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私の地鎮祭・上棟物語

家を建築中の私。

今住んでいるところが、新居に近いこともあって、
毎日(正確には毎朝、毎夕なことも多い)
進捗を見に行くのが日々の楽しみ。
棟梁さんが作業されていれば挨拶をして。
今日の作業内容を聞いて、仕事の邪魔をしている。

私がお願いしている工務店さんは、
地鎮祭や上棟式などをきちんとされるところ。
はじめは「なんだそれ?」
「高いんだったら困るな。」と思った。
最近では地鎮祭や上棟式を
やらない方も多いようだ。

地鎮祭は、家の建築工事が着工する前に行う儀式。
土地を守る神様にその土地を使用する許しを請い、
工事の安全を祈願する儀式として
昔から行われてきた。

地鎮祭の様子

面倒くさい気もしたが、
ここから大事にする家を作っていただく人と
一緒にいいものにしたいという工務店さんの熱意も
感じられてやってみようと思った。
「土地の神様、
大事に住まうのでよろしくお願いします。」
地元の神社の神主さんにお清めしてもらい、
工事は着工した。

基礎が丁寧に作られている様子は、
誰もいない現場にもあった。
きちんと道具や資材が置かれている様子や
悪天候の時もブルーシートで覆われていたりして、
この工務店さんに頼んでほんとに良かったと
感じる瞬間だった。

上棟の日が来た。
上棟式は、木造住宅の骨組みが完成したことを
祝う儀式で建物の安全と安泰を祈願する
目的で行う。地鎮祭と違って、一日仕事。
私も事前に弁当やおやつや飲み物の段取りをした。

御神酒と塩

大工さん・工務店さんが10人、クレーンの方が1人。
挨拶後、棟梁と一緒に家の隅に塩とお酒をまく。
木材をくみ上げていく作業がスタートすると、
さっきまでのんびり談笑していた
大工さん達の顔が変わる。仕事人の顔だ。
ほとんど声を掛け合っているように見えないが、
誰が何をするってはじめから決まっているのか
流れるように作業が進み、
ものの1時間で2階が組まれ始める。
12月には珍しく気持ちよく晴れて青空のなか
家の形ができあがっていく。

1時間で1階ができる

弁当を取りに行ったり、
思いがけず暑くなったので、
お茶を追加で買いに行く。
戻ると屋根もでき、その場で加工もされていく。
すごいなあ。一日でこんなことになるとは。
職人さんのすごさを見せつけられる一日だった。

2時間で屋根まで

最後の片付けを見ながら、
作業が終わったクレーンのおじさまに声をかけた。
「巨大クレーンゲームを一発で仕留めて、
すごかったです。感動しました。」
ちょっとびっくり、でも照れくさそうにしながら
おじさまは教えてくれた。
「私はまだまだ素人なんで、
 35年しかやってないんです。
 5000棟くらいしか関わった建物は無くて。
 いつもごまかしごまかしやっています。
 正確な仕事がまだまだできるようにならない。」
「えー、ものすごくピンポイントで
 やっておられるようにみえました。」というと、
「自分には失敗したのが分かるから。」
かっこいい。痺れる。

誰にもバレなくても、
自分には納得できていない仕事。
僭越ながら私にもあるなあ。ありまくりだなあ。

お父様の跡を継いで、この仕事に入られたらしい。
「小学生の足が届かないときから、
 ここに座っていました。
 まだまだ上手になりません。」と、
 教えてくださった。

最後におじさまが
「僕ね、いろんな現場に行かせてもらうんだけど、
 僕が家を建てるとしたら、ここで建てるね。
 中身が、図面が全然違う。」
深いところまでは分からなかったけど、
いい家になるよ。といわれた気がして、
ものすごく嬉しかった。

昔読んだ新聞記事で
「石工の老人の話」を思い出した。

災害級の大きな嵐が来たときに、
「自分が組んだあの山奥の石垣は大丈夫だろうか。」
でも思い直す。
「俺が組んだ石垣だ。俺が組んだんだ。
 これくらいの嵐ではびくともしない。」

私もそんな仕事がしたい。
人生の中でいろんなことがある。
思ってもみないことがばかりだ。
そんな時に思うのだ。
私が教えた子達にも私が教えたんだから、
大丈夫だ。
と思えるだろうか?

石垣と人は違う。
でも、「土台を作っている」という所では
同じ所もあるはずだ。
人生の伴走はできない。
できるだけの備えをさせて、
たくさん飛べるようにネジをいっぱい巻いて、
同時に自分でもできる巻き方を教えて。
あとは祈るだけなのだ。
たかが、一教員がおこがましいけれど。

地鎮祭や上棟式。
色々な考え方があるだろうが、
わたしはやってよかった。
私の家なんだけど、
私の家のためにたくさんの人が動いてくださった。
いい家にしようとしてくださって、
組み上がった家を見て指を指して
笑いながら満足げに見上げている職人達。

この光景を忘れずに、
大事にこの家で生きたいと思った。
もうしばらく、私の進捗調査は続くのだった。

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