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ショートショート①「運び屋の男」

「〇〇さん、おれ知らなかったんだよ。。。」

小さな声でそう呟くと男はガックリとうなだれた。

自分の犯した罪の重さを認識したようだ。

大学生だった彼は授業が終わった後、アルバイトを探してバイト雑誌を読んだりネットで仕事を探したりしていた。

時給がよくてシフトの融通が効く仕事。

それが彼の探していた仕事だ。

しかし、時給がよくてシフトの融通が効くというそんな条件の良い仕事は滅多に見つかるものではなく、バイト探しは難航した。

そんな時だった「運び屋」の仕事を見つけたのは。。。

指定された場所に行き、ある人物に会う。

そして「ぶつ」を受け取り、また指定された場所へ向かう。

指定された場所には別の人間がいて、「ぶつ」を渡して仕事は完了だ。

簡単な仕事だった。

最初こそ緊張したが、慣れればあとは楽だった。

同じことの繰り返しだった。

時折、雨の日は厄介だな、と思うこともあったが仕事をすればお金が手に入る。

危険な目にも何回かあったし、クズのような人間にも何回も出会った。

しかし彼はその仕事辞めることなく続けた。

お金目的ではあったが、仕事を続けるうちに、だんだんとその仕事が自分に合っているようにすら思えてきたからだ。

しかし、そんなある日「事件」は起きた。


家に突然、国税局の職員がやってきたのだ。

Uber Eats配達員は「個人事業主」にあたる。

会社員やパート・アルバイトの場合は、給与から勝手に税金(所得税)が源泉徴収されるが、個人事業主の場合は、自分で帳簿を作って期限内に確定申告をして税金を納めなくてはならないのだ。

男は帳簿をつけて期限内に税金を納めるということを行っていなかった。

それどころか、自分が個人事業主だということにすら気付いていなかったのだ。

個人事業主として「①事業収入-②必要経費-③所得控除=④課税所得」さえ、理解できていれば、確定申告して自己申告できていたはずだ。

「こんなはずじゃなかった」

男は再び呟いた。

Uber配達員を開始して確定申告の必要があったにも関わらず無申告の方は、今からでも確定申告について学んで自己申告をした方が良いですね。



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