シマナガサレアフター ~目覚め~
船の上で眠っていたと思ったら、気が付けばおれは自分の部屋で目覚めた――
島での現実味がなかった感覚も、今では全てが現実の経験として実感している。
セイン島での生活も島の仲間たちも夢の存在ではなく確かに実在していたんだ。
夢、夢……おれの夢ってなんだろう?
将来的に星神を継いだ兄さんを支えてゆくと思っていたから不思議とピンと来ない。
星神である父さんの息子のおれは天界の王族としての責務があったから。
なんにもない"ただのアポロ"としてのおれの望みや願いとか考える機会がなかった気がする。
兄さんが作った宇宙服の機能も星天使としての力にも頼らずに一週間の暮らしを終えた。
島では色んな素材が見つかったから、限られた食材で色々な料理を作ったね。
おれの料理を食べてみんなが喜ぶ顔を見て、おれは心の底から嬉しいと感じたよ。
――特別な力なんてなくだって、おれは誰かを喜ばせたい。
みんなの喜ぶ姿や笑顔が、おれにとっても大きな力になってくれたんだ。
おれが王族じゃなかったら、自分のお店を持ってみたかったかもしれないね。
昔は父さんや兄さんと比べて落ちこぼれであったことを気にしていた。
星神の子として天界の王族として力に劣る自分が嫌だった。
でも、今は違う。可愛い弟分もいるし、神族としての力だけがおれじゃないって。
父さんも兄さんもシグもおれを愛してくれている(まあ兄さんはたまに度が過ぎるけどね)。
おれを産んで死んでしまった母さんもおれを愛してくれているのかな。
セイン島で一緒に暮らしたみんなとも、いつか現実で会える日が訪れると信じたいね。
ありがとう、みんな。愛しいセイン島の仲間たちへ――
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