「医療・福祉」、「学術研究・専門・技術サービス」の3業種。

 これらの業種は人手不足より専門的な人材確保が急務とされる業種である。非正規雇用を減らす中で雇用全体では増加していることから、需要拡大に対応しながら人件費増を極力抑制していく姿が映る。

 より専門的な人材が必要とされる「医療・福祉」、「学術研究・専門・技術サービス」では事業者が増加。

(3) 正規雇用が増加する一方、非正規雇用の減少が正規雇用増を上回り雇用者全体でも減少している業種は「他に分類されないサービス業」、「運輸・郵便業」の2業種。

 これらの業種は経済活動の停滞や外出、観光自粛など需要減少に反応する業種であるが、他方、通販や食事の宅配など外出自粛での新規需要の動きもあり、需要の明暗が両面で影響を及ぼしている。

 食事宅配などの新規需要の出現で、「運輸・郵便業」での事業者が増加。

(4) 正規、非正規とも雇用が減少している業種は最多の6業種で、「複合サービス」、「農業・林業」、「生活関連サービス・娯楽業」、「建設業」、「宿泊業・外食サービス」、そして「製造業」である。

 「製造業」、「宿泊・飲食サービス業」に代表されるこのグループは、海外貿易の縮小、さらには訪日客の大幅な減少、外出規制などコロナ・ウイルスの直接的かつ世界的な影響を受けている業種である。

 正規、非正規雇用が共に減少するこのグループでは、「家族従業員を含む事業者」の増加が目立つ。またその規模も現状の状況からは多くの新規事業者が増加しているとは想定できず、正規、非正規を削減せざるを得ない環境の下で、家族を従業員として活用してきていると考えるのが妥当であろう。

 但し、最大の雇用者減少を示す「製造業」では「家族を含む事業者」も減少しており、下請けの中小・零細企業の経営がひっ迫している姿としてとらえられる。

(5) 6グループとして「公務」がある。「公務」は上記5グループとは異なり、正規雇用が減少し、非正規雇用が増加している。保健所や教育機関での専門家が減少してきているのかもしれない。同時にウイルス感染や政策支援での人材不足も指摘されており、他のグループの就業形態が異なるため別グループとした。

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