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群青領域

群青領域。2021年にNHKで放映されたドラマ。
今になってこのドラマを妙に思い出す。
絶望、挫折、秘密、失意、トラウマ、コンプレックス、枷。
それぞれのワカモノがどん底から光を見出し、足掻き、模索し、立ち直ってまた歩き出す物語だ。
たくさんのキャラクターが登場するが、私は何げなひとことに救いを見た部分がたくさんあった。

人気ロックバンドグループの天才的ピアニスト、ジュニ。
ボーカルの彼と付き合っていたが、彼がグループから独立し、また新たな恋人がいると噂を知り。
やがて彼はバンドを去る。ジュニはショックのあまり失踪。
海辺の町で、海に落ちたジュニをレンという青年が助け、彼が下宿する青木荘に住まわせる。

ざっと序盤の筋を画像とともに説明したが、この青木荘の女主人がとても暖かくていい人なんだ(^^)。
ごく普通の、人間らしい生活をしながら、ジュニは癒されていく。
ジュニ役は、以前韓国ドラマで天才子役と言われた、キム・ウンギョン。
このドラマで、まさか彼女では?!と知った時は驚いた。
一種中性的な雰囲気になり、透明感のある女優さんになっていた。
そして彼女の、丁寧に話す日本語が美しく愛おしい。ひとことひとこと、心から紡ぎ出す感じ。
また、日本の作法をよほど勉強したのだろう、正座する姿勢が綺麗だし、とても控えめである。

青木荘には、ご主人から子供を連れて逃げてきたシングルマザーや、言葉を発せなくなった女の子、また、同性愛が発覚し自分を保てなくなったジュニのバンドのメンバーなど、様々な人が集まってくる。
ジュニを助けたレンもまた、心に傷を負った人であった。

シングルマザーでパート仲間のつぐみは、青木荘で食事を作るうち、世話好きな近所の女性から
「あんた料理上手ねぇ!
 いっそ、この下宿の庭、オープンカフェでも開いてみたら??こんなに広いんだし」
と言われる。
思いがけない提案に、言葉に詰まるつぐみに
彼女は言った
「ねぇ。あんたもしかして。
 こんな自分がそんなことできるわけない、
って思ってない?そんなことやる資格なんてない、って。
全然そんなことないんだからね!やりたいことやっていいの!」
確か、そんなことを言ってくれたと思う。
私はこれに感動した。
普通、そんなことを言ってくれる人はいない。
おそらくそれは、原作者の言葉であろう。

皆。過去や自分のトラウマから少しずつ解放されて、変わりながら進んでゆく。
青木荘という場所を舞台にして。踏み台にして。
故郷にして。
正解、というものはこの世にないのだ。
皆、変わりながら、より自分が求める自分の姿に真っ直ぐに進んでゆけばいいのだ。
そう思う、素敵なドラマだった。

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