橈骨遠位端骨折レントゲンの見かた
こんにちは!理学療法士の田中です.(Insta:output_nodeshi)
前回までは肩関節についての機能解剖や画像の見かたについて書かせていただきました.今回は橈骨遠位端骨折のレントゲンの見かたについてまとめていこうと思います!
では早速本題にはいります!
・橈骨遠位端骨折の疫学
橈骨遠位端骨折は男性に比べて女性が1.9~3倍多いとされています¹⁾.
高齢者になればなるほど受傷率は高くなり,70代では男性は若者と比較して約2倍,女性は約17倍となります.
受傷機転としては転倒が49~77%と最多です¹⁾.
片脚立位時間が15秒未満では危険因子とされていますので,転倒して受傷された方を担当する際は再発予防として下肢への介入やバランス評価なども検討していけるといいかもしれません.
①手関節のニュートラル肢位
画像所見を見るうえで大切なことは正常を知っていることです.
橈骨遠位端骨折では,手関節(橈骨)のニュートラル肢位が大切になります.橈骨のニュートラル肢位は、橈骨関節面の角度が基本になります.
Radial inclinationは橈骨垂線と橈骨関節面とがなす角度のことです.
平均は23~27°と言われています²⁾³⁾⁴⁾.
Palmar tilt(Volar tilt)は側面から見た橈骨の傾斜角のことです.
橈骨垂直線と橈骨関節面の角度がなす角度です.
平均は18~15°と言われています²⁾³⁾⁴⁾.
②Radial length
Radial length(橈骨長)は橈骨の短縮を見ることができます.
橈骨茎状突起の高さと尺骨関節面の間の長さで判断します³⁾.
正常平均は9~11mmですが,健側と比較して4mm以上では短縮となっているため転位している可能性が考えられます¹⁾²⁾.
また,尺側には遠位橈尺関節の安定性に関与しているとされているTFCC(三角線維軟骨複合体)が存在します⁵⁾.
Radial lengthが短縮されている場合はこのTFCCが損傷されている可能性もあります³⁾.
③Ulnar vaiance
Ulnar varianceは橈骨手根関節面尺側と尺骨関節面の差を見ます.¹⁾平均では1~2mmの差がありますが,骨折により橈骨が短縮位となり尺骨が突き上げているように見える「尺骨突き上げ症候群」の指標になります³).
2mm以上ある場合は握力低下,可動域低下,疼痛が残存する可能性が高くなるとされています⁴⁾.
【まとめ】
・橈骨遠位端骨折は高齢になるほど受傷しやすく,女性で多くみられる
・手関節のニュートラル肢位は橈骨関節面で見る(Radial inclination,Palam tilt)
・Radial lengthは橈骨の短縮を見ることができ,TFCC損傷も示唆される
・Ulanar varianceは橈骨の短縮を見ることができ,尺骨突き上げ症候群の指標にもなる
今回は以上になります.最後まで読んでいただきありがとうございました!
橈骨遠位端骨折は地域や季節によってはとても多い疾患です.
少しでもリハビリをスムーズに進められるように事前に画像所見を確認し,
ある程度の予測をつけてから介入できると良いかと思います.
この記事を読んで,少しでもみなさまの臨床に役立ていただけたら幸いです.
次回は橈骨遠位端骨折の分類とそれに対するリハビリのポイントをお伝え出来ればと思います!それではまた…('ω')
【参考資料】
1)日本整形外科学会,日本手外科学会.橈骨遠位端骨折診療ガイドライン2017
2)浅野昭裕,他.運動療法に役立つ単純X線の読み方.メディカルビュー社
3)Jack A,et al.Fracture of the Distal Radius: Epidemiology and Premanagement Radiographic Characterization.American Journal of Roentgenology 2014 203:3, 551-559
4)高畑智嗣.橈骨遠位端骨折.臨床スポーツ医学:Vol35,No3(2018‐3)
5)山内仁,他.TFCC損傷に対する理学療法-テニスおけるグリップ動作を中心に‐.関西理学 6:59‐64,2006