【感想】最近読んだ本

読書家とまで言えないが、本はそれなりに読む。
ここ数年時間が取れず、技術書や資格試験テキストがメインになってしまっている感があるが、最近読んだものをつらつらと記載。


① 忘れ去られたCPU黒歴史 Intel/AMDが振り返りたくない失敗作たち

半導体の中で最も複雑なのがCPU。電子機器の頭脳であり心臓なのでそこには膨大なリソースが注ぎ込まれ、それだけに売れなきゃ会社の経営破綻さえあり得る一大ギャンブルでもある。
一握りの成功の裏には語られない無数の失敗があるのはどこの世界もそうだが、半導体最大手のインテルでさえ駄作・失敗作を結構作っているのが意外。普通に良い性能なのにマーケティングで転んだり、プライドが邪魔して切り捨てちゃったりと、あれだけの技術力があってスマホを席捲できなかった理由も何となく分かる。
ある程度CPUに詳しくないと流れが読めないので人を選ぶ気もするが、それを知っているだけで面白さが段違いである。

②アフターデジタル / アフターデジタル2

人同士の関わりはオフラインが主、オンラインは従であるのは昔の話で今は逆。そんな時代におけるビジネスや行動に関する考えを、実際のケース(主に東南アジアや中国、欧米のサービス)による例を交えて記載している。2は実際への適用に関する指導みたいな内容で、後半はちょっと難しかったがそれでも図解も豊富で面白さはある。
本業に絡むものだったので購入したのだが、伝統的なクラシックの世界でも接続の起点が人同士ではなくスマートフォン等のデバイスになっており、それは別にオンラインが良いとかではなく「自身にとって最適な手段」というだけの事。そのような世界線でどうすれば良いかについての再考をさせてくれる良い書物だった。

③ 白い巨塔

言うまでもなく山崎豊子の一大小説であり、当時の医学界の問題や封建的な内情を抉り出した社会派小説と言われるが、実際にはその体を借りたコテコテの人間ドラマで何度読んでも面白い。
沈まぬ太陽等の後年の山崎豊子はさらに社会派な部分が多く骨太になっていく感もあるが、このころくらいの作品は大阪が舞台なので親しみやすく(この小説も主なモデルは大阪大学医学部)、登場人物間の関係が比較的分かり易いのであっさり読める程度のボリュームなのも良い。
余談だが、何度も映像化されているのでドラマでも楽しめるのだが、映像化された時代の医学の進歩や香りも感じられるのでオススメ。(ちなみに自身は2003年Ver(主演:唐沢寿明, 江口洋介)が好き)

④ 超訳 カーネギー 人を動かす

いつの時代でも名著と言われる代物。人間性に即した人間関係の整理や再考、言い方は悪いが相手の風上に立つ方法として役立つ。が、この点において機械は人間を超えているというか、人間が面倒だと思ってしまうあたり、ある意味で自身は非人間的なのかもしれない。
個人的には年の功や経験値といった要素で風上に立つ事は避けているつもりだが、常日頃から気を付けていかなきゃいけないと戒め、客観的にも自身が間違っていると認めざるを得ない場合は素直に折れる事も重要だと考えさせられる。
一方で正論を突き付けてくる相手に対しては、一見折れてやって後に風上に立つ口実にもできるという腹黒さもあるように思えるので、意外と黒い心理学に通じるものがあるのかも。

⑤ ボナンザVS勝負脳: 最強将棋ソフトは人間を超えるか

AIが人間を超えるかという点において、今も昔も引き合いに出される事が多いのが将棋ソフトBonanza。将棋の世界でも棋譜研究や修行でデジタル技術の導入が進んでいるようだが、Bonanzaはその嚆矢になった契機でもあった。
そんな当事者の2人による1冊はBonanzaに対する理論や考察、そして「棋士」と「将棋好きの科学者」各々の矜持が見え隠れするもので、「棋士である以上勝たねばいけない」とストレートな渡辺竜王に対し、「勝つことは目的ではない」と勝負の先にあるものを見据える保木博士のちぐはぐな感じも面白い。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?